【獣医師監修】犬のトイレ失敗は病気のサイン?急な粗相の原因を見極める3ステップと対処法

愛犬が急にトイレを失敗するようになると、「教え方が悪かったのかな」「わざとやっているの?」と不安になったり、つい叱ってしまいたくなることもあるかもしれません。

しかし、犬が排せつを失敗するときは、何かしら理由が隠れていることがほとんどです。それが体の不調なのか、心の不安なのか、あるいは環境の変化なのか。犬は言葉で説明できない代わりに、「排せつのトラブル」という形で私たちにサインを出していることがあります。

この記事では、「また失敗した!」と感情的に反応するのではなく、獣医師が推奨する3つのステップで原因を丁寧に探り、愛犬の安心と改善につなげるためのポイントを分かりやすくまとめています。

 

この記事を読むとわかること

  • 愛犬が急にトイレを失敗する本当の理由(病気・環境・心理)
  • 命に関わる可能性のある危険な病気のサインと、すぐに病院に行くべき目安
  • 原因を効率的に特定するための【3ステップ診断】の手順
  • シニア犬や子犬、留守番中の失敗など、ケース別の具体的な対策
  • 失敗を減らし、愛犬に優しいトイレ環境の整え方としつけの基本

 

目次

愛犬の排せつトラブルに向き合う3ステップ診断

 

トイレの失敗=しつけ不足、と決めつけてしまうと、本当の原因を見逃してしまう危険性があります。排せつトラブルに向き合うときは、「この順番」で確認していくことがとても大切です。この順番を守ることで、効率よく原因をしぼり込むことができ、特に病気の早期発見につながります。

 

ステップ1:体のトラブルがないか?(医学的な原因)

「急にできなくなった」場合は、医学的な原因である確率が最も高いです。まず最初に、体調の変化や病気が隠れていないかをチェックします。

 

ステップ2:トイレ環境は使いやすい?(環境の原因)

次に、トイレの場所・形・清潔さなど、環境そのものが犬にとって快適かどうかを見直します。

 

ステップ3:心の負担はない?(心理・行動の原因)

最後に、ストレス、不安、興奮など、気持ちが影響していないかを確認します。

 

【重要】病気が隠れているのに、しつけだけをやり直すことは、犬に大きな負担をかけ、病気の発見を遅らせてしまうため絶対に避けてください。

 

ステップ1:体のトラブルがないか?(医学的な原因)

 

排せつトラブルの原因として、まず最優先で疑うべきなのは体の不調です。特に、「今まではできていたのに、急に失敗が増えた」「回数や量が以前と明らかに違う」という場合は、医学的な問題が潜んでいる可能性が高くなります。以下の表を参考に、愛犬の様子をチェックしてください。

 

代表的な病気とサイン

疑われる病気 排せつの特徴 その他のサイン(要チェック)
膀胱炎・尿路結石 頻繁に少量ずつする、トイレ以外の場所で漏らしてしまう 尿が赤い・濁っている、排尿時に痛そうに鳴く、陰部をしきりに舐める
多飲多尿(腎臓病・糖尿病・クッシング症候群など) 我慢できずに大量にする、尿の色が薄い 水を飲む量が極端に増える、食欲の変化、体重の増減
関節炎・ヘルニア(痛みによる) トイレの少し手前でしてしまう、トイレトレーの枠をまたげない 歩き方がぎこちない、段差や階段を嫌がる、抱き上げると痛がる
認知機能不全(認知症) 場所が分からなくなる、歩きながら少しずつ漏らしてしまう 夜鳴き、徘徊、呼びかけに反応しにくい、食事の場所が分からない

 

⚠️すぐに受診してほしい「危険なサイン」

次のような様子が見られたら、自宅で様子を見る前に、一刻も早く動物病院へ相談してください

  • おしっこがまったく出ない(排尿の姿勢をしても一滴も出てこない)→ 尿道閉塞の可能性があり、命に関わる緊急事態です。
  • 血が混じったおしっこが出る薄いピンク〜濃い茶色まで、色の違いに関わらず要注意です)
  • 水を異常にたくさん飲むようになった(「最近、明らかに水をがぶ飲みしている」と感じる状態)
  • 排尿時に激しい痛みを伴う様子がある

 

補足:シニア犬でよくある「体のせいで間に合わない」ケース

高齢の犬では、病気だけでなく、加齢による身体機能の低下で失敗が増えることがあります。

  • 筋力低下:おしっこを溜めるための括約筋の力が弱くなり、寝ている間や不意に漏らしてしまう(尿失禁)。
  • 感覚の鈍化:視力が落ちてトイレが見えにくい、もしくは排せつの切迫感が伝わりにくくなっている。
  • 運動機能の低下:関節や腰の痛みで、トイレまで間に合わない、またはトイレトレーの段差をまたぐのがつらい。

