犬のマウンティングはやめさせるべき?理由と正しい直し方を獣医師視点で解説

「ドッグランで他の犬に腰を振ってしまい、相手の飼い主さんに平謝りした」
「来客の足にしがみついて離れない」

愛犬のマウンティング行動に、恥ずかしさや戸惑いを感じている飼い主さんは少なくありません。
かつては「上下関係(主従関係)を誇示する支配行動」と言われることが一般的でしたが、近年の動物行動学では、その多くが「強い興奮や不安」からくるものだと分かってきました。

この記事では、マウンティングの真実と、愛犬の心に寄り添った正しい対処法を詳しく解説します。

 

【この記事でわかること】

  • マウンティングが起こる「支配欲以外」の本当の理由
  • 無視していい場合と、すぐに止めるべき場合の判断基準
  • 病気が隠れているときに見られる「体のサイン」
  • 大声で叱らずに、スマートにマウンティングを卒業させる手順

 

1. なぜ犬はマウンティングをするのか?主な4つの原因

 

マウンティングは、性別や去勢・避妊の有無に関わらず見られる行動です。
まずは、愛犬がなぜその行動をとってしまうのか、背景にある理由を探ってみましょう。

 

① 興奮・ストレスによる「転位行動」

もっとも多いのが、感情の処理が追いつかなくなったときに見られる「転位行動(てんいこうどう)」です。人間が緊張したときに貧乏ゆすりをしたり、頭をかいたりするのと似ています。

 

  • 来客がうれしくて興奮がピークに達した
  • ドッグランで他の犬と遊びたいけれど、少し怖い(葛藤がある)
  • 叱られた直後、モヤモヤした気持ちをぶつけたい

 

このように、心の中の「はけ口」としてマウンティングが選ばれることがあります。

 

② 遊びの延長としての「学習行動」

子犬期に偶然マウンティングをした際、相手の犬が反応してくれたり、飼い主さんが「コラコラ!」と(犬にとっては遊んでくれているように)反応したりすると、「これをすれば構ってもらえる」「遊びの合図だ」と学習してしまうことがあります。

 

③ 性的衝動(ホルモンの影響)

未去勢・未避妊の場合、性ホルモンの影響で行動が出ることがあります。
ただし、去勢・避妊手術をすれば必ずしも無くなるわけではありません。すでに習慣化している場合は、手術後も「癖」として残ることが多いです。

 

④ 社会的優位性の誇示(支配行動)

もちろん、相手に対して「自分のほうが上だ」と示そうとするケースもゼロではありません。
しかし、家庭犬で見られるマウンティングの多くは、前述した「興奮」や「不安」が主因であると考えられています。

 

2. 要注意!病気が隠れているケース

 

マウンティングが急に増えた場合や、特定の場所にしつこく行う場合は、身体的な不調や痛みが原因かもしれません。以下のような様子がないかチェックしてください。

 

  • 生殖器周辺のトラブル: 包皮炎や尿路感染症によるムズムズ感。
  • 皮膚の痒み: アレルギーや寄生虫による、腰や腹部の不快感。
  • 肛門嚢(こうもんのう)の詰まり: お尻周りの違和感を紛らわせるため。
  • 関節の痛み: 痛みによるストレスから、気を紛らわせようとしている。

 

もし「しきりに生殖器を舐める」「お尻を地面に擦りつける」といった動作を伴う場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

 

3. やめさせるべき?状況別の判断基準

 

すべてのマウンティングを厳しく禁止する必要はありません。状況に応じて、適切に介入しましょう。

 

対象判断理由と対処
自分のぬいぐるみ見守り可短時間で落ち着くなら問題なし。あまりにしつこい場合は、片付けて別の遊びに誘う。
他の家の犬即中止喧嘩や咬傷事故の最大の原因になります。相手の犬が嫌がっていなくても、すぐに止めましょう。
人(家族・来客)即中止エスカレートすると、要求が通らないときに噛むなど、問題行動の悪化につながります。
何もない空間で頻繁に繰り返す受診検討強い不安や身体的な不調が隠れている可能性もあるため、動物病院への相談を検討してください。

 

4. 叱らずに改善!正しい対処法3ステップ

 

「ダメ!」と大声で怒鳴るのは逆効果です。犬はさらに興奮してしまったり、「飼い主さんが大きな声を出して盛り上がっている」と勘違いしたりします。「マウンティング以外の行動」を教えるのが近道です。

 

ステップ1:前兆(予兆)で見守りを強化する

犬がマウンティングを始める前には、必ずサインがあります。

  • 相手の肩や背中にあごを乗せる
  • 前足で相手にしがみつこうとする
  • 視線が1点に固定され、鼻息が荒くなる

この「腰を振る直前」のタイミングで声をかけるのが最も効果的です。

 

ステップ2:別の指示を出して「上書き」する

マウンティングをしようとした瞬間に、犬が覚えている別の指示(オスワリ、フセ、オイデなど)を出します。
指示に従えたら、しっかり褒めておやつをあげましょう。「腰を振るより、オスワリをしたほうが良いことがある」と教え込みます。

 

ステップ3:興奮を冷ます(タイムアウト)

指示が耳に入らないほど興奮している場合は、無言でその場から離れます。
人に行う場合は立ち上がって別の部屋へ行く、ドッグランなら一度リードをつけて落ち着ける場所まで移動しましょう。物理的に対象から引き離し、クールダウンさせる時間を作ることが大切です。

 

よくある質問(Q&A)

 

Q. メス犬もマウンティングをするのはなぜですか?

A. マウンティングは性的な意味合いだけでなく、興奮やストレス発散、遊びの延長で行われることが多いため、メスでも頻繁に見られます。オスと同様に、感情が高ぶったときのリアクションの一つとして捉えてください。

 

Q. 去勢手術をすれば、マウンティングは完全に直りますか?

A. 性的衝動が原因の場合、軽減される可能性は高いです。しかし、ストレスや癖(習慣)で行っている場合は、手術だけでは直りません。手術と並行して、行動の書き換え(トレーニング)を行う必要があります。

 

Q. ぬいぐるみにマウンティングをするのは、やめさせたほうがいいですか?

A. 自分の物に対して短時間行うだけで、その後落ち着くのであれば、無理にやめさせる必要はありません。ただし、何十分も執着し続けたり、取ろうとすると怒ったりする場合は、独占欲や過度な興奮を抑えるために、ぬいぐるみを片付けるなどの対策を検討してください。

 

Q. 老犬が急にマウンティングを始めたのですが、何かのサインですか?

A. 老犬の場合、認知機能の低下(認知症)や、体に痛み(関節痛など)がある不安から、マウンティング行動が出ることがあります。今までしていなかった子が急に始めた場合は、行動の変化として一度獣医師に相談することをお勧めします。

 

5. まとめ:マウンティングは心のSOSかもしれない

 

マウンティングは決して「悪いこと」ではありません。犬にとっては、溢れ出しそうな感情をどうにか処理しようとしている一生懸命な姿でもあります。
大切なのは、「興奮しすぎない環境づくり」「落ち着いた行動への報酬」です。
前兆に気づき、別の行動へ切り替え、必要に応じてクールダウンする。
その積み重ねが、愛犬の安心感と行動の安定につながっていきます。

もし、自宅での対処が難しい場合や、あまりに頻度が高くて心配な場合は、専門のドッグトレーナーや行動学に詳しい獣医師に相談することをお勧めします。

 

 

 

 

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