【獣医師監修】犬の体臭の原因は?タイプ別の臭いとすぐできる対処法を徹底解説

「最近、愛犬を撫でた後の手のニオイが気になる…」「部屋全体がなんとなく犬臭い気がする…」

愛犬との暮らしの中で、ふとした瞬間に体臭が気になることはありませんか?そのニオイ、単なる汚れが原因の場合もあれば、実は病気が隠れているサインの可能性もあります。

ニオイを放置してしまうと、原因となっているトラブルが悪化してしまうことも少なくありません。

この記事では、獣医師の視点から、犬の体臭の主な原因から、ご家庭で今日から実践できる具体的な対処法、そして動物病院を受診すべき危険なニオイのサインまで、網羅的に解説します。

 

この記事でわかること
  • 犬の体臭の4大原因(皮膚、口、耳、お尻)
  • ニオイの原因別・今日からできる具体的な対処法
  • シャンプーやブラッシングの正しいやり方
  • 放置すると危険な「病気のサイン」となるニオイの見分け方

 

もしかして病気のサイン?犬の体臭の主な原因をチェック

 

犬の体臭と一言でいっても、その発生源やニオイの種類は様々です。まずは、どこから、どんなニオイがするのか、原因を探ってみましょう。

 

原因1:皮膚(全身から漂う脂っぽい・湿ったニオイ)

犬の全身を覆う皮膚は、体臭の最も一般的な発生源です。犬には汗腺がほとんどありませんが、皮脂を分泌する「皮脂腺」が全身に分布しています。この皮脂が酸化したり、皮膚の常在菌によって分解されたりすることで、独特の“犬臭さ”が発生します。

  • 皮脂の過剰分泌:脂漏症(しろうしょう)などの皮膚病や、食事の脂質が多すぎることが原因で皮脂が増え、ニオイが強くなることがあります。
  • 細菌・真菌の増殖:アトピー性皮膚炎やアレルギー、あるいはシャンプー後の生乾きなどで皮膚のバリア機能が低下すると、マラセチアなどの菌が増殖し、ベタベタした脂っぽいニオイや、甘酸っぱい発酵したようなニオイを発することがあります。

 

原因2:口(生臭い・腐敗したようなニオイ)

顔を近づけた時に口から嫌なニオイがする場合、それは口臭です。主な原因は歯周病です。

  • 歯周病:歯垢(しこう)の中の細菌が、食べカスなどを分解する際に発生する「揮発性硫黄化合物」が、生ゴミや卵が腐ったようなニオイの正体です。歯周病が進行すると、歯茎から出血したり膿が出たりして、さらにニオイは強くなります。
  • その他の病気:腎臓病が進行するとアンモニア臭、糖尿病では甘酸っぱいアセトン臭がすることもあります。

 

原因3:耳(酸っぱい・ツンとしたニオイ)

耳を痒がったり、頭を振ったりする仕草とともに耳からニオイがする場合、外耳炎の可能性があります。

  • 外耳炎:耳垢が溜まったり、細菌やマラセチア(酵母菌の一種)が増殖したりすることで炎症が起き、ツンとした酸っぱいニオイや、甘くむれたようなニオイを放ちます。特に、垂れ耳の犬種は耳の中が蒸れやすく、外耳炎になりやすい傾向があります。

 

原因4:お尻(魚が腐ったような強烈なニオイ)

犬がお尻を床にこすりつけたり、お尻をしきりに舐めたりする場合、肛門腺(こうもんせん)に問題があるかもしれません。

  • 肛門腺の分泌物:肛門の左右にある「肛門腺」には、個体識別の役割を持つ非常に強いニオイの分泌物が溜まります。通常は排便時に少量ずつ排出されますが、溜まりすぎたり、炎症(肛門腺炎)を起こしたりすると、ふとした瞬間に漏れ出て、魚が腐ったような強烈な悪臭を放ちます。

 

今日からできる!犬の体臭を抑える具体的な対処法

 

ニオイの原因がわかったら、それに合わせた正しい対処法を実践することが大切です。ご家庭でできるケアを4つのポイントに分けてご紹介します。

 

1. シャンプーで皮膚を清潔に保つ

皮膚由来のニオイには、定期的なシャンプーが最も効果的です。ただし、やり方を間違えると逆効果になることもあるため注意しましょう。

  • 頻度:健康な皮膚であれば、3週間~1ヶ月に1回が目安です。洗いすぎは皮膚の乾燥を招き、かえって皮脂の分泌を促してしまうことがあります。
  • シャンプー剤:必ず犬用のシャンプーを使いましょう。皮膚が弱い子には、薬用シャンプーや低刺激性のものがおすすめです。
  • 洗い方と乾かし方:シャンプー前によくブラッシングで毛のもつれを解き、ぬるま湯で全身をしっかり濡らします。シャンプーをよく泡立て、指の腹でマッサージするように優しく洗います。すすぎ残しは皮膚トラブルの原因になるため、念入りに洗い流しましょう。タオルドライ後、ドライヤーで被毛の根本から完全に乾かすことが非常に重要です。生乾きは細菌繁殖の温床になります。

