「ブラッシングしてもしても、愛犬の毛が抜けてキリがない…」「部屋中が毛だらけで掃除が大変!」
春と秋に訪れる犬の「換毛期」は、多くの飼い主さんにとって悩みの種ではないでしょうか。しかし、この時期のケアを怠ると、愛犬の皮膚トラブルにつながったり、人のアレルギーの原因になったりすることもあります。
この記事では、獣医師監修のもと、犬の換毛期を快適に乗り切るための具体的な対策を、愛犬のケアからお部屋の掃除術まで網羅的に解説します。
この記事でわかること
- 犬の換毛期がいつなのか、なぜ起こるのかという基本
- 効果的なブラッシングやシャンプーなど、抜け毛を減らすための正しいお手入れ方法
- 大変な時期を乗り切るための、効率的なお掃除のコツ
- 食事など体の中からできるケア
- 注意すべき「病的な抜け毛」との見分け方
そもそも犬の「換毛期」とは?時期と仕組みを知ろう

効果的な対策を行うために、まずは換毛期について正しく理解しましょう。
換毛期はいつ?年に2回の抜け毛シーズン
犬の換毛期は、主に春(3月~5月頃)と秋(9月~11月頃)の年に2回訪れます。
- 春の換毛期:冬毛(保温性の高いフワフワした毛)が抜け、夏毛(通気性の良い粗い毛)に生え変わる。
- 秋の換毛期:夏毛が抜け、厳しい寒さに備えるための冬毛に生え変わる。
日照時間や気温の変化を体が感じ取って被毛の量を調整する仕組みで、特に春は冬毛が一気に抜けるため、抜け毛の量が非常に多くなります。
なぜ毛が抜けるの?被毛の役割と「ダブルコート」
犬の被毛には、皮膚を紫外線や刺激から守る硬い毛「オーバーコート(上毛)」と、体温を調節する役割を持つ柔らかい毛「アンダーコート(下毛)」の2種類があります。
この両方を持つ犬種を「ダブルコート」と呼び、換毛期には主にアンダーコートがごっそりと抜け落ちます。柴犬、ゴールデン・レトリーバー、ポメラニアンなどが代表的なダブルコートの犬種です。
換毛期がない犬種(シングルコート)もいる
犬の中には、アンダーコートを持たず、オーバーコートのみで被毛が構成されている「シングルコート」の犬種もいます。プードルやマルチーズ、ヨークシャー・テリアなどが代表的です。
シングルコートの犬は明確な換毛期がなく、抜け毛が少ないのが特徴です。ただし、毛が伸び続けるため定期的なトリミングが必要になります。
【愛犬のケア編】今日からできる換毛期の抜け毛対策5選

換毛期の抜け毛をゼロにすることはできませんが、適切なお手入れで大幅に軽減させることができます。
① 基本は毎日のブラッシング
換毛期対策で最も重要なのがブラッシングです。抜け毛を放置すると、毛が絡まって毛玉になり、通気性が悪化して蒸れることで皮膚炎などのスキントラブルの原因になります。換毛期はできるだけ毎日、丁寧にブラッシングしてあげましょう。
【ブラシの種類と選び方】
- スリッカーブラシ:「く」の字に曲がったピンがたくさん付いており、アンダーコートをごっそり取り除くのに最適です。ただし、皮膚を傷つけないよう、力を入れすぎずに優しく使いましょう。
- ファーミネーターなどの専用ブラシ:抜け毛を効率的に除去するために開発されたブラシ。短時間で大量の毛が取れます。
- ピンブラシ:毛のもつれをほぐし、マッサージ効果も期待できます。長毛種におすすめです。
- ラバーブラシ:ゴム製で皮膚に優しく、短毛種のマッサージやシャンプー時に役立ちます。
愛犬の毛質や皮膚の状態に合わせて、最適なブラシを選んであげてください。
② 定期的なシャンプーで抜け毛を洗い流す
シャンプーは、浮き上がった抜け毛を一度に洗い流すのに非常に効果的です。換毛期にはシャンプーの頻度を月1~2回程度を目安に行うと良いでしょう。
ただし、シャンプーのしすぎは皮膚に必要な皮脂まで洗い流してしまい、バリア機能の低下を招く恐れがあります。頻度を増やす場合は、必ず低刺激性のシャンプーを使用し、シャンプー後は保湿ケアをしてあげましょう。また、生乾きは雑菌繁殖の原因になるため、ドライヤーで根本からしっかりと乾かすことが重要です。
③ サマーカットのメリットと注意点
春の換毛期に毛を短く刈る「サマーカット」は、見た目が涼しげになり、ブラッシングやシャンプーの手間が軽減されるというメリットがあります。
しかし、地肌が見えるほど極端に短くするのはNGです。被毛には皮膚を紫外線や虫刺されから守る役割があるため、短くしすぎるとかえって皮膚トラブルのリスクを高めます。また、犬種によっては毛質が変わってしまったり、毛が生えにくくなったりする(バリカン後脱毛)こともあります。サマーカットを検討する際は、トリマーさんや獣医師によく相談しましょう。
④ 洋服を着せて抜け毛の飛散を防ぐ
お出かけの際や来客時など、一時的に洋服を着せることで、部屋への抜け毛の飛散を物理的に抑えることができます。
ただし、長時間の着用は蒸れて皮膚トラブルの原因になるため避けてください。春や夏場は通気性の良いコットンやメッシュ素材、秋は保温性のある素材など、季節に合った快適なものを選んであげましょう。
⑤ 体の内側から!食事による皮膚・被毛ケア
健康な皮膚と被毛を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が不可欠です。特に、皮膚のバリア機能をサポートするオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸、良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを十分に摂取できるフードを選びましょう。換毛期には、皮膚・被毛の健康維持に配慮されたフードやサプリメントを取り入れるのも一つの方法です。
【飼い主さんの対策編】換毛期の掃除を楽にするコツ

