獣医師
島田 真美
ペット栄養管理士 / NRサプリメントアドバイザー / 帝京科学大学非常勤講師
こんにちは島田です。
歳をとれば体のさまざまな部分に問題が起きます。犬の目も例外ではありません。
犬は目があまりよくないと言われますが、だからと言って目が見えなくても平気なわけではありません。視力が落ちれば生活の質も落ちてしまいます。
今回は、犬の目が悪くなる原因や、視力が低下した犬に見られるサインについて詳しく解説します。
犬の視力はどれくらい?
犬の視力は人間で言うと0.2〜0.3程度です。また、色を識別する能力も低いこともあって、一般的には「犬は目が悪い」と思われています。
その一方で、犬は遠くのものや動くものを認識する能力が高いです。
たとえば、シェパードは800m先にある動くものを認識できるという実験結果が残されていますし、訓練された牧羊犬は1500m先にいる人が出す合図を認識すると言います。
犬の視力が衰える原因とは
犬の視力が低下する原因は、おもに老化と病気です。
視力低下の原因となる病気には以下のようなものがあります。
・緑内障
・白内障
・進行性網膜萎縮
・ブドウ膜炎
これら以外にも、糖尿病などが目の病気の引き金になることや、眼球の傷や炎症によって視力が低下する場合もあります。
視力が低下した犬に見られるサイン
視力が低下して目が見えづらくなると、犬の行動は徐々に変化していきます。それは視力が落ちた犬が飼い主さんに伝えてくれるサインです。
ここではどんなサインがあらわれるのかを説明します。
■ 人や物などにぶつかる、つまづく
目が見えづらくなると、人や家具などの物にぶつかったり、段差でつまずいたりしやすくなります。
とは言え、視覚以上に聴覚や嗅覚に優れた犬は、慣れた家の中では普通に生活できるので、いっしょに暮らしていても気づかないことも多いです(ただし、行動範囲が知らないうちに狭まっていることもあります)。
もし、人や椅子などの場所が一定でない物にぶつかったり、散歩中にぶつかったり、つまづいたりすることが増えたら注意が必要です。
■ 散歩に行きたがらない
視力が低下した犬は、散歩に行きたがらなくなる傾向があります。
音や匂いを記憶と照らし合わせて自分のいる場所がつかみやすい家の中と違って、家の外は記憶が当てにならないシーンが多くなるため、散歩が怖くなるからだと考えられます。
もし、愛犬が元気そうなのに散歩に行きたがらないのであれば、視力が落ちて外に出るのを不安に感じている可能性があるでしょう。
■ 音に過敏になる
人間でも同じですが、犬も視力が落ちた分を補うために聴覚が鋭敏になることがあります。視力が低下する前に比べて音に対する反応が過敏になるのです。
以前は気にしなかった小さな音に対して、急に吠えたり落ち着きをなくしたり、あるいはびっくりしたりする機会が増えます。
■ 匂いチェックの時間が長くなる
聴力と同様、犬は嗅覚でも落ちた視力を補おうとします。
もともと犬は多くの情報を匂いから得ていますが、目が悪くなると嗅覚によって物を識別します。そのため、目が悪くなる前に比べて匂いをチェックする時間が長くなるのです。
もし、愛犬の匂いチェックの時間が以前よりも長くなった、念入りになったと感じたら、視力の低下を疑いましょう。
【まとめ】
老化によって目の機能が弱くなること、病気などで視力が低下するのは犬にとっても自然なことです。
早い段階で愛犬の目の衰えや目の病気に気づいて対処してあげられれば、視力の低下を最小限に食い止められるかもしれません。
そのためにも、愛犬が出すサインを見過ごすことのないように注意してあげたいですね。