犬の耳が赤い・臭い原因は外耳炎かも|症状チェックと正しい耳ケアを獣医師が解説

愛犬が後ろ足で耳をしきりに掻いていたり、頭を激しく振ったりする姿を見たことはありませんか。
「少し赤いかな」「なんだかいつもと違う臭いがする」と感じても、犬が元気そうにしていると、動物病院に連れて行くべきか迷ってしまうこともあると思います。

耳のトラブルは、動物病院への通院理由として常に上位にあがる悩みのひとつです。犬の耳は人間とは異なる構造をしており、飼い主さんの「良かれと思ったケア」が、かえって症状を悪化させてしまうケースも少なくありません。

この記事では、犬の耳にトラブルが起きやすい理由から、自宅でできるチェックの仕方、正しいケアの考え方まで、順を追ってお伝えします。

 

📋 この記事を読むと分かること

  • 犬の耳がトラブルを起こしやすい構造的・体質的な理由
  • 自宅でできる耳の健康チェックの方法(見る・嗅ぐ・触れる)
  • 今すぐ受診すべき症状と、早めに受診すべき症状の違い
  • 綿棒を使ってはいけない理由と、正しい耳ケアの方法
  • 外耳炎の原因・治療・予防についての基礎知識

犬の耳にトラブルが起きやすい理由

 

「室内で清潔に飼っているのに、なぜすぐ耳が悪くなるの?」と思う飼い主さんもいるでしょう。犬の耳は、もともとトラブルが起きやすい構造をしています。さらに、体質が関係しているケースもあります。

 

L字型の耳の構造

人間の耳の穴(外耳道)は奥に向かって比較的まっすぐ伸びていますが、犬の外耳道は入り口から一度下に向かって下がり(垂直外耳道)、そこから直角に折れ曲がって鼓膜へと続く「L字型」の構造をしています。

このL字構造には、次のようなデメリットがあります。

 

  • 奥に湿気や熱が籠りやすく、菌やカビ(真菌)が増えやすい環境になる
  • 一度入り込んだ水分や耳垢が直角のカーブに阻まれ、自力で出てきにくい
  • 外から奥の状態が見えにくいため、飼い主が異変に気づきにくい

 

垂れ耳とアレルギーのリスク

コッカー・スパニエルやゴールデン・レトリーバー、トイ・プードルなどの垂れ耳の犬種は、耳介(パタパタする部分)が蓋のようにかぶさるため、さらに通気性が下がります。
湿度が高い梅雨の時期や、水遊び・シャンプー後は特に注意が必要です。

また、立ち耳でも耳のトラブルを繰り返す犬種があります。犬の外耳炎の多くは、犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーといった基礎疾患の症状のひとつであることが分かっています。

つまり、耳が汚れるから外耳炎になるのではなく、アレルギーによって耳の皮膚のバリア機能が低下し、その結果として微生物が増殖しているというケースも多いのです。そのため、耳掃除だけで改善しない場合は、アレルギー検査や食事療法を含めた根本的な対処が必要になることがあります。

 

外耳炎の主な原因まとめ

犬の外耳炎は、単一の原因ではなく、複数の要因が重なって発症することが多いです。

 

  • 微生物の増殖:マラセチア(真菌)、ブドウ球菌などの細菌が代表的
  • アレルギー:アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、接触アレルギー
  • 異物:植物の種や砂などが外耳道に入り込む
  • 耳ダニ(耳疥癬):特に子犬や多頭飼育の環境で見られる
  • ポリープ・腫瘍:外耳道内の新生物が原因になることも
  • ホルモン異常:甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症との関連も報告されている

 

自宅でできる耳の健康チェック

 

犬の耳の構造上、気づかないうちに悪化してしまうことがあります。だからこそ、週に1回の短い観察を習慣にすることが大切です。「見る・嗅ぐ・触れる」の3つで確認してみましょう。

 

チェック✅ 正常な状態⚠️ 受診を検討する状態
見る薄いピンク色・滑らか・耳垢がないかごく少量明らかな赤み・腫れ・黒・茶・黄・緑色の耳垢
嗅ぐ無臭、または気にならない程度のわずかな体臭酸っぱい臭い・生臭い臭い・パンのような発酵臭
触れる触っても嫌がらない・付け根が柔らかい・左右の温度が同じ触ると怒る・付け根が熱い・揉むと水音がする

 

耳垢の色と量でわかること

健康な状態でも少量の耳垢は出ますが、自然と外へ排出されます。細菌や真菌が増殖すると、大量のドロっとした耳垢や黒くカサカサした耳垢が溜まってきます。

  • 黒色・カサカサした耳垢:耳ダニ感染の可能性が高い(コーヒーかすのような見た目)
  • 茶褐色・ベタついた耳垢:マラセチア(真菌)の増殖が疑われる
  • 黄色・緑色のドロっとした耳垢:細菌感染(化膿)のサイン。早急な受診が必要

 

臭いの変化で気づく異変

パンやポップコーンのような甘酸っぱい発酵臭がする場合は、マラセチアという真菌(カビの一種)が増えている可能性があります。酸っぱい臭いや生臭い臭いは、細菌感染が疑われます。どちらの場合も、動物病院での診察をお勧めします。

 

耳の付け根の水音に要注意

耳の付け根をやさしく揉んだときに「クチュクチュ」と音がする場合、外耳道内にすでに分泌物が溜まっており、炎症が進んでいるサインです。このまま放置すると症状が悪化しやすいため、早めに受診しましょう。

 

こんな様子がある時は早めの受診を

 

受診のタイミングを判断しやすいよう、2つの目安をお伝えします。

 