シニア犬の失敗は「わざと」ではなく、「体がついていないだけ」という可能性を常に頭に置き、トイレの環境改善(段差解消、枚数を増やすなど)を優先的に行ってください。

 

ステップ2:トイレ環境は使いやすい?(環境の原因)

 

病気の可能性が低い、あるいは動物病院で問題ないと言われた場合は、まず “環境そのもの” を見直します。犬がトイレを失敗する背景には、「そこではしたくない」「使いづらい」という “環境への不満” が隠れていることも多いからです。

 

犬が嫌がる「環境のつまずき」チェックリスト

  • 清潔さ:トイレが汚れている(犬はきれい好きです。汚れた場所での排せつを嫌がります)。
  • 落ち着き:人の通りが多く落ち着かない(玄関、リビングの真ん中など)
  • 場所の変更:トイレの場所が急に変わった、または寝床や食事場所に近づきすぎた。
  • サイズ:トイレが狭い(体長の1.5倍程度の広さがないと、回って体勢を整えにくい)。
  • 素材:シーツの素材や感触が変わった(特に子犬はシーツの感触を覚えています)。
  • その他:段差がある、またはトイレトレーがグラグラする、特定の匂い(強い芳香剤など)がする。

 

こうした場合は、トイレの位置・広さ・清潔さを見直し、「ここなら安心してできる」という印象づくりが改善の近道になります。具体的な改善策は、後述の「失敗を減らすための基本ステップ」で詳しく解説します。

 

ステップ3:心の負担はない?(心理・行動の原因)

 

環境に問題がなさそうなら、次は犬の “気持ち” を見ていきます。ストレス・不安・興奮は、排せつのコントロールに直結します。

 

① マーキング(心理背景のある“匂い付け”行動)

マーキングは、縄張りを主張したり、不安を落ち着かせたりするための心理的な排せつ行動です。

  • 行動の特徴:少量で、壁・家具など垂直面にすることが多い。足を上げて排尿する(特に未去勢のオス)。
  • 心理背景:来客や新入りペットによる不安や緊張、または新しい家具や匂いへの縄張り主張。

排せつとマーキングの違い:

・排せつ:生理現象。量が多く、床にすることが多い。→ 体調や環境の見直しが優先。

・マーキング:心理的な匂い付け。少量で、壁・家具など垂直面に多い。→ 不安や緊張など、気持ちのケアが優先。

 

② 分離不安(飼い主がいない不安による失敗)

  • 行動の特徴:留守番中だけ失敗する、または帰宅したら家のあちこちに排せつが残っている。破壊行動や吠えを伴うことも多い。
  • 心理背景:飼い主がいない不安でパニックになり、排せつのコントロールが効かなくなるケースです。

これは「わざと」ではなく、不安の表れです。叱るとさらに不安が強くなるため、環境管理と、短い時間の留守番から慣れさせるトレーニングが中心になります。

 

③ 服従性・興奮性排尿(うれしょん・怖がりの排尿)

  • 行動の特徴:来客時や飼い主の帰宅時にポタッと少量漏らす。叱られたり、目を合わせたりしたときに小さくなって漏らす。
  • 心理背景:これは “失敗”ではなく、感情による自然な反応です。「降参」「敵意はありません」という服従のサインや、興奮しすぎた際の生理的な反応です。

この行動を叱ると、犬は「排せつそのもの」や「飼い主の帰宅・来客」に強い恐怖を感じるようになり、かえって悪化します。落ち着ける距離の取り方や、来客時の動線調整などが効果的です。

 

今日からできる!失敗を減らすための3つの基本ステップ

 

「犬が理解しやすい方法で伝えるにはどうするか」という視点で、すぐに実践できる具体的なポイントをまとめます。

 

1. 「酵素系クリーナー」でニオイの元から断つ

市販の家庭用洗剤(中性洗剤・アルコール・漂白剤など)では、犬の鼻には尿のニオイが残りやすく、同じ場所でまたしてしまう原因になります。

  • 対策:ペット用の酵素入りクリーナーを使用してください。
  • 理由:尿に含まれるタンパク質や尿酸を分解し、ニオイの元から消すことができます。
  • 使い方:製品の説明書どおりに、十分な量をかけ、しっかり浸透・放置してから拭き取りましょう。

「同じ場所で何度も失敗する」場合は、掃除の仕方から見直すことが改善への第一歩です。

 

2. 犬目線で「トイレ環境」を整えなおす

犬にとって使いやすいトイレ環境には、いくつか共通点があります。

  • 十分な広さ:体長の1.5倍くらいのスペースがあると、くるくる回って体勢を整えやすくなります。大型犬やシニア犬は特に広めに。
  • 場所の選定:寝床や食事場所から少し離した、静かで落ち着ける場所に置く。玄関や子どもの動線など、騒がしい場所は避けてください。
  • シニア犬対策:段差のない平らなシーツを敷く、またはトイレ周りを広範囲にシーツでカバーする。
  • 清潔さ:汚れたシーツはすぐに交換し、常に清潔に保つ。

