愛犬にはいつまでも健康で元気に過ごしてほしいと願う飼い主さんは多いでしょう。しかし、犬は言葉を話せないため、体調不良のサインに気づくのは難しいと感じるかもしれません。
実は、日々のスキンシップやちょっとした観察で、病気の早期発見に繋がる大切なサインを見つけることができます。この記事では、獣医師が推奨する健康チェックの8つのポイントと、それぞれのチェックで注意すべき具体的なサインを解説します。
この記事を読むとわかること
- 愛犬の健康状態をチェックすべき8つのポイント
- それぞれの部位で注意すべき病気のサイン
- 健康チェックを日々の習慣にするためのヒント
- 病気のサインが見られた際の適切な対処法
毎日できる!愛犬の健康チェック8つのポイント
ここでは、自宅で手軽にできる健康チェックの具体的な方法を、体の部位ごとにご紹介します。日々のスキンシップの一環として、ぜひ試してみてください。
① 耳をチェックする
耳の病気は、特に垂れ耳の犬種や耳の中に毛が多い犬種でよく見られます。日頃から以下の点をチェックしましょう。
- 耳がひどく臭くないか
- 耳の穴や内側が赤く腫れていないか
- 黒っぽい耳垢や分泌物が多くないか
- 頻繁に頭を振ったり、耳を痒がったりしていないか
【注意すべきポイント】
耳の病気は、アトピーやアレルギーの症状として現れることもあります。耳の汚れがひどい、赤みがある、かゆみが続く場合は、外耳炎などの可能性があるため、動物病院を受診しましょう。
② 目をチェックする
目の周りや目の状態は、全身の健康状態を反映することがあります。
- 白目が赤く充血していないか
- 普段より目ヤニや涙が多くないか
- 黒目の奥が白っぽくなっていないか(白内障の可能性)
- 白目が黄色っぽくなっていないか(黄疸)
- 目をしょぼつかせたり、痒がったりしていないか
【注意すべきポイント】
目ヤニや涙が一時的なものではなく、ずっと続いている場合は、結膜炎や角膜炎、緑内障などの病気が考えられます。また、白目が黄色い「黄疸」が見られる場合は、肝臓や胆のうの病気のサインであるため、非常に危険な状態です。すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
③ 口をチェックする
口の中をチェックすることは、歯周病だけでなく、内臓の病気のサインを見つける上でも重要です。
- 歯ぐきが赤く腫れていないか
- 歯石や歯垢が多く付着していないか
- 口臭がひどくないか
- 歯ぐきの粘膜の色が健康的なピンク色か(白っぽい場合は貧血、黄色は黄疸、青紫はチアノーゼの可能性)
【注意すべきポイント】
歯石がないのに口臭がひどい場合は、腎臓病や糖尿病など、内臓の病気が隠れていることがあります。また、歯ぐきの色が異常な場合は、緊急性の高い病気のサインであるため、すぐに動物病院に連絡してください。
【歯磨きのポイント】
歯周病は万病の元です。犬用の歯ブラシや人間の子供用歯ブラシを使い、歯磨き粉は付けずに優しく磨いてあげましょう。歯磨きを嫌がる場合は、歯磨き効果のあるおもちゃや、デンタルケア用のガムなども活用してみてください。
④ 鼻と呼吸の状態をチェックする
鼻や呼吸は、犬の体調を測る重要なバロメーターです。
- 鼻が適度に湿っているか(乾燥しすぎていないか)
- くしゃみや鼻水、咳が出ていないか
- 涼しい場所でも呼吸が荒くないか
- 体全体を使って苦しそうに呼吸していないか
【注意すべきポイント】
通常、犬はパンティング(舌を出してハァハァと呼吸すること)で体温を調節します。しかし、安静にしている時でも呼吸が速い、苦しそうにしている場合は、呼吸器系の病気や心臓病のサインかもしれません。特に、舌の色が紫色になる「チアノーゼ」が見られる場合は緊急事態です。すぐに動物病院へ向かいましょう。
⑤ 体全体(皮膚・被毛・体型)をチェックする
全身を優しく触ることで、見た目だけでは分からない異常に気づくことがあります。
<体型チェック>
肥満は万病の元です。以下のチェックポイントで、理想的な体型を保てているか確認しましょう。
- 触ってみて、適度な脂肪の下に肋骨が感じられるか
- 横から見て、お腹に緩やかな引き締まりがあるか
- 上から見て、腰にくびれがあるか
<皮膚・被毛チェック>
皮膚や被毛の状態は、皮膚病だけでなく、アレルギーや内臓の病気のサインであることもあります。
