【獣医師監修】犬がご飯を食べない!わがまま?病気?原因と今すぐ試せる対処法を徹底解説

いつもは喜んで食べるはずの愛犬が、ぷいっと顔をそむけてご飯を食べてくれない…。「どこか具合でも悪いのかな?」「もしかして、わがまま?」と、飼い主さんなら誰しも心配になりますよね。

犬がご飯を食べない理由は、ささいなものから緊急を要する病気のサインまで様々です。大切なのは、冷静に愛犬の様子を観察し、原因に合わせた適切な対処をすることです。

この記事では、犬がご飯を食べない時に考えられる原因と、ご家庭で今すぐ試せる具体的な対処法を獣医師が詳しく解説します。

 

  • 最初に確認すべきこと:病院へ行くべきかどうかの緊急性セルフチェック
  • 考えられる5つの原因:病気のサインから、わがまま、老化まで
  • 家庭でできる5つの対処法:フードの工夫から生活習慣の見直しまで
  • 特に注意が必要なケース:子犬や老犬が食べない場合

この記事を読めば、愛犬の食欲不振に対して落ち着いて行動できるようになります。

 

【まずはコレを確認】病院へ行くべき?緊急性セルフチェック

 

ご飯を食べないこと以外に、以下の症状が見られる場合は、病気が隠れている可能性があります。1つでも当てはまれば、様子を見ずにすぐ動物病院を受診してください。

 

  • 元気がない、ぐったりしている
  • 嘔吐や下痢を繰り返す
  • 水もまったく飲まない
  • 呼吸が速い、苦しそう
  • お腹が張っている、触ると痛がる
  • トイレに行きたがるが尿や便が出ない
  • よだれが多い、口を気にする、口臭が強い

 

特に、子犬やシニア犬、持病のある犬の場合、食欲不振は急激な体調悪化につながることがあります。半日でも食事をとらない場合は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

 

犬がご飯を食べない5つの主な原因

 

緊急性がない場合、犬がご飯を食べない背景には様々な理由が考えられます。代表的な5つの原因を見ていきましょう。

 

原因1:病気やケガによる不調

食欲は健康のバロメーターです。多くの病気の初期症状として食欲不振が現れます。

  • 口の中のトラブル: 歯周病、口内炎、歯の破折など。「食べたいけど食べると痛い」ため、フードを口に含んでも落としてしまうことがあります。
  • 消化器系の病気: 胃腸炎、膵炎、異物の誤飲など。吐き気や腹痛で食欲がなくなります。
  • 全身性の病気: 腎臓病、肝臓病、心臓病、腫瘍など。病気が進行すると体の様々な機能が低下し、食欲も落ちてきます。
  • 痛み: 関節炎や椎間板ヘルニアなど、体のどこかに痛みがあると、食べる姿勢をとるのが辛くて食事ができなくなることがあります。

 

原因2:ストレスによる食欲低下

犬は繊細な動物です。生活の中の些細な変化がストレスとなり、食欲不振につながることがあります。

  • 環境の変化: 引っ越し、模様替え、新しい家族やペットが増えた、来客があった。
  • 飼い主さんとの関係: 留守番の時間が長くなった、飼い主さんが忙しくて構ってもらえない、家族喧嘩など。
  • その他: 運動不足、雷や工事などの大きな音、トリミングや病院の後など。

 

原因3:「わがまま」ではなく「学習」の結果

「ご飯を食べなかったら、もっと美味しいおやつをもらえた」という経験をすると、犬は「待っていれば良いことがある」と学習します。これは「わがまま」というより、賢いがゆえの行動です。おやつばかり欲しがり、主食であるドッグフードを食べなくなってしまいます。

 

原因4:老化による自然な変化

7歳頃からシニア期に入ると、犬の体には様々な変化が現れます。

  • 代謝の低下: 運動量が減り、基礎代謝も落ちるため、若い頃と同じ量を必要としなくなります。
  • 嗅覚・味覚の衰え: 匂いや味が分かりにくくなり、食事への興味が薄れることがあります。
  • 消化機能の低下: 消化吸収能力が落ち、一度にたくさん食べられなくなります。
  • 歯や顎の衰え: 歯周病が進んだり、硬いものが食べにくくなったりします。

 

原因5:フード自体が気に入らない

病気や体調不良ではない単純な理由も考えられます。

  • 好みの問題: フードの味、匂い、粒の大きさや硬さが気に入らない。
  • 飽き: ずっと同じフードを食べていて、飽きてしまった。
  • フードの劣化: 開封してから時間が経ち、風味が落ちたり油が酸化したりしている。

 

【今すぐ試せる】家庭でできる5つの対処法

 

明らかな体調不良が見られない場合は、ご家庭でいくつかの対処法を試してみましょう。ただし、24時間以上何も食べない場合は、一度動物病院に相談してください。

 

