【獣医監修】犬のアトピー性皮膚炎の症状・原因・治療法|自宅ケアの注意点

愛犬が頻繁に体をかゆがったり、舐めたり、噛んだりしていませんか? 特に梅雨から夏にかけて、気温と湿度が高くなると、カビやダニが発生しやすくなり、皮膚トラブルを抱える犬が増えます。

犬のかゆみの原因はさまざまですが、その一つに「アトピー性皮膚炎」があります。この記事では、獣医師の視点から、犬のアトピー性皮膚炎について詳しく解説します。

 

この記事を読めば、以下のことがわかります。

  • 犬のアトピー性皮膚炎の主な原因と症状
  • 症状が出やすい体の部位と好発犬種
  • 病院で行われる診断方法と治療法
  • 自宅でできるスキンケアと環境対策
  • 獣医師に相談すべきタイミング

愛犬のかゆみを和らげ、快適な生活を送るために、アトピー性皮膚炎の正しい知識を身につけましょう。

 

犬のアトピー性皮膚炎とは?原因と発症しやすい犬

 

犬のアトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因で皮膚のバリア機能が低く、環境中のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に過剰に反応してしまう皮膚病です。人間のアトピー性皮膚炎と似たような病気だと考えると分かりやすいでしょう。

 

アトピー性皮膚炎の原因となるアレルゲン

犬のアトピー性皮膚炎を引き起こす主なアレルゲンは、私たちの身の回りに常に存在しています。

  • ハウスダストマイト(ダニ):高温多湿の環境で増えやすく、梅雨から夏にかけて症状が悪化する原因になります。
  • 花粉:特定の季節に症状が悪化する場合は、花粉が原因である可能性があります。
  • カビ:湿気の多い場所に生えるカビの胞子がアレルゲンとなることがあります。
  • 人のフケや細菌:身近な存在もアレルゲンとなり得ます。

これらのアレルゲンが、皮膚から侵入したり、吸い込んだりすることで、免疫が過剰に働き、皮膚に炎症や激しいかゆみを引き起こします。

 

アトピー性皮膚炎になりやすい犬種

アトピー性皮膚炎は、特定の犬種で多く見られる傾向があります。一般的に、小型犬では柴犬、大型犬ではゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーが好発犬種とされています。

  • 柴犬
  • 秋田犬
  • シーズー
  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • フレンチブルドッグ
  • ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー

生後6ヶ月〜3歳頃に発症することが多いですが、生涯にわたって症状が出ることもあります。

 

犬のアトピー性皮膚炎の主な症状

 

犬のアトピー性皮膚炎の主な症状は、しつこいかゆみです。かゆみがひどくなると、患部を舐めたり噛んだりすることで、さらに状態が悪化してしまいます。

 

1. 激しいかゆみと二次的な症状

激しいかゆみによって、以下のような行動や症状が見られます。

  • 体を舐める、噛む、引っかく
  • 頭を振る、体を壁などにこすりつける
  • 皮膚の赤み、発疹
  • 色素沈着:皮膚が慢性的に炎症を起こすことで、黒っぽく変色します。
  • 脱毛・出血:過度な掻き壊しで毛が抜けたり、出血したりします。
  • 皮膚の肥厚:皮膚が分厚く、ゾウの皮膚のように硬くなります。
  • 悪臭:皮膚の常在菌であるブドウ球菌やマラセチア菌が増殖し、独特の臭いを放つことがあります。

 

2. 症状が出やすい体の部位

アトピー性皮膚炎は、特に以下のような、アレルゲンが接触しやすい場所や擦れやすい場所に症状が出やすい傾向があります。

  • 顔周り:目の周り、口の周り、あご
  • :外耳炎(耳をかゆがって頭を振る)
  • 手足:わきの下、後脚の付け根(鼠蹊部)、肘の内側、足先、肉球の間
  • お腹、胸

これらの症状は、他の皮膚病や食物アレルギーと似ているため、自己判断は禁物です。正確な診断のためには、獣医師の診察が不可欠です。

 

犬のアトピー性皮膚炎の診断と治療法

 

アトピー性皮膚炎は「〜かもしれない」という段階では診断できません。他の病気を排除していくことで、最終的に診断が確定します。

 

