【獣医師監修】犬の留守番は何時間まで?安全に過ごすための重要ポイントをライフステージ別に解説

「仕事で毎日8時間以上、お留守番させているけど大丈夫かな…」
「急な用事。うちの子、何時間までなら一人でいられる?」

愛犬を家に残して外出する際、多くの飼い主さんがこのような不安を感じています。犬はもともと群れで生活する動物なので、留守番が得意ではありません。しかし、ポイントさえ押さえれば、愛犬も飼い主さんも安心して過ごすことができます。

 

この記事では獣医師監修のもと、犬が安全にお留守番できる時間の目安から、絶対に欠かせない環境づくりのポイントまで、網羅的に解説します。正しい知識を身につけ、自信を持って愛犬にお留守番を任せられるようになりましょう。

 

この記事でわかること

  • 子犬・成犬・老犬それぞれの留守番時間の限界目安
  • 愛犬の安全を守るために必須の5つの環境設定ポイント
  • 夏と冬、季節ごとに特に注意すべきこと
  • 留守番の不安を和らげる飼い主の正しい振る舞い
  • 長時間の留守番になってしまう場合の対処法

 

【ライフステージ別】犬の留守番、限界時間の目安は?

 

犬が快適に留守番できる時間は、年齢や健康状態によって大きく異なります。まずは一般的な目安を知っておきましょう。

 

健康な成犬:8時間までが理想、最長12時間

お留守番のトレーニングができており、健康な成犬の場合、8時間程度が一つの目安です。これは一般的な飼い主さんの勤務時間に相当します。最長では12時間程度まで可能とされていますが、これはあくまで限界時間です。長時間トイレを我慢することは、犬にとって大きなストレスであり、膀胱炎などの病気のリスクを高めるため、日常的に10時間を超える留守番は避けるのが望ましいでしょう。

 

子犬(パピー):「月齢+1」時間が目安

子犬は体が未発達で、トイレを我慢できる時間も短く、食事の回数も多いため、長時間の留守番は避けるべきです。一般的に、子犬がトイレを我慢できる時間は「月齢+1」時間と言われています。例えば、生後3ヶ月なら約4時間が限界です。

  • ~生後3ヶ月:食事も1日3回以上必要な時期。留守番は2~3時間以内にとどめましょう。
  • 生後4~6ヶ月:トイレトレーニングが進む時期。4~5時間を目安に。
  • 生後6ヶ月以降:体も大きくなり、徐々に長い時間の留守番が可能になります。

長時間の留守番は、トイレの失敗や、不安からくる食糞などの問題行動にもつながりやすいため、特に注意が必要です。

 

老犬(シニア):心身の変化に合わせた配慮を

7歳を超えたシニア犬は、体力や体温調節機能が衰え、トイレの間隔も短くなります。また、目や耳が不自由になることで不安を感じやすくなったり、認知症を発症したりすることもあります。そのため、留守番時間は4~6時間以内を目安とし、できるだけ短くしてあげましょう。何よりも安全と快適さを最優先した環境設定が不可欠です。

 

長時間留守番をさせる前に!確認必須の5つの重要ポイント

 

愛犬に安心して留守番してもらうためには、事前の準備がすべてです。以下の5つのポイントを必ずチェックしてください。

 

ポイント1:安全なテリトリーを確保する(安全対策)

留守番中は、思わぬ事故が起こりやすいものです。ケージやサークル、あるいは一部屋を活用し、犬が安全に過ごせる空間を限定しましょう。

  • 誤飲・誤食の防止:ゴミ箱、薬、人間の食べ物、観葉植物、子供のおもちゃなどは絶対に犬が届かない場所に片付けます。
  • 感電・火傷の防止:電気コードはカバーをするか家具の裏に隠し、使用しない家電はコンセントを抜いておきましょう。ストーブなども危険です。
  • 転落・脱走の防止:ベランダには出られないようにし、窓の施錠も忘れずに行いましょう。

 

ポイント2:季節に合わせた徹底した温度・湿度管理

犬は人間よりも体温調節が苦手です。特に密閉された室内では、温度と湿度の管理が命に関わります。

  • 犬が快適な室温・湿度:室温22~26℃、湿度50~60%が目安です。
  • 夏場の注意点:エアコンは必須です。熱中症は命の危険があります。直射日光が当たらないようにカーテンを閉め、涼しい場所を確保してあげましょう。特にフレンチ・ブルドッグなどの短頭種は暑さに非常に弱いので厳重な管理が必要です。
  • 冬場の注意点:寒さだけでなく、暖房による乾燥にも注意が必要です。ペット用のヒーターや湯たんぽを使用する場合は、低温やけどやコードを噛む危険がないか、安全性を十分に確認してください。

 

