「愛犬が体をかゆがるのは、もしかして花粉症?」
人間にとって春の風物詩ともいえる花粉症。実は、犬も人間と同じように花粉症になります。しかし、その症状は人間とは少し異なり、飼い主さんが気づきにくいことも少なくありません。
この記事では、犬の花粉症について、その原因、症状、そして飼い主さんができる対処法まで、獣医師監修のもと分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、以下のことが分かります。
- 犬の花粉症の主な原因となる植物
- 人間と犬の花粉症の症状の違い
- 花粉症になりやすい犬種と特徴
- 愛犬の花粉症が疑われるときのチェックポイント
- 自宅でできる具体的な花粉症対策
愛犬の「かゆみ」のサインを見逃さないために、ぜひ最後までお読みください。
犬の花粉症|原因とアレルギー反応の仕組み
犬の花粉症は、特定の植物の花粉に体が過剰に反応することで起こるアレルギー性疾患です。正式には「アレルギー性皮膚炎」の一種として診断されることが一般的です。
主な原因となる植物
犬の花粉症は、季節によって飛散するさまざまな花粉が原因となります。特に以下の植物の花粉にアレルギー反応を起こしやすいとされています。
- イネ科(カモガヤ、オオアワガエリなど):春から秋にかけて飛散します。公園や河川敷など、身近な場所に多く生えています。
- ブタクサ(キク科):夏から秋(8〜10月)にかけて飛散します。空き地や道端でよく見られます。
- スギ・ヒノキ:春(2〜4月)に大量に飛散し、人間と同様にアレルギーの原因となります。
- シラカバ・ハンノキ:主に春に飛散します。
犬の場合は、人間よりもイネ科やブタクサといった草花の花粉が原因となるケースが多いのが特徴です。
なぜ花粉でアレルギーが起こる?
アレルギーは、本来無害な物質(花粉など)を体が「異物」と認識し、過剰に排除しようとすることで起こる免疫反応です。花粉が皮膚や粘膜に付着すると、体内の免疫細胞が「抗体」を作り出します。
この抗体が特定の細胞と結びつき、ヒスタミンなどの化学物質を放出し、かゆみや炎症といったアレルギー症状を引き起こすのです。
犬の花粉症で見られる主な症状
人間がくしゃみや鼻水、目の痒みといった呼吸器症状が中心なのに対し、犬の花粉症は皮膚症状がメインとなります。
以下のような症状が、特定の季節に毎年決まって現れる場合は、花粉症が強く疑われます。
皮膚症状
- 体を激しくかゆがる:特定の部位だけでなく、全身をかゆがる、床や壁に体をこすりつける。
- 皮膚の赤みや発疹:特にお腹、脇の下、内股、指の間などが赤く炎症を起こします。
- 執拗になめる・噛む:かゆみを感じる手足の指の間や股間などを、繰り返しなめたり噛んだりすることで、皮膚が黒ずんだり、被毛が変色したりします。
- 脱毛:かゆみによる過剰なグルーミングや掻きむしりによって、部分的に毛が抜け落ちる。
その他の症状
- 目の症状:目の充血、目やにの増加、涙を流す、目をこする。
- 耳の症状:耳をかゆがる、頭を振る、耳の内側が赤くなる(外耳炎)。
- 呼吸器症状:くしゃみ、鼻水、咳が出ることも稀にあります。
これらの症状は、食物アレルギーやノミ・ダニといった他のアレルギー性疾患と似ているため、自己判断せずに獣医師の診断を受けることが重要です。
花粉症になりやすい犬種と自宅での対策
犬の花粉症は、アレルギー体質を持つ犬種に発症しやすい傾向があります。しかし、どんな犬種でも花粉症になる可能性はありますので、注意深く観察しましょう。
花粉症を発症しやすいと言われる犬種
以下の犬種は、遺伝的にアレルギー体質を持つことが多いため、花粉症になりやすいと考えられています。
- 柴犬
- シーズー
