【獣医師監修】犬の便秘、うんちは何日から危険?受診の目安と自宅でできる5つの解消法

愛犬のうんち、何日出ていないと便秘?

愛犬が丸一日うんちをしないと、「便秘かも?」と心配になりますよね。毎日快便だった子が急にしなくなると、なおさら不安になるものです。この記事では、犬の便秘について飼い主さんが知りたい情報を網羅的に解説します。

この記事を読めば分かること

  • 犬が便秘と判断される日数の目安
  • すぐに動物病院へ連れて行くべき危険なサイン
  • 便秘を引き起こす主な原因(食事・ストレス・病気など)
  • 自宅で試せる具体的な便秘解消ケア5選
  • 動物病院で行われる一般的な治療法

犬の便秘、何日からが危険信号?受診の目安

犬の排便回数には個体差がありますが、健康な成犬は1日に1〜3回程度が一般的です。まずは「いつから便秘か」という具体的な目安と、注意すべき症状を知っておきましょう。

「丸2日以上」がひとつの目安

個体差はありますが、一般的に丸2日(48時間)以上排便がない場合は、便秘の可能性が高いと考えられます。さらに、3日以上排便がない場合は、うんちが硬くなり自力での排泄が困難になっている可能性があり、注意が必要です。

ただし、これはあくまで目安です。排便がないことに加えて、次に挙げるような症状が見られる場合は、日数にかかわらず早めに動物病院を受診してください。

すぐに病院へ行くべき危険なサイン

  • 排便ポーズをするのに便が出ない、または少量しか出ない
  • 排便時にキャンと鳴くなど、痛みを伴う
  • 食欲がなく、ぐったりしている
  • 嘔吐を繰り返す
  • お腹がパンパンに張っている、触ると嫌がる
  • 便に血が付いている

これらの症状は、単なる便秘ではなく、腸閉塞や前立腺肥大、腫瘍といった深刻な病気が隠れているサインかもしれません。様子を見ずに、すぐに獣医師に相談しましょう。

なぜ?愛犬が便秘になる5つの主な原因

犬の便秘は、さまざまな要因が絡み合って起こります。主な原因を5つに分けて見ていきましょう。

1. 食事内容の問題

毎日の食事は、便の状態に直接影響します。

  • 水分不足: ドライフードが中心で飲水量が少ないと、便が硬くなりやすくなります。特に夏場や、あまり水を飲まない子では注意が必要です。
  • 食物繊維のバランス: 食物繊維は便通を助けますが、不溶性食物繊維(穀物や豆類などに多い)が多すぎると、逆効果で便のカサが増しすぎて詰まりやすくなることがあります。
  • 食事の質: 消化の悪いフードや、骨などを与えた後に便秘になることもあります。

2. 運動不足

散歩や遊びなどの運動は、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう ※)を活発にするために不可欠です。
※蠕動運動:腸が内容物を先へ押し出していく動きのこと。

特に、散歩中に排便する習慣のある犬が、雨などで散歩に行けないと排便を我慢してしまい、便秘につながることがあります。

3. ストレスや環境の変化

犬はデリケートな動物です。ストレスは自律神経のバランスを乱し、消化器系の働きを鈍らせることがあります。

  • 引っ越しやペットホテルなど、環境の変化
  • 家族構成の変化(新しいペット、赤ちゃんの誕生など)
  • トイレが汚れている、場所が気に入らない
  • 雷や花火などの大きな音

4. 加齢による機能低下(シニア犬)

シニア犬(老犬)は、さまざまな理由で便秘になりやすくなります。

  • 筋力低下: 排便時にいきむための腹筋が衰えます。
  • 水分不足: のどの渇きを感じにくくなり、飲水量が減りがちです。
  • 運動量の減少: 関節の痛みなどから動きたがらず、腸の動きが鈍くなります。
  • 病気: 関節炎の痛みで排便姿勢がとれなかったり、他の病気を抱えていることもあります。

5. 病気のサイン

便秘の背景には、治療が必要な病気が隠れていることがあります。

  • 消化器の病気: 巨大結腸症、消化管内の腫瘍や異物による閉塞(腸閉塞)など。
  • 肛門周りの病気: 肛門嚢炎や会陰ヘルニアなど、痛みで排便を嫌がるようになります。
  • 前立腺肥大(未去勢のオス): 肥大した前立腺が直腸を圧迫し、便の通り道を狭くします。
  • 神経や骨の病気: 椎間板ヘルニアなどで下半身に麻痺があると、自力で排便できなくなります。