 

3. 「叱る」を封印し、「その場でほめる」を徹底する

犬は、人間のように「さっきのこと」を振り返って理解することができません。失敗を見つけたときの対応が、今後の改善を左右します。

  • 失敗を見つけたら:叱らずに、淡々と片付けるだけにします。声を荒らげたり、失敗跡を見せて説教するのは、犬に不安を与えるだけで逆効果です。
  • 成功した瞬間:排せつが終わって1秒以内を目安に、たっぷり声をかけてほめ、特別なおやつ(ごほうび)を与えます。

成功した瞬間にごほうびがもらえる経験を積むことで、「ここでトイレをするといいことがある」と学び、自分から正しい場所を選びやすくなります。

 

実例でわかる:ケース別・対策の考え方

 

ケース1:シニア期に入り、トイレを外してしまうようになった犬

<状況>

トイレには向かうのに、フチにお尻が当たり外へこぼれる。夜間に間に合わないことが増えた。

<考えられた原因>

年齢で体の位置を細かく調整しづらくなっていたこと。トレーの段差が負担になっていた可能性。夜間、排せつを我慢しきれなくなったこと(筋力低下)。

<対策>

  • 段差のない平らなトイレに変更し、トイレ周りを広めにシーツでカバーした。
  • 夜間は、寝床から近い場所に予備のトイレを増設した。

 

ケース2:留守番のときだけ布団でおしっこする犬

<状況>

飼い主さんが帰宅すると、毎回布団の上でおしっこをしている。他の場所ではしない。

<考えられた原因>

分離不安があり、飼い主さんの匂いが強く付いている布団に、自分の匂いを重ねて落ち着こうとしていた(匂い付け行動)。

<対策>

  • 留守番中は寝室に入れないよう環境を完全に管理
  • 短い時間の留守番から練習し、不安を減らすトレーニングを実施(不安の根本解消)。

 

よくある質問(Q&A)

 

ユーザーが抱きやすい疑問とそれに対する簡潔な回答をまとめました。

 

Q1. 子犬がトイレを覚えないのはなぜですか?

A. 子犬は排せつの間隔が短く、膀胱のコントロールが未熟なためです。失敗の多くは「間に合わない」ことが原因で、しつけの失敗ではありません。成功回数を増やすために、食事の後、遊びの後、寝起きの直後など、排せつしそうなタイミングを見計らってトイレに誘導し、成功したらすぐに褒めることを徹底してください。

 

Q2. 叱ってはいけないと聞きましたが、どうすれば伝わりますか?

A. 叱っても犬は「なぜ怒られているか」理解できず、不安が増すだけです。犬が理解できるのは「直前(1秒以内)の行動と結果の関連性」のみです。失敗を無視し、成功を大げさに褒めて「ここでやると良いことがある」と教えることで、犬は自ら正しい場所を選ぶようになります。

 

Q3. 多頭飼いの場合、トイレが原因で失敗が増えることはありますか?

A. はい、あります。特にマーキング行動のある犬がいる場合や、一頭がトイレを汚した後、他の犬がその場所を嫌がって使わなくなることがあります。頭数分のトイレを用意するか、常に清潔に保つ、またはトイレを別々の場所に設置するなどの配慮が必要です。

 

Q4. 病院を受診する際、どんな情報を伝えれば良いですか?

A. 「いつから」「排せつの回数・量・色」「失敗する場所・タイミング(留守番中など)」「水を飲む量の変化」「食欲・元気の変化」をメモして伝えてください。特に排泄物(尿や便)のサンプルを持参できると、検査がスムーズになります。

 

Q5. マーキングと普通の排せつの見分け方を教えてください。

A. マーキングは「少量」で「壁や家具などの垂直面」にする傾向が強いです。一方、生理的な排せつは「比較的量が多く」床など水平面にする傾向があります。ただし、病気で頻尿になっている場合も少量になるため、判断が難しい場合は獣医師に相談してください。

 

まとめ:排せつトラブルは愛犬からの大切なメッセージ

 

トイレの失敗は、ただの「困った行動」ではなく、体の不調・環境のストレス・心の負担など、愛犬からの大切なサインであることが多くあります。感情で叱る前に、この3つの順番で考えてみてください。

 

  1. 【最優先】ステップ1:体の不調を確認する
    急な変化や尿・便の異常があるときは、まず病気の可能性を最優先でチェック。
  2. ステップ2:トイレ環境を見直す
    場所・広さ・清潔さ・音・段差など、「使いづらさ」がないか細かく確認。
  3. ステップ3:心の負担を探る
    不安・興奮・マーキングなど、気持ちが乱れると排せつのコントロールが難しくなることも。

 

この3つを落ち着いてたどっていくと、排せつトラブルの本当の理由が少しずつ見えてきます。叱るよりも、愛犬の状況を優しく読み取ることが、改善へのいちばんの近道です。

 

 

 

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