犬が足を舐める原因はストレス?病気・怪我のサインと見分け方、正しい対処法を獣医が解説

あなたは、愛犬が自分の足や肉球をなめているところを見たことはありますか?
たまに足をなめるのであれば気にならないかもしれませんが、執拗になめていると「これって大丈夫?」と心配になるのではないでしょうか。

犬が足をなめることは自然な行動ですが、頻繁に足をなめる場合は、病気やケガ、感染症、あるいはストレスなど、さまざまな可能性が考えられます。
特に「ストレスが原因なのかな?」と漠然とした不安を抱く飼い主さんも少なくありません。

この記事では、獣医領域の専門知識に基づき、犬が足をなめる主な原因を徹底的に解説します。ストレスと他の原因の見分け方、動物病院を受診すべき症状の目安、そして自宅でできるケアや予防策までを網羅的にご紹介。
愛犬の足なめ行動に関する疑問を解消し、適切な対応ができるよう、わかりやすくお伝えします。

 

この記事でわかること

  • 犬が足をなめる主な原因(ストレス、病気、ケガなど)
  • なめる行動のメリットとデメリット
  • 動物病院を受診すべき症状の具体的な目安
  • 自宅でできるケアと注意点
  • 足をなめる行動の対策と予防策

 


犬が自分の足をなめる主な原因

 

犬が足をなめる原因は、治療が必要なものからまったく心配のない生理現象まで、多岐にわたります。
おもな原因について見ていきましょう。

 

身体的な原因

足の痛みやかゆみ、違和感などが原因でなめることが多いです。

  • かゆみ(アレルギー、寄生虫など)
    特定の場所を執拗になめつづけるときは、アレルギーなどが原因でかゆみを感じている可能性があります。アレルギーが原因の場合は、同じ場所を執拗になめたり、噛んだりするほか、足のほかに耳や口元をかゆがる様子が見られることもあります。また、ノミ、ダニ、真菌(カビの一種)、細菌などの感染症が原因で、激しいかゆみを引き起こすこともあります。特に指の間や肉球の周りに発生しやすく、皮膚の赤みや炎症、脱毛を伴う場合があります。
  • 病気やケガ
    犬が足をなめる原因となる病気には、皮膚炎などの皮膚病のほか、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング病)といった内分泌疾患が、皮膚症状を引き起こして足なめにつながることもあります。
    また、散歩中に肉球に怪我をした、トゲが刺さった、小さな石が挟まったなどが原因で足を気にしてなめる場合もあります。肉球を気にしているときは、まず異常がないか丁寧に確認してあげましょう。
  • 腫瘍
    稀ではありますが、足にできた腫瘍が痛みやかゆみを引き起こし、なめる原因となることがあります。
  • 関節の痛み
    関節炎やその他の整形外科的な問題で足に痛みがある場合、その痛みを和らげようとしてなめることがあります。特に高齢犬や大型犬で注意が必要です。

 

精神的な原因

心の問題が体の行動として現れることがあります。

  • 退屈やストレス
    犬は、退屈を感じたときやストレスを感じたときに、気持ちを落ち着かせようとして足をなめることがあります。留守番中や飼い主さんに構ってもらえなくて暇を持て余したときなどに見られる行動です。
    過度なストレスや退屈は、強迫行動(同じ行動を繰り返し行うこと)につながり、足が傷つくまで噛むなどの自傷行為に発展する危険性もあるため注意が必要です。
  • 分離不安
    飼い主と離れることへの強い不安から、ストレス行動として足をなめることがあります。これは過剰な吠えや破壊行動など他の症状と併発することもあります。

 

生理的な原因

心配のいらない自然な行動です。

  • 毛づくろい(セルフグルーミング)
    犬も猫のように毛づくろいで足をなめることがあります。足についた汚れをきれいにするためで、食後や散歩のあと、寝る前によく見られる行動です。これは、犬にとっての生理的な行動なので、とくに心配はいりません。

