獣医師
島田 真美
ペット栄養管理士 / NRサプリメントアドバイザー / 帝京科学大学非常勤講師
こんにちは島田です。
「最近、よく咳をしているな」
「遊んでいてもすぐに疲れるみたい」
もし、このように感じることが増えているならば、僧帽弁閉鎖不全症の可能性が否定できません。早めに動物病院を受診し、検査をすることをおすすめします。
今回は僧帽弁閉鎖不全症の診断方法から、治療方法、予防方法までを詳しく解説していきます。
僧帽弁閉鎖不全症の診断方法
僧帽弁閉鎖不全症は聴診で心雑音を確認した場合に、必要に応じて精密検査をおこない診断します。
▶ 胸部レントゲン検査
▶ 心臓超音波検査
▶ 血圧測定
▶ 心電図検査
胸部レントゲン検査では、胸部全体の確認と心臓の大きさ形状、肺の状態に異常がないか、水が溜まっていないかなどを確認します。
心臓超音波検査では、心臓の動き方や血液の流れなどをリアルタイムで確認することができます。
また、心臓機能を調べるために血圧測定や心電図検査をおこないます。
検査内容は病院によって異なる場合もありますので、詳しくは獣医師と相談してください。
僧帽弁閉鎖不全症の治療
僧帽弁閉鎖不全症の治療には、内科治療と外科手術があります。一般的には内科治療がおこなわれます。
■内科治療
内科治療の目的は症状を抑えて進行を遅らせることにあります。そのため、病気の進行に合った薬を生涯にわたって飲みつづけることになります。
初期では、治療の必要はないとされていますが、一方では初期から投薬をはじめたほうが長生きできるというデータもあるようです。
中期には、心臓の働きを助ける強心剤や、血管を拡張し心臓の負担を減らす血管拡張薬といった薬を投薬します。
末期になると肺に水がたまる肺水腫を頻繁に起こすようになります。肺に水が溜まると苦しいですから、少しでも楽になるように、利尿剤を投与して肺にたまった水を尿として排出させる治療をおこないます。動物病院に入院して治療をおこなうのが基本です。
■外科手術
外科手術では、変性した僧帽弁を修復するため僧帽弁形成術をおこないます。非常に高価であること、再手術が必要になる場合もあることなどから、ほとんどおこなわれていません。
また、施術ができる施設も限られています。
もし、手術を希望する場合は適応になるかも含めて獣医師とよく相談しましょう。
僧帽弁閉鎖不全症の予防方法
残念ながら僧帽弁閉鎖不全症の予防法はありません。定期的に健康診断を受け、必要に応じて検査をおこないましょう。
心臓疾患がある場合、塩分の排泄がうまく行われず、塩分とともに水分が体に貯留して、むくみや肺水腫、腹水などの症状を悪化させてしまいます。心臓の負担を軽減するためには、塩分を制限することが必要になってきます。健康な状態の時から、過剰な塩分の摂取を控えることで、心臓疾患になった時の塩分制限食を受け入れやすくなります。また、肥満も心臓への負担を増やす要因になりますので、太らせないように気を付けてあげることも大切です。
また、日頃から愛犬の様子を観察し、以下のような様子が見られたら獣医師に相談することをおすすめします。
● 以前よりも遊ばなくなった
● 疲れやすくなった
● 咳が出るようになった
【まとめ】
僧帽弁閉鎖不全症はなるべく早い段階で病気を発見し治療をはじめることが重要です。予防法もなく、初期では気づくのが難しいため、早期発見には定期的な健康診断が欠かせません。