【獣医師監修】犬が秋に体調不良になる4つの原因と対策|見逃したくない症状と病気のサイン

夏の厳しい暑さが和らぎ、爽やかな気候になる秋。愛犬との散歩やレジャーが楽しい季節ですが、実は犬が体調を崩しやすい「季節の変わり目」でもあります。人間と同じように、犬も急な環境の変化に体がついていけず、様々な不調が現れることがあるのです。

「最近、愛犬の元気がない気がする…」「食欲が落ちたり、下痢をしたりしている…」それは、秋特有の原因が隠れているのかもしれません。

 

この記事では、犬が秋に体調不良を起こしやすい理由から、具体的な症状、ご家庭でできる健康管理のポイントまで、獣医師の視点で詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 犬が「季節の変わり目」である秋に体調を崩しやすい科学的な理由
  • 見逃してはいけない、犬の体調不良の具体的なサイン
  • 秋に特に注意すべき病気やアレルギーについて
  • 今日から家庭で実践できる、愛犬のための秋の健康管理法
  • 飼い主さんからよく寄せられる、秋の体調に関するQ&A

 

犬が秋に体調不良を起こしやすい4つの主な理由

 

犬が秋に体調を崩す背景には、いくつかの複合的な要因が関わっています。

 

1. 激しい寒暖差による自律神経の乱れ

秋は、日中は暖かくても朝晩は急に冷え込むなど、1日の気温差が10℃以上になることも珍しくありません。このような急激な気温の変化に体温を対応させようと、体温や内臓の働きを自動で調整する「自律神経」がフル稼働します。この状態が続くと自律神経のバランスが乱れ、下痢や嘔吐、食欲不振といった消化器症状が出やすくなります。特に、体温調節機能が未熟な子犬や、機能が衰えてくるシニア犬(老犬)は影響を受けやすいため注意が必要です。

 

2. 夏の疲れの蓄積と免疫力の低下

日本の夏は高温多湿で、犬にとっては非常に過酷な季節です。暑さによる食欲不振や睡眠不足、運動不足などで知らず知らずのうちに体力を消耗しています。この「夏の疲れ」が十分に回復しないまま秋を迎えると、免疫力が低下した状態に。その結果、胃腸の機能が落ちて下痢をしやすくなったり、ウイルスや細菌に感染して風邪のような症状を引き起こしたりします。

 

3. 活動量の変化と体への負担

涼しくなると、夏の間に控えていた長時間の散歩やドッグランへ出かける機会が増えます。しかし、夏場の運動不足で筋力が落ちている状態で急に運動量を増やすと、関節や筋肉に大きな負担がかかり、足を痛めたり、ケガをしたりする原因になります。愛犬が楽しそうにしているからといって、いきなりハードな運動をさせるのは禁物です。

 

4. 飲水量の低下による水分不足

気温が高い夏場は意識的に水を飲みますが、涼しくなる秋は喉の渇きを感じにくくなり、自然と飲水量が減る傾向があります。水分摂取量が減ると、血液がドロドロになり、体内の老廃物が排出されにくくなります。その結果、膀胱炎や尿石症といった泌尿器系のトラブルを引き起こすリスクが高まります。

 

こんな症状に要注意!秋に見られる犬の体調不良サイン

 

秋に愛犬に以下のようなサインが見られたら、体調不良の可能性があります。注意深く観察しましょう。

  • 消化器の症状: 下痢、軟便、嘔吐、食欲不振、便秘など。
  • 呼吸器の症状: 咳、くしゃみ、鼻水、ゼーゼーという呼吸音など。
  • 皮膚の症状: 体をしきりに掻く、皮膚の赤み、フケが増える、脱毛など。
  • 泌尿器の症状: 頻繁にトイレに行く(頻尿)、おしっこの色が濃い・血が混じる(血尿)、トイレ以外の場所で粗相をするなど。
  • 全身的な症状: 元気がない、ぐったりしている、散歩に行きたがらない、震えているなど。

 

秋に特に気をつけたい病気やトラブル

 

過ごしやすい季節だからと油断は禁物です。秋は以下のような病気やトラブルが増える傾向にあります。

  • ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎): 空気が乾燥し始める秋は、咳を特徴とする呼吸器感染症「ケンネルコフ」が流行しやすくなります。
  • アレルギー性皮膚炎の悪化: ブタクサやヨモギといった秋の花粉がアレルゲンとなり、皮膚のかゆみや赤みが悪化することがあります。
  • ノミ・マダニ感染症: 夏だけでなく、秋もノミやマダニは活発に活動します。草むらに入ることが増えるため、しっかりとした予防・駆除が不可欠です。
  • キノコ中毒: 雨上がりの公園や山林には、犬にとって毒となるキノコが生えていることがあります。散歩中の拾い食いには最大限の注意が必要です。