ニオイが気になる時は、濡れタオルや市販のボディシートで体を拭いたり、ドライシャンプーを活用したりするのも良いでしょう。

 

2. ブラッシングで汚れと抜け毛を除去

毎日のブラッシングは、ニオイ対策だけでなく、皮膚の健康維持にも欠かせません。

  • 効果:被毛についたホコリや汚れ、ニオイの原因となる古い抜け毛を取り除きます。また、皮膚の血行を促進するマッサージ効果もあり、新陳代謝を活発にします。
  • ブラシの選び方:長毛種なら毛のもつれを解くスリッカーブラシやピンブラシ、短毛種なら皮膚を傷つけにくいラバーブラシなどがおすすめです。愛犬の毛質に合わせて選びましょう。

 

3. デンタルケアで口臭を元から断つ

口臭の主な原因である歯周病は、日々のデンタルケアで予防することができます。

  • 歯磨きが基本:一番効果的なのは、歯ブラシを使った歯磨きです。いきなり歯ブラシを入れると嫌がることが多いので、まずは口周りを触られることに慣れさせ、次に指にガーゼを巻いて優しく歯をこする、というように段階を踏んで進めましょう。
  • 歯磨きグッズの活用:どうしても歯ブラシを嫌がる場合は、美味しい味のついた歯磨きペーストを舐めさせるだけでも多少の効果はあります。また、歯磨きガムや歯磨き効果のあるおもちゃなどを補助的に使うのもおすすめです。

 

4. 定期的な健康チェックと部分ケア

全身のケアに加えて、ニオイが出やすい耳やお尻のチェックも習慣にしましょう。

  • 耳のチェック:定期的に耳をめくって中を覗き、「耳垢が溜まっていないか」「赤くなっていないか」「変なニオイがしないか」を確認します。汚れている場合は、コットンに犬用のイヤークリーナーを含ませ、見える範囲を優しく拭き取ります。
  • 肛門腺絞り:定期的にお尻から強いニオイがする場合は、肛門腺が溜まっているサインです。ご家庭で絞ることも可能ですが、コツが必要なため、まずは動物病院やトリミングサロンでやってもらい、やり方を教わるのが安心です。

原因がわからないニオイや、ホームケアをしても改善しない場合は、迷わず動物病院を受診しましょう。思わぬ病気が隠れている可能性があります。

 

犬の体臭に関するよくある質問(Q&A)

 

Q1. 年を取ると体臭はきつくなりますか?

A1. はい、その傾向があります。シニア犬になると、代謝が落ちて皮膚のターンオーバーが乱れたり、免疫力が低下して皮膚病にかかりやすくなったりするため、体臭が強くなることがあります。また、内臓機能の低下がニオイとして現れる場合もありますので、シニア期のニオイの変化には特に注意が必要です。

 

Q2. 特に体臭が出やすい犬種はいますか?

A2. 皮脂の分泌が多いシーズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどは脂漏症になりやすく、体臭が強くなる傾向があります。また、皮膚にシワが多いパグやフレンチ・ブルドッグ、耳が垂れているダックスフンドやゴールデン・レトリーバーなども、シワや耳の中が蒸れてニオイが出やすい犬種と言えます。

 

Q3. ドッグフードを変えたら体臭が改善することはありますか?

A3. はい、大いにあり得ます。食事に含まれる脂質やタンパク質の質と量は、皮脂の分泌に大きく影響します。愛犬の体質に合わないフードを食べていると、腸内環境が悪化して体臭の原因になることもあります。体臭が気になる場合、消化の良い高品質なタンパク質を使用したフードや、皮膚の健康をサポートするオメガ3・オメガ6脂肪酸などがバランス良く配合されたフードに見直してみるのも一つの手です。

 

まとめ:気になるニオイは愛犬からの健康のサイン

 

犬の体臭は、単に「臭い」という問題だけでなく、愛犬の健康状態を知らせてくれる重要なバロメーターです。

今回の記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • 犬の体臭には皮膚、口、耳、お尻など様々な原因がある。
  • シャンプーやブラッシング、デンタルケアなどの日々の正しいお手入れが最大の予防策。
  • 普段と違うニオイや、ケアをしても改善しないニオイは病気の可能性があるため、早めに動物病院へ。

気になるニオイの原因を正しく突き止め、適切な対処法を実践することで、愛犬も飼い主さんも快適に過ごすことができます。この記事を参考に、ぜひ今日から愛犬のニオイケアを見直してみてください。

 

 

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