獣医師
島田 真美
ペット栄養管理士 / NRサプリメントアドバイザー / 帝京科学大学非常勤講師
こんにちは島田です。
愛犬の抜け毛が多いなと感じたことはありませんか?季節的なものであれば心配はいりませんが、病気やストレスが原因になっていることもあります。
今回は、犬の抜け毛のおもな原因について具体的にお話していきます。
犬には年2回の換毛期がある
犬には春と秋の年2回の換毛期と呼ばれる時期があります。
換毛期の有無は犬種などによって異なります。春秋にも抜け毛が気にならない犬種もいれば、盛大な抜け毛に悩まされる犬種もいます。抜け毛が多い犬種にはゴールデンレトリーバー、パグ、柴犬などがいます。
抜け毛の原因として考えられる犬の病気
犬はなんらかの病気が原因で毛が抜ける場合があります。具体的にはどのような病気があるのか詳しく見ていきましょう。
■ 感染性疾患
犬の抜け毛の原因として多いのが、細菌・真菌(カビ)・寄生虫感染による皮膚疾患です。
・膿皮症
・マラセチア皮膚炎
・ニキビダニ症
・皮膚糸状菌症
感染した細菌などによって症状は異なりますが、毛が抜けるほかに、かゆみや大量のフケ、皮膚の赤み、皮膚湿疹などが見られます。
このうち、マラセチア皮膚炎は再発のリスクが高いと言われています。獣医師の指示に従いしっかりと治療しましょう。また、皮膚糸状菌症は真菌が原因となる人畜共通感染症です。多頭飼いや人への感染に注意が必要です。
■ 遺伝性疾患
抜け毛の原因には、遺伝性疾患もあります。
・淡色被毛脱毛
・黒色被毛形成異常症
・パターン脱毛症
淡色被毛脱毛はグレーやブルーなどの淡い毛色の若い犬に多く見られ、淡い色の被毛の部分が脱毛する遺伝性疾患です。黒色被毛形成異常症は、被毛のメラニン色素の形成異常により、黒色の毛が脱毛します。
パターン脱毛症は原因不明とされていますが、遺伝の可能性が考えられています。
■ ホルモン疾患
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌量が不足することで起こる病気です。体の左右対称の脱毛、尻尾の脱毛が見られ、被毛が抜け落ちた部分の皮膚が黒くなるのが特徴です。
クッシング症候群は、副腎皮質からのホルモンの過剰分泌が原因で引きおこされる病気です。かゆみがないのに左右対称に脱毛するのが特徴です。
■ ストレスでも毛が抜ける
犬の抜け毛が増える原因としてストレスがあります。
犬は過剰なストレスを感じると体の一部分を執拗になめたり、毛をむしったりといった行動をするようになり、脱毛や皮膚炎が見られます。部分的に脱毛が見られる場合は、ストレス性の脱毛を疑いましょう。
犬がストレスを感じると、脱毛のほかに自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回る、長く吠える、体をぶるぶると震わせる、食欲不振なども見られます。
■ 栄養不足
毛は、ほとんどタンパク質で作られているため、健康な被毛を維持するためには、十分なタンパク質が必要なります。特に長毛の犬種ではより多くのタンパク質が必要になります。
そのため、アミノ酸バランスの悪い食事やタンパク質不足の食事を食べていると脱毛がみられるようになります。
まとめ
犬の抜け毛のおもな原因を紹介しました。
換毛期に抜け毛が増えるのは心配いりませんが、それ以外の時期に大量に毛が抜ける、地肌が見えるほど抜けるという場合は、病気やストレス、栄養不足が考えられます。
いつもより抜け毛が多い、抜け毛だけでなく他の症状も気になる場合は、動物病院を受診しましょう。