対処法1:フードに工夫を凝らす

いつものフードに少し手を加えるだけで、食いつきが劇的に改善することがあります。

  • お湯でふやかす: ドライフルードを30~40℃の人肌程度のお湯でふやかすと、香りが立って嗜好性がアップします。熱湯はビタミンを壊す可能性があるので避けましょう。
  • 風味豊かなトッピング:
    • 匂いの強いウェットフードを少量混ぜる
    • 鶏のささみの茹で汁(無塩・皮なし)をかける
    • 無糖のヨーグルトや犬用のチーズを少量加える
    • すりおろしたリンゴや茹でて潰したカボチャを混ぜる

    ※注意:ハチミツはボツリヌス菌、ネギ類、ブドウ、チョコレートは犬にとって中毒の原因になります。絶対に与えないでください。

 

対処法2:食事の環境や与え方を見直す

  • 落ち着ける場所で: 人の出入りが激しい場所や、他の犬に邪魔される場所は避け、静かで安心できる場所で食事をさせましょう。
  • 食器の高さを調整: 特にシニア犬や首に痛みがある犬は、少し高さのある食器台を使うと楽な姿勢で食べられます。
  • 手から与えてみる: 飼い主さんの手から直接与えると、安心して食べてくれることがあります。
  • 食事の回数を増やす: 1日の食事量を3~4回に分けて、少しずつ与えてみましょう。胃への負担が減り、シニア犬や食が細い子に有効です。

 

対処法3:生活習慣を改善して食欲増進

人間と同じで、犬も適度な運動でお腹が空きます。散歩のコースや時間を変えたり、室内で知育トイを使った遊びを取り入れたりして、心と体に良い刺激を与えましょう。これによりストレス解消にもつながります。

 

対処法4:「わがまま食べ」への正しい対応

愛犬の健康のため、心を鬼にすることも必要です。以下のルールを家族全員で徹底しましょう。

  1. ご飯を出して、15~20分経っても食べなければ、黙って片付ける。
  2. 次の食事の時間まで、おやつや人の食べ物は一切与えない。
  3. 次の食事の時間に、また同じフードを出す。

これを繰り返すことで、「出された時に食べないと、次はない」と学習します。数日かかることもありますが、根気強く続けましょう。

 

対処法5:フードの切り替えを検討する

フードへの飽きや好みが原因の場合、思い切ってフードを変更するのも一つの手です。ライフステージ(子犬用、成犬用、シニア用)や、愛犬の好みに合いそうなもの(チキン、魚、ラムなど)を選んでみましょう。切り替える際は、1週間~10日ほどかけて、今までのフードに新しいフードを少しずつ混ぜながら慣らしていくのがお腹に優しい方法です。

 

よくある質問(Q&A)

 

Q1. ご飯は食べませんが、水は飲みます。元気もあります。様子を見て大丈夫?

A. はい、元気があって水を飲めているなら、半日~1日程度は様子を見ても良いでしょう。フードの好みや軽いストレスが原因かもしれません。上記で紹介した「家庭でできる対処法」を試してみてください。ただし、24時間以上続く場合や、他に少しでも気になる症状が出てきた場合は、動物病院に相談しましょう。

 

Q2. トッピングは毎日あげてもいいですか?

A. トッピングが習慣になると、それがないと食べなくなったり、栄養バランスが偏ったりする可能性があります。あくまで食欲がない時の一時的な対策と考え、常用は避けるのが理想です。トッピングをする場合でも、1日の総カロリーの10%以内にとどめ、主食は総合栄養食のドッグフードにしましょう。

 

Q3. 2日間ご飯を食べていません。さすがに病院に行くべきですか?

A. はい、すぐに動物病院を受診してください。成犬であっても、丸1日(24時間)以上食べない場合は何らかの異常が考えられます。特に2日間も食欲がない状態は、脱水や栄養不足が進行している可能性があり危険です。自己判断で様子を見続けるのはやめましょう。

 

まとめ:観察と早めの行動が愛犬を守る

 

犬がご飯を食べない時、飼い主さんがパニックにならず、冷静に対応することが何よりも大切です。

  1. まずは緊急性をチェック:元気や他の症状を確認し、危険なサインがあれば即病院へ。
  2. 原因を探る:病気、ストレス、老化、わがままなど、何が原因かを考える。
  3. 対処法を試す:緊急性がなければ、フードや環境の工夫を試してみる。
  4. 改善しないなら相談を:家庭での対処で改善しない場合や、24時間以上食べない場合は、必ず獣医師に相談しましょう。

食欲は愛犬からの大切なメッセージです。そのサインを見逃さず、適切なケアをしてあげてくださいね。

 

 

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