犬が水を飲まないのはなぜ?考えられる原因から自宅でできる対策、病院受診の目安まで徹底解説

「うちの子、あまり水を飲まないけど大丈夫かな?」「水を飲んでくれないと、病気にならないか心配…」

愛犬が水を飲まないと、飼い主さんは不安になりますよね。犬にとって水は、健康を維持するために欠かせないものです。水分不足は体調不良を引き起こすだけでなく、さまざまな病気の原因になることもあります。

犬が水を飲まないのには、さまざまな理由が考えられます。単に好みの問題であることもあれば、ストレスや病気が隠れている可能性もあります。

この記事では、犬が水を飲まない時に考えられる原因、脱水症状の具体的なサイン、そして愛犬に安全に水を飲んでもらうための効果的な工夫、さらに動物病院を受診すべき目安について、獣医領域の専門家が詳しく解説します。愛犬の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。

 

この記事を読むとわかること

  • 犬が水を飲まない時に考えられる主な原因
  • 愛犬の脱水症状を見極めるための具体的なサイン
  • 自宅で実践できる、愛犬に水を飲んでもらうための効果的な工夫
  • すぐに動物病院を受診すべき緊急性の高い症状

 

犬が水を飲まない原因は?考えられる理由と健康への影響

 

愛犬が水を飲まない原因は一つではありません。環境、習慣、心理状態、そして病気など、さまざまな要因が考えられます。

 

水を飲まない主な原因

  1. 好みの問題・環境の変化:
    • 水の種類: 塩素の匂いを嫌がる、水道水の味が好みでないなど、水の種類にこだわりがある場合があります。
    • 水の温度: 冷たすぎる水や、生ぬるい水を嫌がることがあります。一般的に、犬は少し冷たい水を好む傾向があります。
    • 器の素材や形: プラスチック、ステンレス、陶器など、器の素材や深さ、大きさによって口当たりや匂いが異なり、好みが分かれることがあります。ヒゲが当たるのを嫌がる犬もいます。
    • 水飲み場の位置: 落ち着かない場所、人通りの多い場所、騒がしい場所では安心して水を飲めないことがあります。トイレの近くや食事のすぐそばに水があるのを嫌がる子もいます。
    • 水の鮮度・清潔さ: 古い水や、器が汚れている水は雑菌が繁殖しやすいため、飲まなくなることがあります。
    • 季節の変化: 気温が低い冬場は、夏場に比べて活動量が減り、自然と水分摂取量も少なくなることがあります。
  2. 食事が関係している場合:
    • ウェットフード中心の食事: ドライフードに比べてウェットフードは水分含有量が多いため、食料からの水分摂取で十分と判断し、別途水を飲む量が減ることがあります。
    • 食事後の満足感: 食事の直後は満腹感があり、水を飲む量が少なくなることがあります。
  3. ストレスや心理的な要因:
    • 環境の変化: 引越し、来客、家族構成の変化(新しいペットや赤ちゃんが来たなど)は、犬にとって大きなストレスとなり、食欲不振や飲水量の減少につながることがあります。
    • 分離不安: 飼い主さんがいない時に水を飲まない、といった分離不安の症状として現れることもあります。
    • 過去の嫌な経験: 水を飲んでいる最中に驚かされた、痛みを感じたなどの経験があると、水を飲むことに抵抗を感じることがあります。
  4. 体調不良や病気:犬が水を飲まない最も注意すべき原因です。脱水症状の兆候や、他に気になる症状がある場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
    • 口内の痛み: 歯周病、口内炎、歯の破折など、口の中に痛みがあると水を飲むのをためらうことがあります。
    • 消化器系の問題: 胃腸炎、嘔吐、下痢などで体調が優れないと、食欲や飲水欲が低下することがあります。
    • 腎臓病、糖尿病: これらの病気は、通常は多飲多尿(水をたくさん飲み、おしっこもたくさん出る)になることが多いですが、病状が進行したり、脱水が進んだりすると、かえって水を飲まなくなることもあります。
    • 発熱: 体調が悪く、発熱していると元気や食欲が低下し、水を飲まなくなることがあります。
    • その他: 関節炎などで水を飲む姿勢が辛い、癌などの重篤な病気が原因で水を飲まなくなることもあります。

 

犬の体と水分摂取の重要性

犬の体の約60~70%は水分でできています。この水分は、体温調節、栄養素の運搬、老廃物の排出、関節の潤滑など、生命維持に不可欠な役割を担っています。犬は体内の水分が体重の5%失われると軽度の脱水症状になり、10%失われると重度の脱水症状で命に関わる危険性が出てきます。水を飲まない状態が続くと、重篤な健康問題に発展する可能性があるため、注意が必要です。

 

水を飲まないのは危険信号?脱水症状のサインと受診の目安

 

