犬のマダニ対策【獣医師監修】|症状・見つけ方・正しい駆除と予防法

愛犬との散歩から帰宅した際、被毛に小さな虫が付いていたり、皮膚にしこりを見つけたりしたことはありませんか?その正体は、もしかしたらマダニかもしれません。

マダニは、ノミと異なり体長が数ミリと比較的大きく、吸血すると1cm近くまで膨れ上がります。見た目の不快感だけでなく、様々な病原体を媒介し、犬だけでなく人間にも深刻な被害をもたらす危険な寄生虫です。

この記事では、「犬 マダニ」と検索する飼い主さんのために、マダニの生態から、見分け方、そしていざという時に慌てないための対処法まで、獣医師監修のもと分かりやすく解説します。

 

この記事を読めば、以下のことが分かります。

  • マダニが媒介する危険な病気の種類とリスク
  • マダニが潜んでいる場所と犬に付着しやすい部位
  • 犬にマダニが付いた場合の正しい対処法
  • 動物病院で処方される予防薬の種類と選び方
  • マダニ対策の具体的な予防方法

 

犬のマダニが媒介する危険な病気とは?

 

マダニは、ただ血を吸うだけでなく、ウイルスや細菌、原虫を媒介し、以下のような致死的な病気を引き起こすことがあります。これらの病気は、犬と人どちらにも感染する「人獣共通感染症」であることも多いため、非常に注意が必要です。

  • 犬バベシア症:マダニが犬バベシアという原虫を媒介し、貧血や発熱を引き起こします。重症化すると死に至ることもあります。
  • 重症熱性血小板減少症候群(SFTS):SFTSウイルスを媒介するマダニに咬まれることで感染します。致死率が非常に高く、有効な治療法やワクチンがありません。犬から人への感染事例も報告されており、最も警戒すべき病気の一つです。
  • ライム病:ライム病ボレリアという細菌を媒介します。発熱、食欲不振、関節炎などの症状が見られます。
  • 日本紅斑熱:リケッチアという細菌を媒介します。人では高熱や発疹が見られます。

これらの病気は、初期症状が見られないことも多く、気づいた時には手遅れというケースも少なくありません。マダニ対策は、病気になってからではなく、予防が何よりも重要です。

 

マダニはどこにいる?犬に付着しやすい場所

 

マダニは、森や林だけでなく、意外と身近な場所に潜んでいます。以下のような場所に行く際は、特に注意が必要です。

  • 公園の植え込みや草むら
  • 庭や畑
  • 河川敷
  • 山や森林

マダニは草木の先端に潜んで動物が通るのを待ち伏せ、飛び移って寄生します。特に、マダニが活発になる春から秋にかけては、犬をむやみに草むらに入らせないようにしましょう。

また、吸血前のマダニは3mmほどと小さく、見つけにくいです。しかし、犬の体に一度付着すると、皮膚の柔らかい場所や毛の薄い場所を選んで吸血します。以下の場所を重点的にチェックしましょう。

  • 目の周り、鼻の周り、耳
  • 胸やお腹、内股
  • 指の間やお尻の周り

マダニは吸血すると体が膨らんで硬いイボのようになるため、散歩から帰ったら指の腹で犬の体をなぞるように触って、普段はないしこりや出っ張りがないか確認する習慣をつけましょう。

 

犬にマダニが付いてしまったら?正しい駆除方法

 

犬の体にマダニを見つけても、焦って無理やり引き抜いてはいけません。以下の理由から、自分で無理に取ろうとせず、動物病院を受診することをお勧めします。

  • 感染のリスク:マダニの体を潰してしまうと、体内の病原体を含んだ液体が犬の体に逆流し、感染リスクを高めてしまいます。
  • 口器が残る:マダニの口器は、皮膚にしっかり食い込んでいます。無理に引き抜くと、口器だけが皮膚の中に残ってしまい、化膿や炎症を引き起こす可能性があります。

マダニを見つけた場合は、テープなどで付着した部分を覆い、動物病院へ連絡しましょう。獣医師は専用の器具を使って、安全にマダニを取り除いてくれます。その後、マダニが媒介する病気の潜伏期間を考慮し、経過観察や必要に応じて検査を行います。

 

マダニの予防法:最も確実な対策

 

マダニに寄生されてから対処するのではなく、寄生されないように予防することが最も重要です。以下の対策を組み合わせることで、愛犬をマダニの危険から守ることができます。

 

1. マダニ予防薬の定期的な投与

これが最も効果的で確実な予防法です。マダニ予防薬は動物病院で処方される専門薬で、1回の投与で約1ヶ月間、マダニを犬に付着させない、あるいは付着してもすぐに死滅させる効果があります。

予防薬には以下のようなタイプがあります。愛犬の性格やライフスタイルに合わせて獣医師に相談して選びましょう。

  • スポットタイプ(滴下タイプ):首筋に滴下する液体タイプです。
  • チュアブルタイプ(おやつタイプ):おやつ感覚で与えられるタイプです。
  • 経口タイプ(錠剤):フードと一緒に与える錠剤タイプです。

マダニの予防は、気温が上がる春から秋だけでなく、通年行うことをお勧めします。特に雪が降らない地域では、冬でもマダニが活動している可能性があります。

 

2. 日常的な対策

  • 散歩コースに注意する:草むらや藪の中など、マダニが潜んでいそうな場所は避けて散歩しましょう。
  • 帰宅後のチェック:散歩から帰宅したら、ブラッシングを兼ねて全身を撫で、マダニが付いていないか丁寧にチェックしましょう。
  • 室内環境を清潔に保つ:マダニの成虫だけでなく、卵や幼虫、サナギが室内に持ち込まれる可能性もあります。こまめな掃除機がけや洗濯で、清潔な環境を保ちましょう。

 

よくある質問(Q&A)

ここでは、犬のマダニに関して飼い主さんからよく寄せられる疑問にお答えします。

Q1:市販のノミ・マダニ対策グッズでも大丈夫ですか?
A:市販薬は効果が弱かったり、犬の体に合わなかったりするリスクがあります。特に、マダニが媒介する病気を予防するには、動物病院で処方される専門薬が最も効果的で安全です。

 

Q2:マダニに刺されたら、必ず病気になりますか?
A:必ずしも病気になるわけではありませんが、リスクは常にあります。マダニは吸血してから約24時間以上経過すると病原体を媒介する可能性が高まります。早期に発見し、適切に対処することが重要です。

 

Q3:なぜマダニ予防薬は通年投与が必要なのですか?
A:冷暖房の普及により、マダニは冬でも室内に潜んで活動することがあります。また、気候変動により冬でも暖かい日が増えたため、屋外でも一年中活動している可能性があります。確実な予防のためには、通年投与が推奨されています。

 

Q4:犬がマダニに刺された後、どのような症状に注意すべきですか?
A:食欲不振、元気がない、ふらつき、貧血による歯茎の蒼白、発熱などが見られた場合は、すぐに動物病院を受診してください。これらの症状は、マダニが媒介する病気のサインである可能性があります。

 

【まとめ】マダニは「予防」で愛犬と家族を守る

 

マダニは、犬に激しいかゆみや皮膚炎を引き起こすだけでなく、犬や人間の命を脅かす危険な病気を媒介する恐れがあります。

最も確実な対策は、マダニに寄生されてから慌てるのではなく、定期的な予防薬の投与を習慣にすることです。日々の散歩コースに気をつけ、帰宅後のチェックも忘れずに行いましょう。マダニの脅威から愛犬とご家族の健康を守るために、ぜひ予防を徹底してください。

 

 

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