犬の健康診断は必要?費用、項目、頻度まで獣医師が解説

「うちの子は元気そうだし、健康診断はまだいいかな…」そう考えている飼い主さんは多いかもしれません。しかし、犬は言葉を話せないため、体調不良や病気のサインを見逃してしまうことが多々あります。

犬も人間と同じように、病気の早期発見・早期治療が何よりも重要です。見た目には元気そうでも、体の中では病気が進行していることも珍しくありません。健康診断は、病気が隠れていないかを確認し、愛犬が健康で長生きするためのパスポートのようなものです。

この記事では、犬の健康診断の必要性から、適切な受診年齢・頻度具体的な検査項目や費用まで、獣医師の監修のもと分かりやすく解説します。

 

この記事を読めば、以下のことが分かります。

  • 犬に健康診断が必要な理由とメリット
  • 何歳から、どのくらいの頻度で受けるべきか
  • 健康診断でどんなことをするのか(具体的な検査項目)
  • 健康診断の費用相場と注意点
  • シニア犬の健康診断の重要性

 

犬に健康診断は必要不可欠!4つのメリット

 

犬が健康診断を受けることには、多くのメリットがあります。単に病気を探すだけでなく、愛犬の健康をトータルで管理するために欠かせないものです。

 

1. 病気の早期発見・早期治療

犬の病気は、初期段階では飼い主さんが気づくような目立った症状が現れないことがほとんどです。しかし、健康診断で実施する血液検査やレントゲン検査などによって、初期の段階で病気の兆候を発見できることがあります。

例えば、腎臓病や心臓病は、症状が出てからではすでにかなり進行しているケースが多く、治療が難しくなることもあります。早期に発見できれば、食事療法や投薬などで病気の進行を遅らせ、愛犬の生活の質(QOL)を長く保つことが可能になります。

 

2. 健康時のデータ(基準値)を把握できる

健康な時に健康診断を受けておくことで、その子にとっての「正常な状態」のデータを把握することができます。この健康時のデータは、将来体調を崩した際に、病気の診断や治療方針を立てる上で非常に重要な情報となります。

例えば、肝臓の数値が少し高かったとしても、以前の検査でも同じくらいの数値だったことが分かれば、そこまで心配する必要がないと判断できる場合があります。

 

3. 肥満や生活習慣の改善に気づくきっかけになる

健康診断では、体重測定や視診、触診も行います。知らないうちに体重が増えすぎていたり、歯石が溜まっていたりすることもあります。健康診断は、痩せすぎ・太りすぎに気づくきっかけとなり、食事や運動量を見直す良い機会になります。

 

4. 獣医師に何でも相談できる

日頃から「これって大丈夫かな?」と気になっていることがあっても、わざわざ病院に行くほどでもないと思ってしまうことがあります。健康診断の機会に、獣医師に気軽に相談し、アドバイスをもらうことができます。

 

犬の健康診断は何歳から?推奨される頻度と年齢別の注意点

 

犬の健康診断の頻度は、年齢によって異なります。人間が年齢を重ねるごとに健康診断の項目が増えたり頻度が上がったりするのと同じです。

 

子犬(1歳未満)

子犬の時期は、まだ体が成長段階にあるため、健康診断の頻度は多くありません。一般的に、避妊・去勢手術を行う生後6ヶ月齢ごろに1度受けておくのがおすすめです。

  • 目的:先天性の病気や骨格の異常、成長に問題がないかなどを確認するため。
  • 注意点:子犬は急な体調変化を起こしやすいため、気になる症状があればすぐに獣医師に相談しましょう。

 

成犬(1〜6歳)

この年代は病気になることが少ないため、健康診断を怠りがちな時期です。しかし、見た目では分からない病気が隠れている可能性もあるため、年に1回の健康診断が推奨されています。

  • 目的:健康状態の維持、潜在的な病気の早期発見。
  • 注意点:「うちは元気だから大丈夫」と過信せず、定期的なチェックを習慣づけましょう。

 

シニア犬(7歳以上)

