【獣医師監修】犬が散歩で歩かない理由は?病気?わがまま?原因別の正しい対処法を徹底解説

楽しかったはずの愛犬との散歩。しかし、突然ぴたりと足を止め、テコでも動かなくなってしまう…。そんな経験はありませんか?「どうしたんだろう?」「わがままかな?それともどこか痛いのかな?」と、飼い主さんとしては心配で困ってしまいますよね。

犬が散歩中に歩かなくなるのには、必ず何らかの理由が隠されています。それは単純な気分かもしれませんし、痛みや病気のサインである可能性も否定できません。

 

この記事では、獣医師の視点から、犬が散歩で歩かなくなる主な理由を多角的に分析し、それぞれの原因に応じた正しい対処法を詳しく解説していきます。

この記事を読めば、以下のことが分かります。

  • 犬が散歩で歩かなくなる、考えられる主な理由
  • 原因が「身体的」「精神的」「環境的」なのかを見極めるヒント
  • それぞれの原因に応じた具体的な対処法
  • 絶対にやってはいけないNG対応
  • 子犬や老犬特有の「歩かない」に関するQ&A

愛犬の小さなサインを見逃さず、原因に寄り添った対応をすることで、また一緒に楽しい散歩の時間を取り戻しましょう。

 

まずはチェック!犬が歩かない時に確認すべきこと

 

愛犬が立ち止まったら、無理にリードを引っ張る前に、まずはその場で愛犬の様子を冷静に観察しましょう。以下の点をチェックしてみてください。

  • 表情:怯えている、痛がっている、つらそうな表情をしていませんか?
  • 呼吸:息が荒い、ゼーゼーしているなど、呼吸に異常はありませんか?
  • 歩き方:特定の足をかばう、びっこを引くなどの様子はありませんか?
  • 体全体:震えたり、どこかを気にしたりしていませんか?
  • 足の裏:肉球にケガはないか、何か刺さったり挟まったりしていませんか?
  • 周囲の環境:何かを怖がったり、気にしたりしていませんか?(工事の音、他の犬、見慣れない物など)

この初期観察が、原因を突き止めるための最も重要な手がかりとなります。

 

犬が散歩で歩かない主な理由【原因別チェックリスト】

 

犬が歩かなくなる理由は、大きく4つのカテゴリーに分けられます。愛犬がどれに当てはまるか考えてみましょう。

 

【身体的な理由】痛みや不快感のサインかも

最も注意が必要なのが、体に何らかの問題が起きているケースです。

  • ケガ:足裏のガラス片や棘、肉球の切り傷や火傷(夏のアスファルト)、爪の割れ、捻挫や骨折など。
  • 関節の痛み:特に関節炎を発症しやすいシニア犬に多く見られます。歩き始めは動くものの、すぐに座り込んでしまうことがあります。
  • 内臓の病気:心臓病や呼吸器疾患があると、少し歩くだけで息切れして動けなくなることがあります。その他、貧血や腫瘍など、様々な病気が原因となりえます。
  • 首輪やハーネスの問題:サイズが合っていなかったり、擦れて痛かったりすると、不快感から歩くのを嫌がることがあります。
  • 疲労:単純に散歩の距離が長すぎたり、運動しすぎたりして疲れているケースです。

 

【精神的・心理的な理由】怖い・行きたくない気持ち

犬の心の問題が行動に現れているケースです。

  • 恐怖や不安:工事の大きな音、トラックやバイク、他の犬や人、過去に怖い思いをした場所など、特定の対象に恐怖を感じて動けなくなります。
  • 散歩コースへの不満:いつも同じコースで飽きてしまったり、逆に知らない道が不安だったりします。
  • 自己主張:「公園にもっといたい」「あっちの道に行きたい」「まだ家に帰りたくない」といった意思表示で立ち止まることもあります。

 

【環境的な理由】周りの環境が不快

人間には快適でも、犬にとっては歩きにくい環境ということがあります。

  • 気温:夏の地面の熱さや厳しい日差し、冬の凍えるような寒さや地面の冷たさは、犬にとって大きな負担です。
  • 天候:雨や雪、強風が苦手な子もいます。
  • 地面の状態:熱いアスファルト、砂利道、濡れた落ち葉など、足裏の感触を嫌がることがあります。

 

【学習による理由】「わがまま」と言われるケース

過去の経験から、「こうすれば良いことがある」と学習してしまっているケースです。

  • 「歩かないと抱っこしてもらえる」
  • 「立ち止まるとおやつがもらえる」

飼い主さんが良かれと思ってした対応が、結果的に「歩かない」という行動を強化してしまっている可能性があります。

 

【原因別】犬が歩かない時の正しい対処法

 

原因の見当がついたら、それぞれに応じた適切な対処をしましょう。

 

身体的な問題が疑われる場合

これは最も緊急性が高いケースです。少しでも様子がおかしいと感じたら、すぐに散歩を中断してください。可能であれば抱きかかえるか、ペットカートなどを利用して帰宅し、動物病院を受診しましょう。特に、以下の症状が見られる場合は、ためらわずに獣医師に相談してください。

