「うちの子はまだまだ元気!」そう思っていても、犬の時間は人間の何倍もの速さで進んでいきます。見た目には変わらず元気に走り回っていても、体の中では少しずつ老化が進行しているかもしれません。愛犬の小さな変化にいち早く気づき、適切に対応してあげることが、快適なシニアライフを送るための鍵となります。
この記事では、獣医師が教える愛犬の老化サインについて詳しく解説します。
この記事を読めば、以下のことがわかります。
- 犬がシニア期に入る年齢の目安
- 愛犬の老化で見られる具体的な7つのサイン
- サインから考えられる病気の可能性
- 飼い主さんができる具体的な対策と注意点
- 獣医師に相談すべきタイミング
犬の老化はいつから?年齢の目安と人間の年齢換算
犬が「シニア」と呼ばれる年齢は、犬種や体の大きさによって異なります。一般的に、小型犬や中型犬は7歳頃、大型犬は5~6歳頃から老化が始まるとされています。
この年齢を人間の年齢に換算すると、小型犬・中型犬の7歳は人間でいう40代後半から50代前半、大型犬の5〜6歳は人間でいう40代半ばにあたります。まだ「高齢」というには早すぎるように感じますが、この頃から体に少しずつ変化が現れ始めます。日頃から愛犬をよく観察し、早めに変化に気づいてあげることが大切です。
見逃さないで!シニア犬の老化で見られる7つのサイン
愛犬の老化は、日常生活のさまざまな場面でサインとして現れます。ここでは、特に見逃してはいけない7つのサインと、その背後に隠れている可能性のある病気について解説します。
1. 運動能力の変化:歩きたがらない、ふらつく
散歩中に立ち止まることが増えたり、お気に入りの場所への上り下りをためらうようになったりしたら、それは老化のサインかもしれません。筋力が低下して歩くのがつらくなっている可能性があります。特に、後ろ脚が小刻みに震えている場合は、体を支えるのが困難になっている兆候です。
また、関節炎や股関節形成不全などの関節疾患が隠れていることもあります。痛みを感じている可能性もあるため、無理に散歩を続けさせず、獣医師に相談しましょう。
2. 睡眠時間の増加:昼夜逆転、徘徊
愛犬の1日の睡眠時間は元々長いですが、加齢とともにさらに増える傾向があります。しかし、ただ眠る時間が増えるだけでなく、昼間は寝ているのに夜中に急に起きて徘徊したり、意味もなく吠え続けたりする場合は注意が必要です。これは認知機能不全症候群(いわゆる犬の認知症)のサインかもしれません。
認知症は早期に発見し、適切なケアをすることで進行を遅らせることが期待できます。気になる行動が見られたら、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
3. 食欲の変化:食べる量が減る、好き嫌いが増える
老化に伴い、犬も食欲が落ちることがあります。主な原因は以下の通りです。
- 基礎代謝の低下:エネルギー消費量が減り、必要な食事量も減ります。
- 運動量の減少:体を動かさなくなることで、空腹を感じにくくなります。
- 嗅覚や味覚の衰え:匂いが感じにくくなり、ご飯に興味を示さなくなることがあります。
- 口腔内の問題:口内炎や歯周病、歯の欠損などで痛みを感じ、硬いものが食べられなくなることもあります。
単なる老化だけでなく、慢性腎臓病や消化器疾患などの病気が原因で食欲不振になっている可能性も考えられます。食欲がない状態が続く場合は、すぐに動物病院を受診してください。
4. 見た目の変化:被毛や目の異常
被毛にツヤがなくなりパサつく、皮膚に張りがなくなる、白い毛が混じるといった外見の変化は老化のサインです。特に、以下のような変化には注意が必要です。
- 目が白く濁る:白内障のサインかもしれません。進行すると視力を失い、家具にぶつかったり、物に怯えたりするようになります。
- 皮膚のイボやしこり:良性の脂肪腫やイボが多いですが、悪性の腫瘍の可能性もゼロではありません。見つけたら早めに獣医師に診てもらいましょう。
5. 排泄の変化:トイレの失敗、回数の変化