犬の7歳は、人間の年齢に換算するとおよそ40〜50歳(犬種によって異なります)にあたります。人間でいう「中年期」にあたり、病気のリスクが急増します。

この時期からは半年に1回(年2回)の健康診断が推奨されます。特に大型犬は小型犬よりも老化が早いため、5〜6歳ごろから年2回の健康診断を検討しましょう。

  • 目的:がん、糖尿病、心臓病、腎臓病などの生活習慣病や加齢による病気の早期発見。
  • 注意点:老化による体の変化に気づきにくいこともあります。体重減少、食欲不振、飲水量・尿量の増加、咳、歩き方の変化など、ささいな変化でも獣医師に相談することが重要です。

 

犬の健康診断で何をする?検査項目と費用相場

 

犬の健康診断は、基本的に「基本検査」「血液検査」「画像診断」の3つのステップで構成されることが一般的です。動物病院によって、費用や検査項目は異なるため、事前に確認しておきましょう。

 

基本的な健康診断の項目

  • 問診・視診・触診:飼い主さんからの情報(食欲、排泄、行動など)をもとに、獣医師が全身をくまなくチェックします。被毛や皮膚の状態、リンパ節の腫れ、関節の動き、歯石の有無などを確認します。
  • 体重測定:体重の変化は、病気のサインとなることがあります。
  • 尿検査・便検査:泌尿器系や消化器系の病気、寄生虫の有無などを調べます。

 

追加で推奨される検査

年齢や犬種、問診内容によって、さらに詳しい検査が推奨される場合があります。

  • 血液検査:貧血、炎症、脱水、臓器(肝臓、腎臓、膵臓など)の機能に異常がないかを調べます。
  • レントゲン検査:心臓の大きさ、肺の状態、骨格、お腹の中の臓器などを画像で確認します。
  • 超音波(エコー)検査:心臓の動きや、腹部(肝臓、腎臓、膀胱、副腎など)の臓器の状態をリアルタイムで詳細に確認します。

 

健康診断の費用相場

健康診断の費用は、動物病院や検査内容によって大きく異なります。一般的に、基本検査のみであれば5,000円〜10,000円程度血液検査やレントゲンを含めた総合的なコースでは15,000円〜30,000円程度が目安となります。

シニア犬向けのコースでは、心臓や甲状腺ホルモンの検査など項目が増えるため、さらに費用が高くなる傾向にあります。

 

愛犬の健康診断についてのQ&A

 

健康診断について、飼い主さんからよく寄せられる質問にお答えします。

 

Q1:健康診断の前に絶食・絶水は必要ですか?

A:はい、血液検査が含まれる場合は、検査の8〜12時間前からの絶食(お水はOK)が必要です。食事をすると血液中の脂質や血糖値が変動し、正確な検査結果が出ないことがあります。事前に病院から指示がある場合は、それに従いましょう。

 

Q2:健康診断で異常が見つかったらどうなりますか?

A:異常が見つかった場合は、その結果をもとに獣医師から詳しい説明と、今後の精密検査や治療の選択肢について提案があります。心配なことや疑問なことは、その場で遠慮なく質問しましょう。

 

Q3:健康診断はどこの病院でも受けられますか?

A:はい、多くの動物病院で健康診断は実施しています。かかりつけの病院がある場合は、そこで受けるのがおすすめです。もし、かかりつけ医がない場合は、事前に電話で「健康診断のコースや費用」について問い合わせてみましょう。

 

Q4:健康診断の予約は必要ですか?

A:はい、予約が必要な病院がほとんどです。特に検査内容が多い場合は時間がかかるため、事前に電話で予約を取ってから行くようにしましょう。

 

Q5:愛犬が怖がりで、健康診断がストレスにならないか心配です。

A:慣れない場所や人に触れられることは、犬にとってストレスになることがあります。普段から動物病院に「お散歩ついでに立ち寄る」などして、雰囲気に慣らしておくと良いでしょう。また、ストレスを軽減するための方法を、事前に病院に相談しておくことも有効です。

 

まとめ:愛犬の未来のために、健康診断を習慣づけよう

 

犬の健康診断は、単なるイベントではなく、愛犬が健康で長生きするために不可欠な健康管理です。言葉を話せない愛犬に代わって、飼い主さんが定期的に健康状態を確認してあげることは、大切な愛情表現の一つです。

年齢に応じた適切な頻度で健康診断を受けることを習慣づけ、愛犬との幸せな時間を1日でも長く過ごせるようにしましょう。

 

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