愛犬が水を飲まない状態が続くと、脱水症状に陥る危険性があります。脱水症状のサインを知り、早期に発見することが非常に重要です。

 

脱水症状の具体的なサイン

以下のサインが見られたら、愛犬が水分不足の状態にある可能性が高いです。

  1. 皮膚の弾力性低下(スキンテスト):首の後ろや肩甲骨の間の皮膚を軽くつまんで持ち上げ、離してみてください。正常な状態であればすぐに元の位置に戻りますが、脱水している場合は元の位置に戻るまでに時間がかかります(5秒以上かかるようだと要注意)。皮膚が硬く、しわが寄ったままになることもあります。
  2. 鼻や舌、歯茎の乾燥:通常、犬の鼻は少し湿っていますが、脱水すると鼻が乾燥してカサカサになります。また、舌や歯茎も乾いてべたつくようになります。歯茎を指で押してみて、白くなった部分がなかなか元のピンク色に戻らない場合も脱水のサインです。
  3. 尿の回数・量の減少、色の変化:脱水すると、体内の水分を温存しようとするため、尿の回数や量が減ります。また、尿の色がいつもより濃い黄色やオレンジ色になることもあります。
  4. 便の硬さ:水分が不足すると、便から水分が吸収されすぎて便が硬くなり、コロコロとしたり、排便時に苦しそうにしたりすることがあります。
  5. 目の状態の変化:目が窪んで見える、目やにが増える、涙が出にくくなるなどの症状が見られることがあります。
  6. 元気や食欲の低下:脱水が進行すると、元気がない、ぐったりしている、食欲がない、といった全身症状が現れます。散歩を嫌がる、遊びたがらないなどの行動変化もサインです。
  7. 嘔吐・下痢:これらの症状がある場合は、体内の水分が大量に失われている可能性があるため、特に注意が必要です。

 

動物病院を受診する目安

愛犬が水を飲んでくれない場合でも、他に元気があり、食欲も普段通りで行動にも変化がないようであれば、2〜3日くらい様子を見ても良いかもしれません。しかし、上記のような脱水症状のサインが見られる場合は、水分不足の状態に陥っている可能性が高いため、早めに動物病院を受診することをおすすめします。特に、嘔吐や下痢を伴う場合、ぐったりしている場合、呼びかけに反応しないなど、重篤なサインが見られる場合は、迷わずすぐに動物病院へ連れて行きましょう。

獣医師は、脱水の程度を正確に評価し、原因となっている病気を特定するための検査を行います。必要に応じて点滴による水分補給や、原因疾患の治療を行います。

 

愛犬に水を飲んでもらうための工夫【自宅でできる対策】

 

愛犬が水を飲まない原因が病気でない場合、飼い主さんのちょっとした工夫で水分摂取量を増やすことができます。すぐに実践できることも多いので、ぜひ試してみてください。

 

1. 飲み水や水飲み場を見直す

愛犬が水を飲まないのは、水そのものや水飲み場に不満があるのかもしれません。

  • 水の鮮度・清潔さ:水を清潔に保つことが最も重要です。毎日複数回、新鮮な水に交換し、器もこまめに洗いましょう。特に夏場は雑菌が繁殖しやすいため、より頻繁な交換・洗浄が必要です。
  • 水の温度:犬は少し冷たい水を好む傾向があります。夏場は水の器に氷を浮かべると、興味を持って飲んでくれることがあります。氷自体を「おやつ」のように与えるのも有効です。
  • 水の種類:水道水を嫌がる場合は、浄水器を通した水やミネラルウォーター(犬に安全なもの)を試してみましょう。ただし、硬度の高いミネラルウォーターは結石の原因となる可能性があるため、軟水を選ぶようにしてください。
  • 器の素材や形:プラスチック、ステンレス、陶器、ガラスなど、様々な素材の器を試して、愛犬の好みに合うものを見つけてあげましょう。ヒゲが当たるのを嫌がる犬には、口が広く浅い器がおすすめです。自動給水器も、常に新鮮な水が供給され、流れがあるため興味を示す犬もいます。
  • 水飲み場の増設:愛犬が普段過ごす部屋や、食事をする場所、寝床の近くなど、複数の場所に水飲み場を設置しましょう。落ち着いてゆっくりできるような静かな場所にも置いてみてください。特に多頭飼いの場合は、それぞれが安心して飲める場所を確保することが大切です。

 