 

今日からできる!愛犬と秋を元気に過ごすための5つの対策

 

少しの工夫と心がけで、秋の体調不良は予防できます。愛犬のために、以下の5つのポイントを実践してみましょう。

 

1. 徹底した温度・湿度管理

室内の温度差をなくすことが重要です。エアコンの暖房や除湿機能、カーテンなどを活用し、室温を22℃〜25℃、湿度を50%〜60%に保つよう心がけましょう。フローリングにはマットを敷いたり、犬用のベッドに毛布やペット用ヒーターを用意したりして、愛犬が体を冷やさないように配慮してあげてください。

 

2. 夏の疲れを癒す食事ケア

夏の間に落ちた体力を回復させるため、栄養バランスの取れた食事が大切です。食欲が落ちている場合は、フードを少し温めて香りを立たせたり、ウェットフードをトッピングしたりする工夫も有効です。胃腸が弱っていることもあるため、消化の良いフードを選び、一度に与える量を減らして回数を増やすなど、胃腸に負担をかけないようにしましょう。

 

3. 無理のない適切な運動

運動を再開・増やす際は、徐々に慣らしていくことが鉄則です。まずは散歩の時間を5分ずつ伸ばすなど、スモールステップで始めましょう。散歩前には軽いマッサージなどのウォーミングアップを取り入れると、ケガの予防につながります。

 

4. こまめな水分補給の工夫

飲水量が減っていないか、お皿の水の減り具合をこまめにチェックしましょう。あまり飲まないようであれば、ドライフードをお湯でふやかす、ウェットフードを取り入れる、鶏肉のゆで汁(味付けなし)を少し加えるなどの方法で、食事と一緒に水分を摂らせるのがおすすめです。

 

5. 換毛期のスキンケアとノミ・マダニ対策

秋は冬毛に生え変わる換毛期です。ブラッシングをこまめに行い、抜け毛を取り除いて皮膚を清潔に保ちましょう。皮膚の血行促進にもつながります。また、ノミ・マダニの予防薬は、涼しくなっても自己判断でやめず、必ず動物病院の指示に従って通年で投薬しましょう。

 

犬の秋の体調不良に関するよくある質問

 

Q1. 秋になると急に食欲旺盛になるのですが、大丈夫でしょうか?
A1. ある程度は自然なことです。
涼しくなって夏の食欲不振から回復したり、冬に備えて体にエネルギーを蓄えようとしたりするため、食欲が増す犬は多いです。ただし、急激な体重増加は足腰に負担をかけます。欲しがるだけ与えるのではなく、フードのパッケージに記載された適正量を守り、おやつでカロリーオーバーにならないよう注意しましょう。
Q2. 秋の換毛期、ブラッシング以外にケアで気をつけることはありますか?
A2. 皮膚の保湿と栄養バランスが大切です。
空気が乾燥してくると、犬の皮膚も乾燥しがちです。保湿成分の入ったシャンプーを使ったり、ひどい場合は保湿スプレーを使ったりするのも良いでしょう。また、健康な皮膚や被毛を作るためには、良質なタンパク質や必須脂肪酸(オメガ3、オメガ6)が豊富なフードを選ぶことも重要です。
Q3. シニア犬(老犬)が秋に特に注意すべきことは何ですか?
A3. 「冷え」と「持病の悪化」に特に注意が必要です。
シニア犬は体温調節機能が衰えているため、寒暖差の影響を非常に受けやすいです。暖かい寝床を用意し、必要であれば洋服を着せるなど、保温を徹底してください。また、気温の低下によって関節炎などの持病が悪化することがあります。歩き方を気にする、散歩を嫌がるなどの様子が見られたら、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

 

まとめ:日々の観察が愛犬の健康を守る鍵

 

秋は、寒暖差や夏の疲れなど、犬の体にとって様々な変化が起こる季節です。しかし、その原因と対策を正しく知っておけば、多くの体調不良は防ぐことができます。

何よりも大切なのは、飼い主さんが日頃から愛犬の様子をよく観察し、食欲、元気、便の状態などの小さな変化に気づいてあげることです。少しでも「おかしいな?」と感じることがあれば、早めに動物病院に相談しましょう。

 

 

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