 


犬が足をなめるメリットとデメリット

 

犬が足をなめる行動には、良い面と悪い面があります。

メリット

  • 足を清潔に保つ: 毛づくろいによって、足についた軽い汚れをきれいにすることができます。
  • ノミやダニの除去: 軽い寄生虫であれば、なめることで取り除く効果もあります。

デメリット

執拗な足なめは、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  • 皮膚トラブルの悪化: 執拗になめることで、指の間が常に湿った状態になり、雑菌が繁殖しやすくなったり、炎症を起こしやすくなったりといったことが考えられます。これにより、皮膚炎が悪化したり、新たな皮膚病を発症したりするリスクが高まります。
  • 自傷行為への発展: ストレスや不安が原因の場合、なめる行動がエスカレートして皮膚を噛みちぎるなどの自傷行為につながる危険性があります。
  • 人間への感染リスク: 犬の口の中の細菌やウイルスが、足を介して人間に感染する可能性は低いですが、理論的には全くないとは言い切れません。特に、犬が皮膚病を患っている場合などは注意が必要です。

 


犬が足を執拗になめる場合の対処法

 

愛犬が足を執拗になめている場合、まずはその原因を特定し、適切に対処することが重要です。

 

動物病院を受診する目安

次のような症状が見られる場合は、迷わず動物病院を受診してください。早期発見・早期治療が、愛犬の負担を軽減し、病気の悪化を防ぐために最も重要です。

  • 足の皮膚が赤く腫れている、炎症を起こしている
  • 脱毛している、皮膚がただれている、カサブタができている
  • 足から膿が出ている、悪臭がする
  • 足を触ると痛がる、足を引きずるなどの跛行(びっこ)が見られる
  • なめる行動が止まらず、日常生活に支障をきたしている
  • 食欲不振や元気がないなど、他に全身症状が見られる

獣医師は、問診や視診、場合によっては皮膚検査、血液検査、レントゲン検査などを行い、正確な診断を下します。診断に基づいて、内服薬や外用薬の処方、アレルギー検査、行動療法などの治療方針が提案されます。

 

自宅でできるケアと注意点

動物病院で適切な診断と治療を受けた上で、自宅でできるケアを行うことで、回復を促し、悪化を防ぐことができます。ただし、自己判断での処置は症状を悪化させる可能性もあるため、必ず獣医師の指示に従ってください。

  • 患部を清潔に保つ: 獣医師の指示に従い、薬用シャンプーや消毒液で患部を優しく洗い、清潔に保ちましょう。清潔な状態を保つことで、細菌感染のリスクを減らすことができます。
  • 保湿を行う: 乾燥によるかゆみを軽減するために、獣医師に推奨された保湿剤を使用することが有効です。
  • なめさせないための工夫: 患部をなめさせないように、エリザベスカラーを装着したり、獣医師の指導のもとで包帯を巻いて保護したりする方法があります。これにより、患部の悪化を防ぎ、治癒を早めることができます。犬がエリザベスカラーを嫌がる場合は、体に負担の少ないタイプや、軽量なものを試すのも良いでしょう。
  • 処方された薬を正しく与える: 獣医師から処方された内服薬や外用薬は、指示された通りにきちんと与えましょう。自己判断で中断したり、量を変更したりするのは避けてください。

 


足をなめる行動の対策と予防

 

