獣医師
島田 真美
ペット栄養管理士 / NRサプリメントアドバイザー / 帝京科学大学非常勤講師
こんにちは島田です。
初めて犬を飼う人も、すでに飼っている人も、大事な愛犬にはできるだけ健康で、長生きして欲しいと願っている人は多いですよね。
そういう人の中には、
「犬が健康でいられるためには、家でどんなケアをしたほうがいいのかな・・・」、
「犬が健康な状態って、どういう状態なのだろう?」
と悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
犬は人間と違って言葉を話せないので、飼い主さんが体調不良に気づいてあげるのはとても難しそうですよね。
そこで今回は、犬の健康チェックするべき8つのポイントと、どんな点に気を付けてチェックすればいいのかを解説していきます。
【ポイント①耳をチェックする】
● 耳がくさくないか
● 耳が赤くなっていないか、耳に傷がないか、耳が汚れていないか
● 何度も後ろ足で耳をひっかくなど、痒がっていないか
● しきりに頭を振っていないか
耳の状態がアトピーやアレルギー症状の一部として現れている場合もあります。
耳の病気は、耳の中に毛がたくさん生えているプードル、マルチーズなどや「たれ耳」の犬種のゴールデンレトリーバーなどでは、耳が蒸れやすく細菌感染症を起こすことがあります。定期的に耳掃除をして清潔にしてあげることが大切です。
症状がひどい場合は、動物病院を受診しましょう。
【ポイント②目をチェックする】
● 白目が赤くなっていないか
● 普段より目ヤニが多くないか
● 涙が出ていないか
● 目を痒がっていないか
● 黒目の奥が白っぽく見えないか
● 白目が黄色っぽくなっていないか
犬も人間と一緒で、朝起きたときに目ヤニが出たり、目にゴミが入った時に涙が出ることはよくありますので、一時的なものは心配しなくて大丈夫です。
しかし、ずっと涙が出続けている、明らかに目が赤い、などの場合は結膜炎や、細菌に感染している場合もあるので、獣医師さんに診てもらいましょう。
肝臓に異常があった場合には白目が黄色くなる(黄疸)こともあるので、できるだけ早く動物病院へ行ってみてもらいましょう。
【ポイント③口をチェックする】
● 歯茎が赤い・腫れていないか
● 口臭がひどくないか
● 歯垢・歯石が付いていないか
● 粘膜の色が白っぽくないか(貧血)、黄色くないか(黄疸)、青紫っぽくないか(チアノーゼ)
歯石がついてないのに口臭がひどく臭う場合は、腎臓や肝臓などの臓器の病気のサインの場合もあるので、獣医師さんに診てもらうことおすすめします。
犬の歯を健康に保つことは、長生きの秘訣です。犬用の歯ブラシや、人間の子供用の歯ブラシで、なにもつけずに優しくブラッシングしてあげると歯周病予防効果があります。
残念ながら歯磨きを嫌がる子はとても多いですよね。どうしても歯磨きをさせてくれない場合は、歯磨きになるおもちゃなどで一緒に遊んであげる方法もあります。色々試してみて、その子に合う歯磨きの方法を探しましょう。また、犬に歯磨きをするときは人間の歯歯磨き粉は絶対に使わないようにしてください。
歯茎や口腔粘膜、舌の色から貧血や黄疸、あるいは緊急性の高い呼吸不全などがわかる場合もあります。
【ポイント⓸鼻・呼吸の状態をチェックする】
● 鼻がほどよく湿っている(極度にカサカサしていない)
● 咳やくしゃみ・鼻水がでていないか
● 呼吸回数が多くなっていないか
● 涼しい場所でも呼吸が荒くないか
● 体全体を使った努力呼吸をしていないか
犬も人間と同じようにくしゃみや鼻水が出ることはよくありますし、鼻が乾燥しているのも一時的なものはそこまで心配しなくて大丈夫です。
気を付けたいのは、ぐったりしている時です。そのような場合は、呼吸困難を起こしていて緊急性が高いため、すぐに獣医師さんに診てもらいましょう。
【ポイント⑤体全体のチェックをする】
<標準的な体型かどうか見極める方法>
犬の肥満は様々な病気の原因になります。犬の理想的な体型かどうかを判断するチェックポイントは、
● 触ってみて適度な脂肪の下に肋骨がわかる
● 横から見て、お腹がたれてない
● 上から見てゆるやかなくびれがわかる
という状態です。犬種によって骨格が細い犬、骨格ががっしりした体系の犬、毛深い犬など様々ですが、基本的に「優しく触ってみて適度な皮下脂肪の下に肋骨が触れるかどうか」をチェックするのがポイントです。
<皮膚ガンやできものがあるかチェック>
● フケが出ていないか、毛が抜けていないか、湿疹がないか
● 体にかさぶたや、イボ・新しいできものがないか
● 体が臭くないか
● 体を痒がる素振りがないか
犬の病気には皮膚の病気もあります。ダニ、ノミなど外部寄生虫によって体がかゆくなることもあります。
日ごろからよくなでてあげて、体に異常がないかチェックしましょう。
チェックする時はできるだけ足の裏・指の間や首輪の下などの見えない部分も念入りにチェックしましょう。爪を切るついでやシャンプーのついでにチェックするのもいいですね。