ポイント3:新鮮な水と食事の準備

いつでも新鮮な水が飲めるようにしておくことは、留守番の基本です。ひっくり返しにくい重さのある器を選ぶか、ケージに取り付けるタイプの給水器を準備しましょう。夏場は水の減りが早いので、複数箇所に置くと安心です。長時間になる場合は、タイマー式の自動給餌器を活用すると、決まった時間に食事を与えられます。

 

ポイント4:退屈と不安を紛らわす工夫

「ひとりぼっちで寂しい、退屈だ」という気持ちは、いたずらや問題行動につながります。犬がひとりで楽しめるアイテムを用意してあげましょう。

  • 知育トイ:中にフードやおやつを詰めて、時間をかけて楽しめるおもちゃ(コングなど)は留守番の強い味方です。
  • 安心できるアイテム:飼い主さんの匂いがついたタオルやTシャツをベッドに置いておくと、犬は安心して眠ることができます。
  • テレビやラジオ:静まり返った部屋が不安なタイプの犬には、小さな音でテレビやラジオをつけっぱなしにしておくと落ち着くことがあります。

 

ポイント5:留守番前のエネルギー発散

留守番の直前に、散歩や遊びで体を動かし、適度に疲れさせてあげることも重要なポイントです。心身ともに満たされた犬は、留守番中にリラックスして眠ってくれる時間が長くなります。

 

飼い主の行動がカギ!留守番前後の「お約束」

 

犬の不安を助長しないために、飼い主さんの出発・帰宅時の振る舞いも大切です。

■ 出かけるときは「さりげなく」
「ごめんね」「いい子にしててね」などと過剰に声をかけるのはやめましょう。飼い主の特別な態度が犬の不安を煽ります。あくまで普段通り、さりげなく家を出るのがコツです。

■ 帰宅したときは「落ち着いてから」
帰宅時に大喜びで迎えてくれると嬉しいものですが、すぐに駆け寄って騒ぐのはNG。「飼い主が帰ってきた!」という興奮を増長させ、次のお留守番への期待と不安を大きくしてしまいます。まずは荷物を置くなど自分のことを済ませ、愛犬が落ち着いてから「ただいま」と優しく声をかけてあげましょう。

 

犬の留守番に関するよくある質問

 

Q1. 留守番に慣れていない犬は、どうすればいいですか?

A1. いきなり長時間の留守番はさせず、トレーニングが必要です。まずは飼い主さんが同じ部屋にいる状態でケージで過ごす練習から始め、次に飼い主さんが別の部屋に移動する、5分だけ外出するなど、ごく短い時間から少しずつ慣らしていきましょう。焦らず段階を踏むことが成功の秘訣です。

 

Q2. 2匹以上で留守番させる方が安心ですか?

A2. 一概にそうとは言えません。仲が良い犬同士であれば寂しさが紛れることもありますが、相性が悪い場合は喧嘩による怪我のリスクがあります。また、一方が吠えるともう一方もつられて吠えるなど、問題行動がエスカレートする可能性もあります。それぞれの性格をよく見極める必要があります。

 

Q3. 夏場の停電が心配です。エアコン以外の対策はありますか?

A3. 停電は深刻な問題です。対策として、ペット用のクールマットや、凍らせたペットボトルをタオルで巻いたものを置いておく、家の中でも特に涼しい北側の部屋で留守番させるなどの方法があります。しかし、根本的な解決にはならないため、猛暑日に長時間の留守番が避けられない場合は、ペットホテルなど空調が保証された場所に預けるのが最も安全です。

 

Q4. ペットカメラは設置した方がいいですか?

A4. 必須ではありませんが、設置すると非常に安心できます。留守番中の愛犬の様子(寝ているか、不安そうにしているかなど)を確認できるだけでなく、室温のチェックや、万が一の異変に早く気づくことができます。最近は安価で高性能なものも多いので、導入を検討する価値は十分にあります。

 

Q5. 帰宅したら粗相やいたずらをしています。叱るべきですか?

A5. いいえ、絶対に叱ってはいけません。犬は時間が経ってから叱られても、何に対して叱られているのか理解できません。むしろ「飼い主が帰ってくると怖いことが起きる」と学習し、不安を増大させるだけです。粗相やいたずらは、寂しさや退屈さのサインです。留守番の環境や時間を見直すきっかけと捉え、黙って片付けましょう。

 

まとめ:愛犬に合わせた環境作りで、安心できるお留守番を

 

犬の留守番は、時間の長さだけを気にするのではなく、その子の年齢、性格、健康状態を考慮した上で、安全で快適な環境をいかに整えてあげるかが最も重要です。

今回ご紹介したポイントを参考に、愛犬が「お留守番は安全で快適な時間」だと思えるようにサポートしてあげましょう。どうしても規定の時間を超える長時間の留守番が必要な場合は、ペットシッターや一時預かりサービスなどのプロに頼ることも、大切な選択肢の一つです。

 

 

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