- パグ
- フレンチ・ブルドッグ
- ゴールデン・レトリーバー
- ウエストハイランド・ホワイトテリア
- ラブラドール・レトリーバー
飼い主さんができる花粉症対策
花粉症は完治が難しい病気ですが、適切な対策で症状を緩和し、愛犬のつらさを軽減することができます。
1. 花粉との接触を避ける
花粉の飛散量が多い時間帯(特に昼前後や日没後)や、草むらが多い場所のお散歩を避けましょう。お散歩の際は、洋服を着せることで被毛への花粉の付着を減らすことができます。
2. 花粉を家の中に持ち込まない
お散歩から帰ったら、家に入る前に玄関先でブラッシングしたり、濡れタオルやウェットシートで体を拭いてあげたりして、花粉を徹底的に除去しましょう。静電気防止スプレーも効果的です。
3. 定期的なシャンプー
定期的にシャンプーをして、被毛や皮膚に付着した花粉を洗い流します。ただし、頻繁なシャンプーは皮膚のバリア機能を低下させる恐れがあるため、獣医師に相談して頻度やシャンプー剤を決めましょう。シャンプー後は、保湿ケアを忘れずに行ってください。
4. 室内環境を清潔に保つ
空気清浄機の活用や、こまめな掃除機がけ、拭き掃除で室内の花粉を減らしましょう。花粉の飛散時期は、窓を大きく開けすぎない、洗濯物は室内干しにするなどの工夫も有効です。
こんなときは病院へ!受診の目安
花粉症の症状は、掻きむしることによって皮膚炎を悪化させたり、細菌感染を引き起こしたりする可能性があります。以下のような症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
- かゆみがひどく、夜も眠れていない様子がある
- 皮膚がただれて、出血や膿が出ている
- 元気や食欲がない、熱がある
- 呼吸が苦しそう、咳き込みが続く
獣医師は問診や皮膚検査、アレルギー検査などを行い、症状の原因を特定してくれます。かゆみを抑える内服薬や注射薬、症状の緩和に役立つ薬用シャンプーなどが処方されることもあります。
犬の花粉症に関するよくある質問
Q1. 子犬や老犬でも花粉症になりますか?
はい、年齢に関係なく発症する可能性があります。特に免疫機能が未発達な子犬や、免疫力が低下している老犬は注意が必要です。
Q2. 花粉症の症状は一年中出ますか?
花粉症の場合、症状は花粉が飛散する特定の季節に現れるのが特徴です。ただし、複数の花粉にアレルギーを持つ場合は、ほぼ一年中症状が出ることもあります。
Q3. アレルギー検査は受けた方がいいですか?
はい、アレルギー検査を受けることで、何の花粉にアレルギー反応を起こしているかを特定でき、より効果的な対策を立てることができます。また、他のアレルギーとの鑑別にも役立ちます。
Q4. 人間の薬を犬に与えても大丈夫ですか?
絶対に与えないでください。人間の薬は犬の体に合わない成分が含まれていたり、用量が異なったりするため、中毒症状を引き起こす危険性があります。必ず獣医師の指示に従ってください。
Q5. 病院での治療費はどれくらいかかりますか?
治療内容や動物病院によって異なりますが、初診料や検査費用、お薬代を含めると数千円から数万円かかる場合があります。症状が慢性化すると定期的な通院が必要になることもあります。
まとめ
犬の花粉症は、人間とは異なる皮膚症状がメインとなるため、飼い主さんが気づきにくい病気です。しかし、愛犬のつらいかゆみや不快感は、放置するとストレスや別の病気を引き起こす原因にもなり得ます。
「この時期になると体をよくかゆがる」「皮膚が赤い気がする」といった愛犬からのサインを見逃さず、少しでも気になることがあれば、早めに動物病院に相談しましょう。適切な診断とケアによって、愛犬は季節の変わり目を快適に過ごせるようになります。