異常があった場合は、動物病院で適切な治療をしてもらいましょう。
【ポイント⑥食欲・きちんと水分を取っているか観察する】
<食欲がないのか、好き嫌いなだけか確認しよう>
● 一日中ご飯を食べようとしない
● あきらかにぐったりしている
● 吐き戻してしまう。
● 水を飲まない
犬にもグルメな子、食べるのが好きな子、食べることにあまり興味がない子・・・と、色々な性格の子がいます。
いままでよく食べていたフードなのに、急に飽きて食べなくなってしまうこともあります。
ですが、普段よく食べる子が急に食べなくなってしまうのは、病気のサインの可能性も高いので、1日以上全く食べるそぶりがない場合は、できるだけ早く獣医師さんに診てもらいましょう。
<意外と多い脱水症状に陥るワケ!>
成犬になっても犬用のミルクを与えていたり、スープなどの味のついた液体を美味しいと覚えてしまうと、「お水を飲まなければもっとおいしいものがもらえる」というわがままになってしまう場合があります。
健康な場合は水分補給をしないからと心配して、スープなどをすぐに与えるのではなく、あえてお水だけ用意して、様子を観ましょう。しばらくすれば、のどが渇いてお水を飲みますよ。また、普段からどのくらいの量のお水を飲んでいるのかよく観察するようにしましょう。
元々水分摂取量の少ない子では、フードをドライタイプからウェットタイプに変えるという方法もあります。
【ポイント⑦排泄の状態をチェックする】
● 便がゆるくないか
● 血が混じっていないか
● 便秘じゃないか
● おしっこの量や頻度が多い/少ない
● おしっこに血が混じっている(メスの生理時を除く)
尿に異常があるときは膀胱炎や尿路結石、腎臓の病気の可能性があるので、できるだけ早く獣医師さんに診てもらいましょう。
沢山水を飲んで、たくさん尿をする場合は、腎臓病のほか糖尿病の可能性もあります。
犬もストレスやアレルギー、感染症や食べ物が合わずに下痢をすることがあります。嘔吐や下痢が続くと急激に脱水したり、ミネラルバランスが崩れることもあるので、早めに受診するようにしましょう。
便秘も、ただ便が出ないのか、何か詰まって出てこないという場合もあるので動物病院で診てもらうようにしましょう。
【ポイント⑧普段と違う行動をしていないか?】
● 散歩を急に嫌がるようになった、散歩の途中で失神する
● 壁や家具にぶつかる
● 手足が震えている
● ぐったりしている
● 立ち上がれない
● 意識がはっきりしない/失禁する
意識がもうろうとしている、失禁した時は緊急性が高いのですぐに獣医師さんに診てもらいましょう。
普段は散歩が大好きなのに、急に嫌がるのは何かの病気のサインかもしれません。無理に歩かせることはせず、少し様子を観ましょう。
寒さやストレス以外で手足が震える、うまく歩けないような状態は、脳や神経の病気が隠れている可能性があります。また、老犬の場合壁や家具にぶつかるのは視力の低下や認知症のサインかもしれません。
【犬の健康チェックは普段からのスキンシップが大事】
<どこを触っても怒らない子にしよう>
これまでにご紹介してきた健康チェックのポイントでは、犬が触られるのを嫌がるような場所もよく観察することが必要になりますよね。ですから、普段から色々なところを優しくなでてあげて、犬がどこを触られても嫌じゃないという状態にしてあげることが大切です。
犬は飼い主さんの愛情をしっかり理解できる知能がありますので、普段から声掛けをしたり、スキンシップを取って、信頼関係を築いていくことが健康への第一歩です。
<飼い主の思い込みは病気を呼び寄せると心得よう>
「うちの子はいつも元気いっぱいだから、病気はしていない」などと楽観的になっていませんか?
犬は言葉を話せないので、病気の症状が出てからでは手遅れになってしまう可能性があります。
健康チェックを毎日の習慣にするためには、一日に無理やり全部のチェックをしなければなどと気張らずに、日々のスキンシップや犬と遊びながらチェックしていくことが大切です。
【まとめ】
愛犬は大切な家族の一員ですから、できるだけ長生きして、いつまでも一緒にいてほしいですよね。そのためには、飼い主さんが自分の思い込みや主観ではなく、きちんとした健康チェックや病気の予防をしてあげることがとても大切です。
私も過去に、愛犬を撫でていた時に首輪の下にあるできものを発見し、念のため獣医さんに診てもらったところ、皮膚ガンだったことがありました。早期発見できたことにより、12歳になった今でも元気に過ごしていますよ!
今回ご紹介した犬の健康チェックのポイントをまとめると、
● 耳・口・鼻・体全体をしっかりチェックする
● 食欲・排泄などの行動も普段からよく観察する
● 愛犬が健康でいられるかどうかは飼い主次第!
ということを中心にご紹介してきました。
犬は言葉を話せないので、どこが痛いか、どこに違和感があるかは飼い主さんがしっかり見てあげることが必要です。
大切な愛犬がいつまでも健康に楽しく過ごせるように、今日からポイントをしっかり押さえて健康チェックを毎日の習慣にしてみてくださいね。