「うちの子は元気そうだけど、健康診断って本当に必要なの?」
そう考えている飼い主さんは少なくないかもしれません。犬は言葉を話せないため、病気の症状を伝えることができません。そのため、病気がかなり進行してからでないと、飼い主さんが異変に気づけないことも多々あります。
犬の健康診断は、病気の予防や、見た目ではわからない病気の早期発見のために非常に重要です。この記事では、獣医師監修のもと、犬の健康診断の目的から具体的な検査内容、受診の目安、費用まで詳しく解説します。
この記事を読めば、以下のことがわかります。
- なぜ犬に定期的な健康診断が必要なのか
- 健康診断でどんな検査をするのか、その目的と内容
- 愛犬の年齢に合わせた健康診断の適切な頻度
- 健康診断の費用相場と、安く抑えるためのポイント
- 健康診断を受ける前に飼い主さんが準備すべきこと
なぜ犬に定期的な健康診断が必要なのか?
犬は人間よりもはるかに早く歳を重ねます。人間が1年経つ間に、犬は小型犬で約4〜5歳、大型犬で約7歳も年を取ると言われています。このため、年に一度の健康診断が、人間に換算すると数年に一度の健康診断に匹敵します。
健康診断の最大の目的は、「病気の早期発見」です。早期に病気を見つけられれば、治療の選択肢が増え、体への負担が少ないうちに完治できる可能性も高まります。また、病気を予防するための生活習慣のアドバイスを受けることもできます。
犬の健康診断の一般的な検査項目と目的
健康診断の具体的な内容は、動物病院や犬の年齢、健康状態によって異なりますが、ここでは一般的な検査項目とその目的をご紹介します。
① 問診と視診・触診・聴診
まず、飼い主さんへの問診で、日頃の様子(食事、排泄、元気など)を詳しく聞き取ります。その後、獣医師が実際に見て、触って、音を聞いて全身の状態をチェックします。
- 視診:目や口の中、皮膚の状態などを目で見て確認します。
- 触診:体を触って、しこりや腫れがないか、リンパ節が腫れていないかなどを確認します。
- 聴診:聴診器を使って心臓や肺の音を聞き、異常がないかを調べます。
これらの基礎的な検査だけでも、腫瘍や心臓の病気、関節の異常など、様々な病気の兆候を発見できることがあります。
② 血液検査
血液検査は、体の内部の状態を把握するために最も重要な検査の一つです。血液中の成分を調べることで、以下のようなことがわかります。
- 血球検査:貧血や炎症、感染症の有無などを確認します。
- 生化学検査:肝臓、腎臓、膵臓などの内臓機能に異常がないか、糖尿病の兆候がないかなどを調べます。
- ホルモン検査:甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)といった内分泌疾患の有無を確認します。
血液検査の結果は、数値として明確に現れるため、病気の早期発見に非常に役立ちます。
③ 尿検査・便検査
尿と便は、体内の老廃物が排出されるため、様々な健康情報が含まれています。
- 尿検査:尿の濃度や成分を調べることで、腎臓病、尿石症、膀胱炎、糖尿病などの有無を調べます。
- 便検査:便に寄生虫の卵や消化不良のサインがないかを確認します。
尿や便は自宅で採取できる場合がほとんどなので、事前に病院に確認し、新鮮なものを準備していくとスムーズです。
④ 画像診断(レントゲン検査・超音波検査)
体の内部を「画像」として確認する検査です。
- レントゲン検査:骨や関節の異常、心臓や肺の形、膀胱内の結石などを確認します。
- 超音波(エコー)検査:内臓(心臓、肝臓、腎臓など)の形や動き、腫瘍の有無、血液の流れなどをリアルタイムで確認できます。レントゲンではわからない結石や小さな病変も発見できることがあります。
犬の健康診断の費用相場と受診の目安
費用相場
健康診断の費用は、動物病院や検査項目の数、犬の年齢などによって大きく異なります。一般的な健康診断(血液検査、尿・便検査、レントゲン、超音波など)の費用は、1〜3万円程度が相場です。
動物病院によっては、健康診断のパック料金を用意しているところや、ペット保険の対象となる場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
受診の目安
獣医師が推奨する健康診断の頻度は以下の通りです。
- 子犬(1歳未満):ワクチン接種時などに合わせて、健康チェックをしてもらいましょう。
- 成犬(1〜6歳):年に一度の健康診断が推奨されます。
- シニア犬(7歳〜):半年に一度の健康診断が推奨されます。
特にシニア期は、病気の進行が早まるため、こまめなチェックが重要になります。
健康診断前に飼い主さんがすべきことと注意点
健康診断をスムーズに進め、より正確な情報を得るために、飼い主さんが準備しておくべきことがあります。
- 愛犬の情報をまとめる:普段の食事や排泄の様子、気になる行動や症状などをメモしておきましょう。
- 絶食・絶水が必要か確認:血液検査の場合、検査前の絶食や絶水が必要なことがあります。事前に病院に確認し、家族間で情報を共有しておきましょう。
- 便や尿を持参する:新鮮な便や尿の方が正確な検査ができます。採取方法を事前に確認し、持参しましょう。
- 日頃の様子をよく知る人が連れていく:健康状態や行動について正確に答えられる人が付き添うようにしましょう。
よくある質問
- Q1: 怖がりのうちの子でも健康診断は受けられますか?
- A: はい、受けられます。怖がりの子の場合、無理に全ての検査を行うのではなく、できる範囲で進めてくれる動物病院がほとんどです。事前に病院にその旨を伝え、なるべくストレスがかからないよう配慮してもらいましょう。かかりつけの獣医師に、犬が苦手なことや好きなことなどを伝えておくことも大切です。
- Q2: 健康診断とワクチン接種は同時にできますか?
- A: 一般的には、同時に行うことは推奨されていません。ワクチン接種は体調が万全な時に行うべきであり、健康診断で何らかの異常が見つかった場合は、ワクチン接種を延期することもあります。通常、健康診断で問題がないことを確認してから、別の日にワクチン接種を行うことが多いです。
- Q3: 健康診断で病気が見つかったらどうすればいいですか?
- A: 検査結果について、獣医師から詳しく説明があります。その際、病名や今後の治療方針、自宅でのケア方法など、気になることは全て質問しましょう。納得のいく治療を進めるため、セカンドオピニオンを検討することも一つの選択肢です。
- Q4: 絶食が必要なのはなぜですか?
- A: 食後すぐに血液検査を行うと、血液中の血糖値や脂質の値が変化し、正確な検査結果が得られない可能性があるからです。特に血糖値は食事の影響を大きく受けるため、糖尿病などの疑いがある場合は、絶食が不可欠となります。絶食時間は動物病院によって異なるため、必ず事前に確認しましょう。
まとめ|愛犬の「健康」という名のプレゼント
犬の健康診断は、病気を治すためのものではなく、病気になる前に、あるいは病気の初期段階で気づくためのものです。私たち飼い主が愛犬にできる最高のプレゼントの一つが、この定期的な健康チェックなのかもしれません。
この記事を参考に、愛犬の健康を守るための第一歩を踏み出してください。