「あれ、なんだか愛犬のおしっこの様子がいつもと違う…?」
毎日当たり前のように見ているおしっこ(尿)ですが、実は愛犬の健康状態を教えてくれる重要な「健康のバロメーター」です。色の変化や回数の増減など、ささいな違いが病気の早期発見につながることも少なくありません。
この記事では、犬のおしっこから健康状態をチェックするためのポイントを、獣医師監修のもと分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- 健康な犬の正常なおしっこの色・回数・量・臭い
- 見逃してはいけない危険なサイン(色・回数・量の変化)
- おしっこの異常から考えられる具体的な病気
- 動物病院を受診すべき症状の目安と準備
- 今日からできる愛犬のおしっこの健康を守るケア
まずは知っておこう!犬の「正常な」おしっことは?

異常に気づくためには、まず「正常な状態」を知っておくことが大切です。愛犬の普段のおしっこの状態を把握しておきましょう。
健康なときの「回数」
犬のおしっこの回数は、年齢や生活スタイルによって異なります。
- 子犬:1日に7~10回程度(膀胱が小さく、我慢できる時間も短いため)
- 成犬:1日に3~5回程度(散歩のタイミングなどで習慣化)
- シニア犬:1日に5~7回程度(筋力の低下や腎機能の変化により増加傾向)
あくまで目安ですので、大切なのは「その子にとっての普段の回数」を把握することです。
健康なときの「色」
健康な犬のおしっこの色は、「透明感のある薄い黄色(淡黄色)」が理想的です。獣医学的には「麦わら色」とも表現されます。
飲水量が多ければ無色に近くなり、朝起きたときや運動後など水分摂取が少ないときは少し濃い黄色になるなど、生理的な変化はあります。
健康なときの「量」
1日の尿量の目安は、体重1kgあたり20~45ml程度です。例えば、体重5kgの犬なら100ml~225ml程度が平均となります。
毎回正確に測るのは難しいですが、ペットシーツでのおしっこの広がり具合や、1日に交換するシーツの枚数などから、普段の量を感覚的に覚えておくと変化に気づきやすくなります。
健康なときの「臭い」
健康な犬のおしっこは、わずかにアンモニア臭がしますが、ツンとくるような強い臭いはありません。
食事内容によって多少の変化はありますが、いつもと違う強い臭いがする場合は注意が必要です。
【色で判断】こんなおしっこは要注意!危険なサインと考えられる病気

おしっこの色は、体の中で何が起きているかを知るための重要な手がかりです。以下のような色の変化が見られたら、病気が隠れている可能性があります。
赤い・ピンク色・オレンジ色(血尿)
おしっこに血が混じっている状態で、緊急性が高いサインです。出血量によって、鮮やかな赤色から薄いピンク、オレンジ色、茶褐色まで様々です。ペットシーツに点々と血が付着することもあります。
- 考えられる主な病気:膀胱炎、尿石症、腎臓や膀胱の腫瘍、前立腺の病気(未去勢のオス)、玉ねぎ中毒などによる溶血性貧血
命に関わる重大な病気の可能性もあるため、すぐに動物病院を受診してください。
無色透明に近い
水をたくさん飲んだ後は一時的に色が薄くなりますが、常に無色透明に近いおしっこが大量に出る場合は注意が必要です。これは「多飲多尿」のサインで、尿を濃縮する腎臓の機能が低下している可能性があります。
- 考えられる主な病気:慢性腎臓病、糖尿病、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)など
おしっこの色だけでなく、飲水量が明らかに増えていないかも合わせて確認しましょう。
濃い黄色・茶色がかったオレンジ色
脱水によって一時的に濃くなることもありますが、明らかに濃い黄色や茶色、オレンジ色のおしっこが続く場合は、肝臓や胆嚢の異常(黄疸)や、筋肉の損傷、中毒などが疑われます。
- 考えられる主な病気:肝炎、胆管閉塞、溶血性疾患、重度の熱中症など
この場合も、すぐに動物病院で診察を受けることを強く推奨します。
白く濁っている・キラキラしたものが混じる
おしっこが白っぽく濁っていたり、光に当てるとキラキラ光る砂のようなもの(結晶)が混じっていたりする場合、尿路感染や結石のサインかもしれません。
- 考えられる主な病気:膀胱炎、尿石症(ストラバイト結晶、シュウ酸カルシウム結晶など)
結晶が大きくなると結石になり、尿道を塞いでしまう(尿道閉塞)と命に関わるため、早期の対処が重要です。
【回数・量・様子で判断】見逃したくないおしっこの変化