今まで失敗しなかったトイレを急に失敗するようになったり、トイレの回数や量が増えたりするのも老化のサインです。筋力の低下で排泄姿勢を維持しにくくなっている可能性があります。
また、水を飲む量が増え、尿の量も増えている場合は、腎臓病や糖尿病などの重大な病気の初期症状であることもあります。早めに健康診断を受けさせましょう。
6. 呼吸の変化:咳、息切れ
少し動いただけで息切れをする、散歩中に咳き込む、呼吸が荒い、舌の色が紫色になる(チアノーゼ)といった症状は、心臓病や呼吸器疾患のサインである可能性が高いです。特に、小型犬は心臓病になりやすい傾向があります。これらの症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診してください。
7. 行動の変化:頑固になる、無関心になる
老化が進むと、新しいことを覚えにくくなったり、今までできた指示に従わなくなったりすることがあります。また、大好きだった遊びやおもちゃに興味を示さなくなる、飼い主さんが帰ってきても喜ばないなど、感情表現が乏しくなることもあります。これらの行動変化は、単なる老化だけでなく、認知機能不全症候群の初期症状である可能性があります。
愛犬の老化サインに気づいたら:飼い主ができる対策
愛犬の老化サインに気づいたら、慌てずに適切な対策をとりましょう。
- かかりつけの獣医師に相談する:老化のサインの多くは、病気のサインと見分けがつきにくいものです。まずは獣医師に相談し、適切な診断とアドバイスを仰ぎましょう。
- 生活環境を見直す:滑りやすい床にカーペットを敷く、段差をなくす、冷暖房で室温を一定に保つなど、愛犬が安全で快適に過ごせる環境を整えましょう。
- 食事の工夫:食欲がない場合は、温めたりウェットフードを混ぜたりして食欲を刺激しましょう。また、シニア犬用の栄養バランスを考えたフードに切り替えることも大切です。
- 無理のない範囲で運動を続ける:短時間でも毎日散歩に連れて行くことで、筋力の維持や気分転換につながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. シニア犬が夜中に吠えるのはどうして?
夜中に吠えたり、意味もなく徘徊したりする行動は、認知機能不全症候群(犬の認知症)のサインである可能性があります。昼夜の区別がつかなくなったり、不安を感じたりして起こることが多いです。獣医師に相談し、投薬やサプリメントで症状が改善することもあります。
Q2. シニア犬のイボやしこりは大丈夫?
加齢とともにイボやしこり(腫瘍)はできやすくなります。良性の脂肪腫やイボであることが多いですが、中には悪性のがんの可能性も否定できません。大きさや形が急に変わったり、出血したりする場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
Q3. シニア犬の歯磨きは必要ですか?
はい、必要です。高齢になると歯周病のリスクが高まります。歯周病は、歯が抜けるだけでなく、細菌が全身に回り心臓や腎臓などの病気を引き起こすこともあります。毎日少しずつでも良いので、歯磨きやデンタルケアを続けましょう。
Q4. シニア犬の健康診断はどのくらいの頻度で受けるべきですか?
健康診断は、病気の早期発見のために非常に重要です。7歳を過ぎたら、年に1~2回は健康診断を受けることを強くお勧めします。血液検査やレントゲン、尿検査などを定期的に行うことで、見た目にはわからない体の異常を見つけることができます。
まとめ
愛犬の老化は、飼い主さんにとっても戸惑うことの多い変化です。しかし、日頃から愛犬の様子をよく観察し、小さな変化にいち早く気づいてあげることが、愛犬の健康を守る第一歩となります。
この記事で紹介したサインを参考に、もし気になることがあれば、決して自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談してください。愛犬のペースに寄り添い、適切なケアをすることで、愛犬との大切な時間をより長く、幸せに過ごすことができます。