- フケ、脱毛、赤み、湿疹などがないか
- かさぶたやイボ、新しいできものがないか
- 体を頻繁に痒がったり、舐めたりしていないか
- 被毛にノミやダニが付いていないか
【注意すべきポイント】
全身を撫でるついでに、足の裏、指の間、耳の裏、首輪の下など、普段見えにくい部分も丁寧にチェックしましょう。小さなしこりやできものが皮膚ガンである可能性もあります。早期発見のためにも、日頃のスキンシップが非常に重要です。
⑥ 食欲と飲水量
食欲や飲水量の変化は、体調不良を示す最も分かりやすいサインの一つです。
- 一日中全く食事に手をつけない
- 普段よく食べるのに、急に食欲がなくなった
- 水を飲む量が急に増えた、または減った
- 食事を吐き戻す、水を飲んですぐに吐く
【注意すべきポイント】
一日以上全く食事をしない、ぐったりしている、吐き戻しを繰り返す場合は、病気のサインの可能性が高いです。特に、水を飲む量が急に増えたり、尿の量が増えたりする場合は、腎臓病や糖尿病などの疑いがあるため、早めに動物病院を受診してください。
⑦ 排泄の状態
便や尿は、内臓の健康状態を教えてくれる大切な情報源です。
- 便が緩い、または水っぽい下痢ではないか
- 血が混じっていないか(鮮血、タール状の黒っぽい便)
- おしっこの色や量、回数に異常がないか
- おしっこに血が混じっていないか
【注意すべきポイント】
下痢や便秘が続く場合は、感染症や食事内容、ストレスなど様々な原因が考えられます。特に血便や、尿に血が混じる場合は、膀胱炎や尿路結石、腎臓の病気などの可能性があります。便や尿に異常が見られた際は、写真に撮ったり、可能であれば持参して動物病院へ行きましょう。
⑧ 行動の変化
普段の行動との違いに注意することも、早期発見に繋がります。
- 散歩を急に嫌がるようになった、散歩中にふらつく、失神する
- 足元がおぼつかない、手足が震えている
- 呼びかけに反応が鈍くなった、壁や家具にぶつかる
- ぐったりしている、意識がはっきりしない、失禁する
【注意すべきポイント】
これらの症状は、老化によるものだけでなく、脳や神経系の病気、心臓病などの緊急性の高い病気のサインであることも少なくありません。特に、失神や意識障害が見られる場合は、迷わずすぐに動物病院へ向かってください。
犬の健康チェックに関するよくある質問
Q1: 毎日すべてのチェックをする必要がありますか?
A1: 毎日すべての項目を完璧にこなす必要はありません。たとえば、今日は耳と目、明日は口と体をチェックするなど、日替わりで無理のない範囲で行うのがおすすめです。大切なのは、日々の変化に気づけるように、継続して観察することです。
Q2: どこを触られても怒らないようにするにはどうすればいいですか?
A2: 子犬のうちから、耳の中や口、足先など、触られることを嫌がる部位を優しくマッサージしたり、褒めたりしながら慣らしていくのが効果的です。信頼関係を築き、健康チェックが「嫌なこと」ではなく「気持ちの良いスキンシップ」になるように工夫しましょう。
Q3: 犬の歯磨きがどうしてもできません。何か他に方法はありますか?
A3: 歯磨きが難しい場合は、歯磨き効果のある犬用ガムや、飲み水に混ぜて使うタイプの液体デンタルケア用品、デンタルおもちゃなどを活用するのも良いでしょう。ただし、歯磨きに勝るものはありませんので、少しずつでも慣らす努力を続けることが理想的です。
Q4: 健康チェックで異常を見つけたら、すぐに病院に行くべきですか?
A4: はい、不安な点が見つかった場合は、すぐに動物病院に相談してください。自己判断で様子を見ている間に、病状が悪化してしまうこともあります。特に、意識障害、呼吸困難、失神、出血など、緊急性の高い症状の場合は、一刻も早く受診しましょう。
【まとめ】健康チェックは毎日のスキンシップから
犬の健康チェックは、「頑張ってやるもの」ではなく、「毎日のスキンシップ」の一環として取り入れることが大切です。撫でてあげるついでに耳や目をチェックする、ブラッシングしながら全身の皮膚の状態を確認するなど、無理なく続けられる方法を見つけましょう。
愛犬の健康は飼い主さんの日々の観察にかかっています。些細な変化でも「おかしいな」と感じたら、まずは動物病院に相談してください。早期発見・早期治療が、愛犬の長生きに繋がります。