  • 明らかに足を痛がっている、地面につけない
  • 呼吸が異常に速い、苦しそう
  • 歯茎や舌の色が白い、または紫色になっている
  • ぐったりして元気がない
  • 震えが止まらない

 

精神的・環境的な問題が疑われる場合

まずは犬を安心させることが第一です。怖がっている対象から速やかに離れ、「大丈夫だよ」と優しく声をかけて落ち着かせてあげましょう。

その上で、以下のような工夫を試してみてください。

  • 散歩コースや時間を変える:犬がリラックスできる道を探したり、交通量の少ない時間帯を選んだりしてみましょう。
  • 気温対策を徹底する:夏は早朝や夜の涼しい時間に、クールグッズを活用。冬は日中の暖かい時間に、防寒着を着せるなどの対策をしましょう。

 

わがまま・自己主張の場合

犬の主張に毎回応えていると、どんどんエスカレートする可能性があります。安全が確保されている場所であれば、毅然とした態度も必要です。

  • 無理に引っ張らず、立ち止まる:リードを張ったまま、犬が自分から歩き出すのを待ちます。歩き出したら、たくさん褒めてあげましょう。
  • おやつや声で誘導する:犬が好きなおやつを見せたり、「行こう!」と明るく声をかけたりして、歩く意欲を引き出してあげます。
  • 要求に応えない:「帰りたくない」という主張の場合は、一度要求に応じずに帰宅し、「飼い主さんが主導権を持っている」ことを教えることも大切です。

 

絶対にやってはいけないNGな対応

 

愛犬が歩かない時、焦りからついやってしまいがちですが、以下の行動は逆効果であり、信頼関係を損なう原因にもなります。

  • 無理やりリードを強く引っぱる:首や気管、足腰に負担をかけるだけでなく、犬にさらなる恐怖と苦痛を与えます。
  • 大声で叱る、怒鳴る:犬はなぜ叱られているか理解できず、飼い主さんや散歩そのものに恐怖心を抱くようになります。
  • 体調不良のサインを無視して歩かせ続ける:病気やケガを悪化させ、命に関わる事態に発展する危険性があります。

 

犬の散歩と「歩かない理由」に関するQ&A

 

Q1. 子犬が散歩を嫌がって歩きません。どうすればいいですか?

A1. 子犬にとって、外の世界は未知で怖いものだらけです。まずは首輪やハーネス、リードに慣れることから始め、家の前や静かな場所で外の空気に触れる練習からスタートしましょう。最初は抱っこ散歩でも構いません。少しでも歩けたらたくさん褒めて、「散歩は楽しいこと」だと教えてあげることが大切です。焦らず、子犬のペースに合わせて進めましょう。

 

Q2. 老犬がすぐに歩きたがらなくなりました。散歩は必要ですか?

A2. 老犬(シニア犬)の場合、体力や筋力の低下、関節の痛みなどが原因で長距離を歩けなくなることがよくあります。しかし、気分転換や適度な刺激は心身の健康維持に重要です。無理に長い距離を歩かせる必要はありません。家の周りを少し歩くだけでも、外の匂いを嗅ぐだけでも良いリフレッシュになります。ペットカートなどを活用し、負担のない範囲で散歩を続けてあげましょう。

 

Q3. いつも同じ場所で動かなくなります。なぜですか?

A3. 特定の場所で立ち止まる場合、その場所に何らかの理由がある可能性が高いです。過去にその場所で怖い経験(例:他の犬に吠えられた、大きな音がした)をしたトラウマが残っているのかもしれません。あるいは、マーキング(おしっこ)の匂いが気になる、好きな匂いがするなど、犬にとって特別な意味を持つ場所である可能性も考えられます。しばらくそのコースを避けてみるのも一つの方法です。

 

Q4. 家に帰りたがらなくて困っています。どう対処すればいいですか?

A4. 「散歩が終わってしまうのが嫌だ」という気持ちの表れです。この場合、散歩の終わりに何か楽しいことを用意しておくのが効果的です。例えば、「家に帰ったら大好きなおやつをあげる」「おもちゃで遊ぶ」など、家へ帰ることへのポジティブなイメージ付けをしましょう。また、散歩コースの最後に犬が特に喜ぶ場所(公園など)を設定するのではなく、家の近くを最後に少し歩くようにコースを工夫するのも有効です。

 

まとめ:歩かない理由に寄り添い、楽しい散歩時間を取り戻そう

 

犬が散歩で歩かなくなる背景には、実に様々な理由があります。それを「わがまま」と決めつけず、まずは「どうして歩きたくないのかな?」と愛犬の気持ちや状態を観察し、寄り添う姿勢が何よりも大切です。

原因を正しく見極め、適切な対応をすることで、問題は解決に向かいます。もし原因が分からなかったり、体調に不安を感じたりした場合は、決して自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談してください。愛犬との散歩が、再びかけがえのない楽しい時間になるよう、応援しています。

 

 

 

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