愛犬が口をあけているとき、ふと舌の色が気になったことはありませんか?
犬の舌は、体温調節をするだけでなく、実は健康状態を判断するための大切なバロメーターです。しかし、犬は口元を触られるのを嫌がることも多いため、異変に気づきにくいこともあります。
この記事では、犬の舌の色からわかる健康状態について、健康な色と注意が必要な色、そしてそれぞれから考えられる病気や対処法まで、獣医師監修のもと詳しく解説します。
この記事を読むことで、以下のことが分かります。
- 健康な犬の舌の色と、日頃からチェックするべきポイント
- 舌の色が示す病気のサイン(青紫色、白色、赤色など)
- 舌にできものや斑点がある場合の注意点
- 舌の色に異変を感じたときの具体的な対処法
- 犬の舌に関するよくある質問
愛犬の舌の色を定期的にチェックする習慣を身につけて、病気の早期発見に役立てましょう。
健康な犬の舌の色とチェックのポイント
健康な犬の舌の色は、一般的にきれいなピンク色です。これは、健康な血液が全身を巡っている証拠です。
ただし、中には舌に黒っぽい斑点(まだら模様)がある犬もいます。これは「舌斑(ぜっぱん)」と呼ばれる生まれつきの色素沈着で、病気ではありません。しかし、今までなかった黒い斑点ができたり、急に大きくなったり、盛り上がったりした場合は、腫瘍の可能性も否定できないため、注意深く観察しましょう。
日頃から愛犬がリラックスしているときに優しく口を開けて舌の色をチェックし、健康な状態の舌の色を覚えておくことが大切です。
要注意!舌の色でわかる病気のサインと原因
犬の舌の色が、健康なピンク色から変化している場合、何らかの病気や体調不良のサインである可能性があります。
1. 舌が「青紫色」のとき:チアノーゼ(酸欠状態)
舌や歯茎、口の中の粘膜が青紫色になっている状態を「チアノーゼ」と呼びます。これは、血液中の酸素が不足している緊急性の高いサインです。
考えられる原因:
- 心臓疾患:心臓がうまく機能せず、全身に酸素を十分に送れない状態
- 呼吸器疾患:肺炎、気管虚脱、気管支炎などにより、肺や気管に異常がある状態
- 熱中症:重度の熱中症で体温調節機能が破綻している状態
チアノーゼが見られた場合は、一刻を争う事態です。すぐに動物病院に連絡し、指示を仰ぎましょう。
2. 舌が「白っぽい色」のとき:貧血
舌の色が白っぽく、血の気が引いたように見える場合は、貧血を起こしている可能性があります。
考えられる原因:
- 出血:消化管からの出血(胃潰瘍、腫瘍など)や外傷による出血
- 溶血性貧血:免疫系の異常により、血液中の赤血球が破壊されてしまう病気
- 腫瘍:脾臓や腎臓などの臓器にできた腫瘍からの出血
貧血は、重症化すると命に関わるため、舌だけでなく、歯茎や目の粘膜も白っぽくないか確認し、早めに動物病院を受診してください。
3. 舌が「赤みが強い色」のとき:炎症や発熱
舌が健康なピンク色よりも全体的に赤く、腫れているように見える場合は、発熱、脱水、炎症などが考えられます。
考えられる原因:
- 熱中症:体温が急激に上昇し、舌が赤くパンティング(舌を出してハァハァと呼吸)が激しくなる
- 口内炎や歯周病:口の中の細菌感染による炎症
- 感染症:細菌やウイルスによる全身性の感染症
4. 舌に「しこりやただれ」があるとき:腫瘍や膿疱
舌に、今までなかったしこりやただれ、潰瘍(かいよう)が見られる場合は、腫瘍(がん)や膿疱(のうほう)の可能性があります。
- 舌にできる腫瘍は、悪性腫瘍(メラノーマ、扁平上皮癌など)である可能性が高く、早期発見・早期治療が非常に重要です。
- 膿疱は、舌の裏側にできる水ぶくれのようなもので、唾液腺が詰まることで生じます。
舌のしこりやただれは、見た目の変化が分かりやすい危険なサインです。気づいたらすぐに動物病院に相談しましょう。
舌の色に異変を感じたときの対処法
愛犬の舌の色に異変を感じたときの対処法は、その状態によって異なります。
【緊急性の高い場合】
舌が青紫色になっている、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、けいれんしているなどの症状がある場合は、すぐに動物病院へ連絡し、指示を仰いでください。
【緊急性が低い場合】
舌の色がいつもより少し白っぽい、赤い、といった軽度の変化で、愛犬に元気や食欲がある場合は、まずは落ち着いて他の症状がないか観察しましょう。食欲不振、下痢、嘔吐、咳などの症状を伴う場合は、念のため動物病院を受診することをおすすめします。
受診する際は、舌の色に気づいた時期、他に気になる症状、食欲や飲水量の変化などを獣医師に正確に伝えられるようにメモしておきましょう。
犬の舌の色に関するよくある質問
Q1. 舌の色が黒い犬は健康じゃないですか?
いいえ、犬種によっては生まれつき舌に黒い斑点(舌斑)がある場合があります。チャウチャウやシャーペイなどは舌全体が紫色をしています。大切なのは、日頃から愛犬の健康な舌の色を把握しておくことです。
Q2. 舌の色を毎日チェックするべきですか?
はい。散歩から帰った後など、愛犬がリラックスしているタイミングで、優しく口元をチェックする習慣をつけることをおすすめします。数秒でできるので、習慣化してみましょう。
Q3. 舌が青紫色になったら、自宅でできる応急処置はありますか?
応急処置をしようとせず、すぐに動物病院へ連絡することが最優先です。無理に触ると愛犬が興奮し、さらに呼吸状態が悪化する可能性があります。落ち着いて速やかに病院へ向かう準備をしましょう。
Q4. 舌の色以外に、健康状態をチェックするポイントはありますか?
はい。舌の色に加えて、歯茎や目の粘膜の色(健康ならピンク色)、呼吸の速さや深さ、食欲、飲水量、排泄物の状態なども一緒にチェックすることで、愛犬の健康状態をより正確に把握することができます。
まとめ
犬の舌の色は、病気のサインを見つけるための重要な手がかりです。特に、舌が青紫色になっている場合は、命に関わる緊急事態である可能性が高いため、一刻も早く動物病院に相談してください。
日頃から愛犬の健康な舌の色を把握し、少しでも「いつもと違う」と感じたら、迷わず獣医師に相談することが、愛犬の命を守る最善の行動です。