色だけでなく、排尿時の行動や回数、量の変化も重要なサインです。
おしっこの回数が多い(頻尿)
少量のおしっこを何度も繰り返す状態です。特に、トイレ以外の場所で粗相をしたり、排尿ポーズをとるのにおしっこが少ししか出なかったりする場合は注意が必要です。
- 考えられる主な病気:膀胱炎、尿石症、ストレスなど
おしっこの量が多い(多尿)
1回のおしっこの量や1日の総量が明らかに増えている状態で、多くの場合、水を飲む量が増える「多飲」を伴います。ペットシーツがすぐにびっしょりになる、水を飲む時間が長くなったなどの変化が見られます。
- 考えられる主な病気:慢性腎臓病、糖尿病、クッシング症候群、子宮蓄膿症(メス)など
おしっこが出ない・少ししか出ない
何度も排尿ポーズをとるのに、おしっこが全く出ない、またはポタポタとしか垂れない状態です。これは「尿道閉塞」を起こしている可能性があり、非常に危険な状態です。
尿が排出されないと、体内に毒素が溜まり急性腎不全や尿毒症を引き起こし、24~48時間以内に命を落とす危険性があります。これは一刻を争う緊急事態ですので、夜間や休日であっても、すぐに救急対応可能な動物病院を受診してください。
おしっこをするときに痛がる・鳴く
排尿時に背中を丸めて震えたり、「キャン」と鳴き声をあげたりする場合、排尿時に痛みを感じているサインです。
- 考えられる主な病気:膀胱炎、尿石症、尿道閉塞など
動物病院へ行くべき?受診の目安と準備

「いつもと違う」と感じたら、まずは動物病院に相談することが基本です。特に以下のような症状が見られる場合は、様子を見ずに受診しましょう。
こんな症状が見られたらすぐに病院へ
- おしっこが全く出ない、またはポタポタとしか出ない
- 血尿が出ている
- 元気や食欲がなく、ぐったりしている
- おしっこと一緒に嘔吐や下痢がある
- お腹を触ると痛がる
病院で伝えるべきことと準備するもの
診察をスムーズに進めるために、以下の情報を整理しておくと役立ちます。
- いつから、どんな症状があるか(例:昨日の夜から何度もトイレに行く)
- おしっこの色、回数、量の変化
- 飲水量の変化(増えた、減ったなど)
- 元気、食欲、体重の変化
- その他、気になる行動(排尿時に鳴く、陰部を気にして舐めるなど)
可能であれば、スマートフォンで実際のおしっこや排尿時の様子を撮影した動画があると、獣医師にとって非常に有力な情報となります。また、新鮮な尿を持参できると、すぐに検査ができて診断の助けになります。採尿方法は、病院で事前に確認しておくとよいでしょう。
家庭でできる!愛犬のおしっこの健康を保つための予防とケア

日々の生活の中で、飼い主さんができることもたくさんあります。
- 新鮮な水をいつでも飲めるようにする:飲水量を確保し、おしっこをしっかり出すことで、膀胱内を洗い流し、結石や膀胱炎の予防につながります。
- トイレを清潔に保つ:不潔なトイレは細菌が繁殖しやすく、我慢の原因にもなります。トイレは常に清潔を心がけましょう。
- バランスの取れた食事:ミネラルバランスが偏った食事は、尿石症のリスクを高めることがあります。愛犬の年齢や健康状態に合った総合栄養食を与えましょう。
- 適度な運動とストレス管理:運動不足やストレスは、免疫力の低下や飲水量の減少につながることがあります。愛犬に合った散歩や遊びを取り入れましょう。
犬のおしっこに関するよくある質問(Q&A)

Q. おしっこの色が一時的に濃いだけなら大丈夫?
A. 朝一番のおしっこや、運動後で水分補給ができていない時など、一時的に濃くなることは生理的な現象なので、過度な心配は不要です。ただし、元気や食欲がない、水を飲んでいるのに濃い尿が続く、といった場合は脱水や他の病気の可能性も考えられるため、獣医師に相談しましょう。
Q. 老犬(シニア犬)になるとおしっこの回数が増えるのは普通?
A. 加齢に伴い、腎臓の尿を濃縮する機能が低下したり、膀胱の筋肉が衰えたりするため、おしっこの回数が増える傾向にあります。これはある程度自然な変化ですが、急激に回数や量が増えた場合は、慢性腎臓病や糖尿病などの病気が隠れている可能性もあります。「年のせい」と決めつけず、一度健康診断を兼ねて動物病院で診てもらうことをお勧めします。
Q. おしっこを失敗するようになったのも病気のサイン?
A. はい、病気のサインである可能性が十分にあります。トイレトレーニングができていた犬が急に粗相をするようになった場合、膀胱炎などでトイレまで我慢できない、関節の痛みでトイレの段差が辛い、認知機能の低下、あるいは多飲多尿によるものなど、様々な原因が考えられます。しつけの問題と捉える前に、まずは身体的な異常がないか確認してあげましょう。
まとめ

犬のおしっこは、言葉を話せない彼らからの大切な健康メッセージです。普段から愛犬のおしっこの色や回数、量をチェックする習慣をつけ、「いつもと違う」という小さなサインを見逃さないことが、病気の早期発見・早期治療につながります。
少しでも気になる変化があれば、自己判断せずに、かかりつけの獣医師に相談してくださいね。