お手入れと並行して、お部屋の掃除も工夫しましょう。犬の毛はアレルギーの原因となるアレルゲンやダニの温床にもなります。
掃除の基本は「舞い上げない」「上から下へ」
いきなり掃除機をかけると、排気で毛が舞い上がってしまいます。まずはペーパーモップなどで床の毛を取り除いてから掃除機をかけるのが効率的です。また、掃除は棚の上などの高い場所から始め、最後に床を掃除するという「上から下へ」の順番を徹底しましょう。
場所別・アイテム別お掃除術
- フローリング:乾いたペーパーモップや、静電気で毛を吸着するタイプのモップがおすすめです。壁際や部屋の隅に毛がたまりやすいので、そこから中央に向かって集めるように掃除します。
- カーペット・ラグ:粘着クリーナー(コロコロ)や、ゴム手袋をはめて撫でる方法が効果的です。ゴムの摩擦で毛が面白いように集まります。
- ソファ・布製品:洋服用のエチケットブラシや、ペットの毛専用のブラシを使うと、繊維の奥に入り込んだ毛もかき出すことができます。
- 空気清浄機の活用:空気中に舞う毛をキャッチしてくれるため、換毛期には24時間稼働させておくと床に落ちる毛の量を減らせます。
これって換毛期?注意すべき「病的な抜け毛」との見分け方

換毛期の抜け毛は全体的に均一に抜けますが、以下のような症状が見られる場合は病気の可能性があります。
こんな症状は病気のサインかも
- 体の一部分だけが円形などにハゲている(部分的な脱毛)
- 激しいかゆみを伴い、体を掻きむしったり舐め続けたりする
- 皮膚に赤み、湿疹、フケ、かさぶたなどが見られる
- 左右対称に毛が薄くなっている
これらの症状は、アレルギー性皮膚炎、細菌や真菌による感染症、ノミ・ダニの寄生、あるいはホルモン異常(クッシング症候群や甲状腺機能低下症など)が原因で起こることがあります。ただの換毛期だと自己判断せず、必ず動物病院を受診してください。
犬の換毛期に関するよくある質問(Q&A)

Q. 換毛期はどれくらいの期間続きますか?
A. 個体差や生活環境(室内飼育か室外飼育かなど)によって異なりますが、一般的には1ヶ月~2ヶ月ほど続くことが多いです。近年は室内で快適な温度で暮らす犬が増えたため、換毛期の時期がずれたり、一年中だらだらと抜け毛が続いたりするケースも見られます。
Q. ブラッシングを嫌がる子はどうすればいい?
A. まずは「ブラシは怖くない、気持ちいいものだ」と教えてあげることが大切です。最初はブラシを見せるだけ、匂いを嗅がせるだけから始め、慣れてきたら背中など嫌がりにくい場所を優しく撫でるようにブラッシングします。上手にできたらたくさん褒めておやつをあげるなど、ポジティブな経験と結びつけてあげましょう。無理強いはせず、短い時間から少しずつ慣らしていくことが成功の秘訣です。
Q. 換毛期に特に良いドッグフードはありますか?
A. 被毛の主成分はタンパク質ですので、良質なたんぱく質が主原料のフードが基本です。それに加え、皮膚の健康をサポートするオメガ3・オメガ6脂肪酸や、亜鉛、ビタミン類がバランス良く配合されている「皮膚・被毛ケア用」のフードを選ぶと良いでしょう。どのフードが愛犬に合うか分からない場合は、かかりつけの獣医師に相談してみることをお勧めします。
まとめ

愛犬の換毛期は、お手入れや掃除が大変な時期ですが、愛犬の健康維持とコミュニケーションを深める絶好の機会でもあります。ブラッシングやシャンプーを通して愛犬の体の変化にいち早く気づいてあげることもできます。
今回ご紹介した対策を参考に、愛犬とのスキンシップを楽しみながら、抜け毛の季節を上手に乗り越えましょう。