原因に応じた対策と日頃からの予防が、愛犬の健康維持には不可欠です。

原因を取り除くための対策

  • アレルギー対策: 食物アレルギーが疑われる場合は、獣医師と相談してアレルギー対応食に切り替える、またはアレルゲンを特定するための食事試験を行います。環境アレルギーの場合は、こまめな掃除でハウスダストを除去する、空気清浄機を使用する、特定の植物に近づけないなどの対策が有効です。
  • 寄生虫予防: 定期的にノミ・ダニ予防薬を投与することで、寄生虫感染を防ぐことができます。散歩後は、被毛や肉球の間に寄生虫がいないか確認する習慣をつけましょう。
  • ストレス軽減: ストレスが原因の場合は、ストレスの原因を特定し、取り除くことが大切です。例えば、愛犬と一緒に遊ぶ時間を増やす、新しいおもちゃを与える、安心できる環境を整える、分離不安の場合は段階的に留守番に慣れさせるなどの対策が考えられます。必要であれば、動物行動学の専門家に相談することも検討しましょう。
  • 運動不足解消: 十分な散歩や運動の機会を設けることで、ストレス解消やエネルギーの発散につながり、退屈による足なめ行動を減らすことができます。
  • 爪のケア: 定期的に爪切りを行い、適切な長さに保ちましょう。特に巻き爪になりやすい犬種や高齢犬は注意が必要です。

日常生活での予防策

  • 定期的な健康チェック: 日頃から愛犬の足の状態をこまめにチェックする習慣をつけましょう。散歩後には肉球や指の間に異物がないか確認し、汚れていたら優しく拭き取ったり洗い流したりしてください。
  • 適切な食事: バランスの取れた栄養豊富な食事は、皮膚や被毛の健康を保ち、免疫力を高める上で非常に重要です。
  • 清潔な生活環境: 犬が過ごす環境を清潔に保つことは、皮膚トラブルや寄生虫感染の予防につながります。特に寝床はこまめに掃除しましょう。
  • 過度なシャンプーやブラッシングに注意: 皮膚のバリア機能を損なわないよう、適切な頻度と方法でケアを行いましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: 犬が足をなめるのは、ストレスが原因ですか?
A1: ストレスは足をなめる原因の一つですが、すべてではありません。かゆみや痛み、異物、病気なども考えられます。ストレスの場合は、退屈や不安からくることが多く、なめる以外にも落ち着かない様子が見られることがあります。
Q2: 足をなめているのが、ただの毛づくろいか、心配な行動かどう見分ければいいですか?
A2: 一時的で短時間のなめ方であれば毛づくろいの可能性が高いです。しかし、長時間執拗になめる、皮膚が赤くなっている、脱毛がある、足を痛がる、他のストレスサイン(震え、食欲不振など)が見られる場合は、何らかの問題を抱えているサインかもしれません。早めに獣医師に相談しましょう。
Q3: 自宅で足をなめさせないためにできることはありますか?
A3: 獣医師の指示のもと、エリザベスカラーや包帯を使って患部を保護することが有効です。また、ストレスや退屈が原因であれば、運動量を増やしたり、知育玩具を与えたりして、心身の満足度を高めることも効果的です。
Q4: なめる場所がいつも同じなのですが、何か意味がありますか?
A4: はい、特定の場所を執拗になめている場合、その場所に何らかのトラブル(かゆみ、痛み、異物、傷など)がある可能性が高いです。まずはその場所をよく観察し、異常が見られれば動物病院を受診してください。
Q5: アレルギーの可能性がある場合、食事以外で他にできることはありますか?
A5: 環境アレルギーの場合、ハウスダストや花粉が原因となることがあります。こまめな掃除、空気清浄機の使用、散歩後の体の拭き取りなどが有効です。また、獣医師の指導のもと、かゆみ止めなどの薬を使用する場合もあります。

まとめ

 

犬が足を執拗になめる行動は、単なる癖ではなく、何らかの体調不良や心の問題を抱えているサインである可能性が高いです。特に「ストレスが原因」と決めつけず、まずは身体的な問題がないかを獣医師に確認することが重要です。

愛犬の足なめ行動に気づいたら、その様子をよく観察し、皮膚の異常や痛がっている様子がないかを確認しましょう。
少しでも気になる症状があれば、放置せずに早めに動物病院を受診してください。
獣医師の診断を受け、適切な治療とケアを行うことで、愛犬はより快適な生活を送ることができます。
日頃からの観察と適切な予防策で、大切な愛犬の健康を守ってあげてください。

 

 

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