犬のワクチン接種はなぜ必要?種類やリスク、費用まで獣医師が解説

「なぜ、うちの犬にワクチンを打つ必要があるの?」「家の中だけで飼っているから大丈夫なのでは?」

犬のワクチン接種は、愛犬の健康を守る上で非常に重要ですが、その必要性について深く理解している飼い主さんは意外と少ないかもしれません。

この記事では、獣医師監修のもと、犬にワクチン接種が必要な理由、狂犬病と混合ワクチンの違い、そして接種前に知っておきたい注意点や費用まで、詳しく解説します。

 

この記事を読むことで、以下のことが分かります。

  • 犬のワクチン接種が必須である理由
  • 狂犬病ワクチンと混合ワクチンの違い
  • 混合ワクチンの種類と費用相場
  • ワクチン接種の注意点と副反応への備え

愛犬と人間が安全に、そして安心して暮らすために、ぜひ最後までお読みください。

 

犬にワクチン接種が必要な3つの理由

 

ワクチンは、愛犬を感染症の脅威から守るだけでなく、人間や社会全体を守るためにも重要です。主な理由は以下の3つです。

  1. 致死率の高い感染症から愛犬を守るため
    ワクチンで予防できる病気の中には、犬パルボウイルス感染症犬ジステンパーなど、発症すると命に関わる非常に危険なものが含まれます。特に免疫力がまだ弱い子犬にとっては、命を守るための必須の手段です。
  2. 人間にも感染する病気から家族を守るため
    犬の病気の中には、人獣共通感染症(ズーノーシス)と呼ばれる、人間にも感染するものがあります。代表的なのが「狂犬病」や「レプトスピラ症」です。ワクチンは、犬から人間への感染を防ぐ役割も果たします。
  3. ドッグランやペットホテルなどの施設利用のため
    多くのドッグランやペットホテル、トリミングサロンなどでは、他の犬との接触による感染を防ぐため、ワクチン接種証明書の提出が義務付けられています。愛犬が社会と安全に関わるために、ワクチン接種は必須です。

 

ワクチンの種類と特徴

 

犬のワクチンは、法律で接種が義務付けられている「狂犬病ワクチン」と、任意で接種する「混合ワクチン」の2つに大きく分けられます。

1. 狂犬病ワクチン:法律で義務付けられたワクチン

狂犬病は、発症すると人間を含めすべての哺乳類がほぼ100%死に至る、恐ろしい感染症です。日本では1957年以降、国内での発生はありませんが、これは「狂犬病予防法」に基づき、すべての飼い犬に年1回の接種が義務付けられているおかげです。

海外では今も多くの国で感染が発生しているため、日本に再びウイルスが持ち込まれるリスクはゼロではありません。大切な命と、日本の安全を守るために、必ず毎年接種しましょう。

 

2. 混合ワクチン:愛犬の生活環境に合わせて選ぶ

混合ワクチンは、複数の感染症を一度に予防できるワクチンです。含まれる病原体の種類によって、5種混合、8種混合などと呼ばれます。これらはさらに、「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」に分けられます。

コアワクチン(すべての犬に推奨)

生活環境にかかわらず、すべての犬に接種が推奨されるワクチンです。致死率が高く、感染力が強い病気を予防します。

  • 犬ジステンパー
  • 犬伝染性肝炎
  • 犬アデノウイルス(2型)感染症
  • 犬パルボウイルス感染症

これらの病気を予防するワクチンは、混合ワクチンの種類によらず、必ず含まれています。

 

ノンコアワクチン(必要に応じて接種)

生活環境や地域での流行状況に応じて、接種を検討するワクチンです。

  • 犬パラインフルエンザウイルス:感染すると「ケンネルコフ(犬の風邪)」の原因になります。
  • 犬コロナウイルス:子犬に激しい下痢を引き起こすことがあります。
  • 犬レプトスピラ症:人にも感染する人獣共通感染症です。河川や水たまり、野山での活動が多い犬に特に推奨されます。

 

ワクチン接種の費用と注意点

 

ワクチン接種にかかる費用

ワクチン接種の費用は、動物病院やワクチンの種類によって異なります。おおよその相場は以下の通りです。

  • 狂犬病ワクチン:約3,000円〜4,000円(自治体への登録・注射済票交付手数料が別途かかります)
  • 混合ワクチン:約5,000円〜10,000円(予防できる病気の数によって費用は変動します)

これらの費用は保険適用外となります。

 

ワクチン接種時の注意点

ワクチン接種後には、ごくまれに副反応が出ることがあります。安全に接種を済ませるために、以下の点に注意しましょう。

  • 体調の良い日に接種する:少しでも体調に異変がある場合は、接種を延期しましょう。
  • 接種当日は安静に過ごす:激しい運動やシャンプーは控え、安静に過ごさせましょう。
  • 接種後30分は様子を観察する:アナフィラキシーショック(重篤なアレルギー反応)は、接種後すぐに起こることが多いです。接種後30分程度は、すぐに動物病院に戻れるよう、注意深く様子を見てあげましょう。

 

よくある質問(FAQ)

 

Q1:家から出さない犬にもワクチンは必要ですか?

A:はい、必要です。ウイルスや菌は、人間の衣服や靴の裏に付着して家の中に持ち込まれる可能性があります。家の中だけで飼っている場合でも、感染リスクはゼロではありません。

 

Q2:狂犬病ワクチンと混合ワクチンは同時に接種できますか?

A:いいえ、できません。法律上、狂犬病ワクチンと混合ワクチンの同時接種は禁止されています。通常、両方のワクチンを接種する場合は、1週間以上の間隔を空けて接種します。

 

Q3:ワクチン接種を忘れてしまった場合はどうすればいいですか?

A:気づいた時点で、できるだけ早く動物病院を受診し、獣医師に相談してください。特に狂犬病ワクチンは法律上の義務ですので、速やかな接種が必要です。

 

【まとめ】

ワクチンを接種することで、愛犬をさまざまな感染症から守ることができます。また、犬だけではなく、私たち飼い主を人畜共通感染症から守るためでもあります。
犬と人間が安全に暮らすためにもワクチンは必要なのです。
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