犬のダニ対策【獣医師監修】マダニの危険性と正しい駆除・予防方法を解説

愛犬の散歩中、草むらから帰ってきたら体に小さな虫が付いている…それは、もしかすると「マダニ」かもしれません。マダニは、様々な病気を媒介する危険な寄生虫です。

この記事では、「犬とダニ」をテーマに、マダニの感染経路から、媒介する恐ろしい病気、そして飼い主さんが知っておくべき正しい駆除・予防方法まで、獣医師が詳しく解説します。大切な愛犬とご家族の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。

 

この記事を読むとわかること

  • マダニが犬に寄生する原因と、その活動時期
  • マダニが媒介する病気の具体的な症状と危険性
  • 吸血中のマダニを見つけた際の正しい対処法
  • 年間を通して行うべきマダニ予防の重要性

 

犬に寄生するマダニとは?感染経路と活動時期

 

日本に生息するダニは2,000種類以上と言われていますが、犬にとって特に注意が必要なのが「マダニ」です。マダニは、吸血によって様々な病原体を犬や人間に感染させる可能性があります。

 

マダニの感染経路

マダニは、主に以下の場所や状況で犬に寄生します。

  • 草むらや藪: 公園の草地、河川敷、山林、庭の茂みなど、草木が生い茂る場所に多く生息しています。散歩中にマダニが付着することが最も多い感染経路です。
  • 人間の服や靴: 飼い主さんが外出先でマダニを服や靴に付着させたまま帰宅し、それが室内に落ちて犬に寄生するケースもあります。
  • 他の動物との接触: 野良猫や野生動物を介して感染することもあります。

「うちの子は室内犬だから大丈夫」と思いがちですが、マダニは意外な場所にも潜んでいるため、油断は禁物です。

 

マダニの活動時期

一般的に、マダニは気温が上がり始める春から秋にかけて活動が活発になります。しかし、近年では温暖化の影響もあり、冬場でも活動している種類が確認されています。そのため、年間を通して予防対策を行うことが非常に重要です。

 

マダニが媒介する病気と症状

 

マダニは吸血する際に唾液と共に病原体を注入し、犬や人間に様々な病気を引き起こします。中には命に関わる重篤な病気や、人にも感染する「人獣共通感染症」も含まれます。

 

1. 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

ウイルスが原因の感染症で、犬も人間も感染します。特に人間が感染した場合の致死率は高く、現在も根本的な治療法はありません。

  • 主な症状: 発熱、食欲不振、下痢、嘔吐、血小板の減少、白血球の減少など。
  • 注意点: 犬から人への直接感染の報告もあるため、犬がマダニに咬まれてSFTSに感染している可能性がある場合は、特に注意が必要です。

 

2. 犬バベシア症

「バベシア」という原虫が犬の赤血球に寄生する感染症です。人間への感染は確認されていませんが、犬にとっては非常に危険な病気です。

  • 主な症状: 貧血、発熱、食欲不振、黄疸(白目が黄色くなる)、脾臓の腫れなど。
  • 注意点: 赤血球が破壊されることで重度の貧血を引き起こし、多臓器不全により死に至ることもあります。特に子犬や老犬は重症化しやすい傾向にあります。

 

3. ライム病

ライム病ボレリアという細菌が原因で、犬も人間も感染する人獣共通感染症です。

  • 犬の主な症状: 関節炎による跛行(足を引きずること)、発熱、食欲不振、神経症状など。ただし、多くの犬は感染しても目立った症状が出ない「不顕性感染」であることが多いです。
  • 人間の主な症状: 特徴的な皮膚の発疹(遊走性紅斑)、発熱、頭痛、関節痛、神経症状など。

 

マダニを見つけたらどうする?正しい駆除方法

 

もし愛犬の体にマダニが吸血しているのを見つけても、決して自分で無理やり取ろうとしないでください。

  • マダニを無理に引っ張ると、皮膚に口器(マダニの口の部分)が残ってしまい、炎症や化膿の原因になります。
  • マダニを潰してしまうと、体内に含まれる病原体が飛び散り、人間に感染するリスクがあります。

 

【正しい対処法】
吸血中のマダニを見つけたら、マダニが付着したままの状態で、できるだけ早く動物病院を受診してください。獣医師が専用の器具を使って安全に除去します。その際、マダニの種類や吸血期間によっては、媒介された病気を調べるための検査や治療が必要になることもあります。

 

マダニを寄せ付けない!効果的な予防法

 

マダニに咬まれないための最も効果的な対策は、予防薬を定期的に投与することです。

 

マダニ予防薬の種類

マダニ予防薬には、様々なタイプがあります。愛犬の性格や体質に合わせて選びましょう。

  • スポットタイプ(滴下タイプ): 首筋の皮膚に垂らす液体のお薬です。皮膚から吸収され、効果を発揮します。
  • チュアブルタイプ(経口タイプ): 美味しいおやつ感覚で食べさせられるお薬です。消化管から吸収され、全身に行き渡ります。
  • スプレータイプ: 全身にスプレーして使用します。
  • 首輪タイプ: 首に巻くことで、有効成分が広がり効果を発揮します。

どのタイプの予防薬も、動物病院で処方されるものが一般的です。市販のものは効果が不十分な場合もあるため、必ず獣医師に相談して適切なものを選びましょう。

 

日々の予防策

  • 散歩の際は、マダニが多く潜む草むらや藪を避けて歩く。
  • 散歩から帰宅したら、ブラッシングを兼ねて全身をチェックする。
  • 飼い主さんの服や靴にマダニが付いていないか確認してから室内に入る。

 

犬とダニに関するよくある質問

 

Q1: マダニは室内にもいますか?

A1: はい、マダニは屋外から人の服や靴、他のペットに付着して室内に持ち込まれることがあります。室内で犬がマダニに寄生される可能性もゼロではありません。特に、室内外を行き来するペットがいる場合は注意が必要です。

 

Q2: 予防薬はいつからいつまで続ければ良いですか?

A2: マダニは一年中活動している種類がいるため、基本的には年間を通して毎月1回、継続して投与することが推奨されます。特に暖かくなる時期(春から秋)は活発になるため、忘れずに投与しましょう。

 

Q3: ダニに刺された犬に触っても大丈夫ですか?

A3: ほとんどの場合、犬の体から人に直接マダニが飛び移ることはありません。しかし、犬がSFTSに感染している場合、その犬に咬まれたり、体液に触れたりすることで人が感染するリスクも報告されています。心配な場合は、犬を触った後はよく手を洗い、愛犬の状態をよく観察しましょう。

 

Q4: 犬用のダニ予防薬は人間にも効きますか?

A4: 犬用のダニ予防薬は、人間への使用を想定して作られていません。人間がマダニに咬まれないようにするには、草むらなどに入る際に長袖・長ズボンを着用する、虫よけスプレーを使用するなどの対策が必要です。

 

【まとめ】予防と早期発見が愛犬の命を守る

 

マダニは、身近な場所に潜む非常に危険な寄生虫です。予防薬の定期的な投与は、愛犬の健康を守る上で欠かせません。「ダニなんて、見つけたら取ればいい」と安易に考えず、日頃からしっかりと予防しましょう。

もしマダニを見つけても、焦らず、正しい方法で対処することが大切です。大切な家族の一員である愛犬が、マダニによって病気になるリスクを最小限に抑えるために、予防と日々のチェックを習慣化してください。

 

 

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