自宅で試せる!犬の便秘解消を目指す5つのケア方法

愛犬に便秘の傾向が見られたら、まずは自宅でできるケアを試してみましょう。ただし、ぐったりしているなど前述の危険なサインがある場合は、セルフケアを行わず、すぐに病院へ向かってください。

1. 水分補給を促す工夫

便を柔らかくするためには水分が不可欠です。ドライフードにぬるま湯をかけたり、ウェットフードを混ぜたり、肉や野菜の茹で汁(味付けなし)をスープとして与えるのも良いでしょう。水の器を複数箇所に置くのも効果的です。

2. 食事内容の見直し

便通を整える効果が期待できる食材を取り入れてみましょう。カボチャやサツマイモ(いずれも加熱して潰したもの)、プレーンヨーグルトなどを少量、普段のフードにトッピングする方法があります。ただし、与えすぎは下痢の原因になるため、ごく少量から試してください。便秘ケア用の療法食やサプリメントについては、獣医師に相談の上で取り入れましょう。

3. 適度な運動と散歩

無理のない範囲で、散歩の時間を少し長くしたり、室内でボール遊びをしたりして、腸の動きを刺激しましょう。運動はストレス解消にもつながり、一石二鳥です。

4. お腹のマッサージ

リラックスしている時に、優しくお腹をマッサージしてあげるのも良い方法です。犬のおへその周りを、ひらがなの「の」の字を書くように、時計回りにゆっくりと撫でてあげましょう。腸の動きを外からサポートするイメージです。犬が嫌がる場合は無理に行わないでください。

5. トイレ環境の整備

犬はきれい好きな動物です。トイレシートはこまめに交換し、常に清潔な状態を保ちましょう。また、トイレの場所が落ち着かない場合は、静かで安心できる場所に見直してあげることも大切です。

動物病院ではどんな検査・治療をするの?

自宅でのケアで改善しない場合や、症状が重い場合は、動物病院での治療が必要です。病院では、まず原因を特定するための検査を行います。

  • 問診・触診: 生活の様子を聞き、お腹の張りや痛みの有無、直腸内の便の状態などを確認します。
  • 画像検査: レントゲン検査や超音波検査で、便の詰まり具合や、異物・腫瘍・前立腺肥大などがないかを確認します。

これらの検査に基づき、以下のような治療が行われます。

  • 便の軟化剤や下剤の処方: 内服薬で便を出しやすくします。
  • 浣腸や摘便: 肛門からぬるま湯や薬剤を入れて便を柔らかくしたり、獣医師が手袋をして直接便をかき出したりする処置です。
  • 点滴: 脱水がひどい場合に行い、全身の状態を整えながら便を柔らかくします。
  • 原因疾患の治療: 便秘の原因となっている病気(腫瘍やヘルニアなど)があれば、その治療を優先します。

犬の便秘に関するよくある質問

Q. 子犬が便秘になりやすいですか?

A. 子犬は消化機能が未熟なため、フードの急な変更や食べ慣れないものを口にした際に、便秘や下痢を起こしやすいです。また、寄生虫感染が原因で便秘になることもあります。排便回数は成犬より多い(1日5回前後)ため、1日出ないだけでも注意して様子を見てあげましょう。

Q. 便秘解消におすすめの食べ物はありますか?

A. 加熱したカボチャやサツマイモ、水溶性食物繊維が豊富なリンゴ(芯と種は除く)、善玉菌を含む無糖のプレーンヨーグルトなどが挙げられます。ただし、これらはあくまで補助的なものです。アレルギーがないか確認し、必ずごく少量から与えてください。主食のバランスを崩さない程度に留め、改善しない場合は獣医師に相談しましょう。

Q. 人間用の便秘薬や浣腸を使ってもいいですか?

A. 絶対にやめてください。人間と犬では体のつくりや薬の感受性が全く異なります。人間用の薬は犬にとって中毒を起こす成分が含まれていたり、量が多すぎて重篤な副作用(激しい下痢、脱水、電解質異常など)を引き起こしたりする危険性が非常に高いです。自己判断での使用は命に関わりますので、必ず動物病院で処方された薬を使用してください。

まとめ:愛犬の「いつもと違う」に気づくことが大切

犬の便秘には「何日以上出なければ病気」という絶対的な基準はありません。大切なのは、普段の愛犬の排便回数や便の状態を飼い主さんが把握し、「いつもと違う」という変化に早く気づいてあげることです。

2日以上排便がない場合は便秘を疑い、食欲不振や嘔吐など他の症状を伴う場合は、ためらわずに動物病院を受診してください。この記事で紹介した原因やセルフケアを参考に、愛犬の健康管理にお役立ていただければ幸いです。

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