1. 診断の流れ

動物病院では、まず問診や視診、皮膚検査を行い、ノミやダニなどの外部寄生虫、細菌・真菌感染、食物アレルギーなど、他の病気の可能性を一つずつ否定していきます。その上で、血液検査や皮膚スクラッチテストなどのアレルギー検査を行うこともあります。

これらの検査結果と症状の経過を総合的に判断して、最終的にアトピー性皮膚炎と診断されます。

 

2. 主な治療法:かゆみをコントロールする

アトピー性皮膚炎は、遺伝や体質によるところが大きく、残念ながら完治は難しいといわれています。しかし、薬やスキンケアを組み合わせることで、かゆみをコントロールし、症状を緩和させることができます。

  • 内服薬:かゆみや炎症を抑える飲み薬(ステロイド、アポキル、サイトポイントなど)を、症状に合わせて使用します。
  • 外用薬:部分的な炎症を抑える塗り薬やスプレー剤などを使用します。
  • 薬用シャンプー:皮膚の清潔を保ち、保湿や殺菌・抗菌効果のあるシャンプーで定期的に洗います。
  • サプリメント:皮膚のバリア機能をサポートするサプリメント(オメガ3脂肪酸など)を使用することもあります。

大切なのは、獣医師の指示に従い、自己判断で治療を中断しないことです。症状が落ち着いたからといってすぐに薬をやめてしまうと、すぐに再発してしまいます。

 

自宅でできるスキンケアと環境対策

 

病院での治療と並行して、日々の自宅ケアも非常に重要です。以下の対策を実践して、アレルゲンを減らし、皮膚を清潔に保ちましょう。

  • 定期的なシャンプー:獣医師に相談して、保湿成分や抗菌成分の入った薬用シャンプーを使いましょう。シャンプー後はしっかりと乾かすことも大切です。
  • 環境中のアレルゲンを減らす:部屋の掃除をこまめに行い、特に犬が過ごす場所(ベッド、ソファ、カーペットなど)を清潔に保ちましょう。空気清浄機や除湿器も有効です。
  • ブラッシング:毎日ブラッシングを行い、体に付着した花粉やハウスダストを落としましょう。
  • 食事の工夫:皮膚の健康をサポートする成分(オメガ3脂肪酸、亜鉛など)が含まれたフードやサプリメントを検討しましょう。

 

よくある質問(FAQ)

 

Q1. 犬のアトピー性皮膚炎は食物アレルギーとどう違いますか?

両者はどちらもアレルギー性皮膚炎ですが、原因が異なります。アトピー性皮膚炎はハウスダストや花粉などの環境中のアレルゲンが原因で、食物アレルギーは特定の食べ物が原因です。食物アレルギーでは、皮膚症状に加えて下痢や嘔吐などの消化器症状が見られることが多いです。

 

Q2. アトピー性皮膚炎は治りますか?

残念ながら、アトピー性皮膚炎は体質的な病気であるため、完治は難しいといわれています。しかし、適切な治療と日々のケアで症状をコントロールし、かゆみと上手に付き合っていくことは可能です。症状を放置すると慢性化し、皮膚が硬くなったり色素沈着がひどくなったりするため、早期の治療が大切です。

 

Q3. 治療にはどのくらい費用がかかりますか?

治療費用は、病状や治療法(内服薬、注射、シャンプーなど)、犬の体重によって大きく異なります。アトピーは長期的な治療が必要になることが多いため、費用もかさむ傾向にあります。動物病院で事前に治療計画と費用の概算について相談することをおすすめします。

 

Q4. 季節によって症状がひどくなるのはなぜですか?

アトピー性皮膚炎は、高温多湿の環境で繁殖しやすいハウスダストマイト(ダニ)や、特定の季節に飛散する花粉が原因であることが多いため、季節によって症状が変動することがよくあります。梅雨から夏にかけては、特にダニの繁殖が活発になるため、症状が悪化しやすい傾向にあります。

 

まとめ

 

犬のアトピー性皮膚炎は、愛犬に辛いかゆみをもたらし、生活の質を低下させてしまう可能性があります。もし愛犬が激しいかゆみを伴う皮膚トラブルを抱えている場合は、自己判断せず、早めに動物病院を受診しましょう。

適切な治療と毎日の地道なケアを続けることで、アトピー性皮膚炎の症状を管理し、愛犬はかゆみから解放されて快適な生活を送ることができます。愛犬と飼い主さんが、この病気と上手に付き合っていくことが何よりも大切です。

 

 

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