2. 食事で水分摂取量を増やす

直接水を飲まなくても、食事から水分を補給する方法も有効です。

  • ウェットフードへの切り替え・併用:ドライフードからウェットフードに切り替える、またはドライフードとウェットフードを併用することで、食事からの水分摂取量を大幅に増やすことができます。
  • ドライフードをふやかす:ドライフードを与えている場合でも、ぬるま湯や犬用のミルク、鶏肉などを茹でたスープ(塩分無添加)でふやかして与えると、水分摂取量を増やせます。香りが立つことで食欲増進にも繋がることがあります。
  • 手作りスープやおやつ:水分を多く含む野菜スープ(味付けなし)、犬用のゼリー、果物(水分が多く、犬に安全なもの)などを少量与えるのも良いでしょう。

 

3. ストレスの少ない環境にする

ストレスが原因で水を飲まない場合は、そのストレスのもとを解消してあげることが重要です。

  • 安心できる場所の確保:愛犬が落ち着いて過ごせる安全な場所(クレートやハウスなど)を用意し、そこで水が飲めるようにしてあげましょう。
  • 生活リズムの安定:食事や散歩、睡眠の時間をできるだけ一定にし、生活リズムを安定させることで、ストレスを軽減できます。
  • 適度な運動と遊び:適度な運動や遊びはストレス解消になり、喉の渇きを促す効果も期待できます。
  • 環境の変化に配慮:引越しや模様替えなど、大きな環境の変化があった場合は、愛犬が新しい環境に慣れるまで、より注意深く見守り、安心できる時間を作ってあげましょう。

 

よくある質問(Q&A)

 

Q1: 犬が水を飲まない時に、無理やり飲ませてもいいですか?

A1: 無理やり飲ませるのは、愛犬に精神的なストレスを与えたり、誤嚥(ごえん)のリスクを高めたりする可能性があるため、おすすめできません。まずは、飲み水の種類や器、水飲み場を変える、フードに水分を混ぜるなど、愛犬が自ら進んで飲めるような工夫を試みましょう。どうしても飲んでくれない場合は、脱水のサインがないか確認し、獣医師に相談してください。

 

Q2: 冷たい水の方が犬は好むと聞きましたが、どのくらいの温度が適切ですか?

A2: 一般的に、犬は人間が「少し冷たい」と感じる程度の水を好む傾向があります。冷たすぎるとお腹を壊す可能性もあるため、夏場は器に氷を1〜2個浮かべる程度が目安です。冬場は、常温の水で十分ですが、あまりにも冷え込む場合は、少しだけぬるま湯を混ぜてあげるのも良いでしょう。

 

Q3: 犬が飲む水の量に目安はありますか?

A3: 一般的に、犬が1日に必要とする水分量は、体重1kgあたり約40〜60mlが目安とされています。ただし、活動量、気温、湿度、食事内容(ドライフードかウェットフードか)、年齢、健康状態によって大きく異なります。例えば、運動量の多い犬や夏場はより多くの水分が必要です。この目安はあくまで参考として、愛犬の様子をよく観察し、適切な量を摂取できているかを確認することが大切です。

 

Q4: 水を飲まない犬に、犬用のスポーツドリンクを与えてもいいですか?

A4: 犬用のスポーツドリンクは、脱水時や運動後の水分・電解質補給に役立つ場合があります。ただし、与えすぎは糖分や塩分の過剰摂取につながる可能性もあるため、獣医師に相談してから、適切な量を与えるようにしましょう。人間のスポーツドリンクは、犬には糖分や添加物が多すぎるため与えないでください。

 

Q5: ストレスで水を飲まない場合、どうすればいいですか?

A5: ストレスの原因を特定し、それを取り除くことが第一です。

  1. 安心できる環境: 愛犬が落ち着ける安全な場所を提供しましょう。
  2. ルーティンの確立: 規則正しい生活リズムを保ち、安心感を与えます。
  3. 適度な運動と遊び: ストレス解消と喉の渇きを促します。
  4. 優しく接する: 愛犬が不安を感じている場合は、優しく声をかけたり、撫でたりして安心させてあげましょう。
  5. フェロモン製剤: 獣医師と相談の上、犬用フェロモン製剤の使用も検討できます。

改善しない場合は、獣医行動学の専門家に相談することも有効です。

 

まとめ

 

愛犬が水を飲まないのは、単なる好みの問題から、ストレス、そして病気まで、様々な原因が考えられます。水分は犬の健康維持に欠かせないため、飲水量の減少は放置せずに対応することが大切です。

まずは、清潔で新鮮な水を常に用意し、水飲み場や器を見直すなど、自宅でできる工夫を試してみましょう。食事内容を工夫して、フードから水分を摂取させるのも効果的です。

そして何よりも重要なのは、愛犬の脱水症状のサインを見逃さないことです。皮膚の弾力性、歯茎や鼻の湿り気、尿の状態などを日頃からチェックし、異変を感じたら迷わず動物病院を受診してください。早期の対応が、愛犬の健康と命を守ることに繋がります。

愛犬が快適に、そして健康に過ごせるよう、飼い主としてできることを一緒に実践していきましょう。

 

 

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