早めの受診で軽く済むケース

  • ここ数日、後ろ足で耳を数回掻く仕草が見られる
  • 耳の中がほんのりピンク色になっている
  • 奥に茶色い粉のような耳垢が少し付いている
  • 近づくとパンのような甘酸っぱい臭いがする

こうした段階で受診すれば、耳の洗浄と点耳薬の投与だけで短期間で回復することが多く、犬への負担も費用も抑えられます。

 

すぐに受診が必要なケース

  • 頭を激しく振り続けている
  • 耳に触れようとすると鳴いて嫌がる
  • 耳の中が赤く腫れて熱を持っている
  • 黄色や緑色の耳垢が出口まで溢れている
  • 耳の付け根からクチュクチュと水音がする
  • 元気がない・食欲が落ちている(全身症状を伴う場合)

 

この状態を放置すると、激しく頭を振る衝撃で耳の軟骨内の血管が破れ、耳のパタパタ部分に血が溜まる「耳血腫(じけっしゅ)」を併発することがあります。耳血腫は外科処置が必要になるケースもあるため、できるだけ早く動物病院へ連れて行きましょう。

また、外耳炎が慢性化・重症化すると中耳炎・内耳炎へと進行し、平衡感覚の障害(頭が傾いたまま・ぐるぐる回るなど)を引き起こすこともあります。早期対応が愛犬の苦痛を最小限にします。

 

動物病院での診察・治療について

 

「動物病院ではどんな治療をするの?」と不安に感じる飼い主さんも多いと思います。一般的な外耳炎の診療の流れをご紹介します。

 

診察の流れ

  1. 問診:いつから、どんな症状があるか、アレルギー歴や既往歴など
  2. 耳鏡検査:専用のスコープで外耳道の奥や鼓膜の状態を確認
  3. 耳垢の顕微鏡検査(細胞診):細菌・真菌・耳ダニの有無を確認
  4. 必要に応じて:培養検査(抗生物質の効き目確認)、アレルギー検査、画像検査など

 

主な治療法

  • 外耳道洗浄:病院で専用のクリーナーを使って耳垢や分泌物を除去する
  • 点耳薬(外用薬):抗真菌薬、抗生物質、ステロイドなどが配合された薬を耳に垂らす
  • 内服薬:重症の場合や全身のアレルギー治療として抗生物質・抗真菌薬・ステロイド等を使用
  • アレルギー治療:基礎疾患としてのアトピーや食物アレルギーのコントロール
  • 外科治療:ポリープ除去、重度の慢性例での外耳道切除術など

治療期間中は、自己判断で薬をやめず、獣医師の指示に従って通院・投薬を続けることが大切です。症状が改善して見えても、微生物が残っていて再発するケースがあります。

 

正しいケアと、綿棒をすすめない理由

 

「汚れていたら綺麗にしてあげたい」という気持ちは自然なものですが、実は、耳を綺麗にしようとして悪化してしまうケースもあります。

 

綿棒で耳の奥を掃除するのは避けてください

犬の耳はL字型に曲がっているため、綿棒を差し込むと耳垢を奥へ押し込んで固めてしまいます。奥で固まった耳垢は自然に排出されにくく、鼓膜を圧迫したり、細菌の温床になったりすることがあります。

また、犬の耳の内側の皮膚はとてもデリケートです。綿棒で擦ることで微細な傷がつき、そこから細菌やマラセチアが繁殖しやすくなります。

 

自宅でできる正しいケア方法

健康な犬の耳には、耳垢を奥から外へ自然に押し出す自浄作用が備わっています。そのため、健康な状態であれば毎日の耳掃除は必要ありません。

 

【基本的なケアの手順】

  1. 耳介をそっとめくり、「赤み・臭い・耳垢の有無」を目と鼻で確認する(週1回)
  2. 耳の入り口付近(目で見える範囲)に耳垢がついている場合のみ、清潔なコットンやガーゼで優しく拭き取る
  3. 獣医師から処方されたイヤークリーナーがある場合は、指示に従って使用する
  4. ケアの後は必ず褒めて、耳を触られることへの抵抗感を減らす

 

拭く頻度は、健康な子なら月に1〜2回、垂れ耳で汚れやすい子でも週に1回程度が目安です。頻繁に拭きすぎると、皮膚の自然なバリアを傷つけることになります。

⚠️ 注意:市販のイヤークリーナーは製品によって成分が異なります。獣医師の指示なく使用する場合は、アルコール不使用・刺激の少ないものを選び、耳の奥まで流し込まないようにしましょう。

 

日常的な予防ポイント

  • シャンプー・水遊び後:耳の中に水が入らないよう注意し、入った場合はコットンで入り口付近の水分を拭き取る
  • 耳の毛が多い犬種:トリマーや獣医師に相談し、適切な間隔で耳内の毛を処理する
  • アレルギー管理:アレルギー体質の子は、食事内容や生活環境の見直しで耳炎の頻度を下げられる場合がある
  • 定期的な健康診断:年1〜2回の定期診察で耳を含む全身状態を確認してもらう

 

よくある質問(Q&A)

 

Q. 犬の耳が赤いだけで、臭いや耳垢はありません。病院に行くべきですか?

A. 赤みがある場合、すでに皮膚に炎症が起きているサインです。臭いや耳垢がなくても、早めに動物病院で診てもらうことをお勧めします。初期段階であれば治療が簡単で済むことが多く、放置すると悪化して治療が長引く場合があります。

 

Q. 外耳炎は完治しますか?再発しやすいですか?

A. 原因によって異なります。異物や耳ダニが原因の場合は、適切な治療で完治することがほとんどです。一方、アレルギーが根本原因の場合は、アレルギー自体をコントロールしないと再発を繰り返しやすい傾向があります。「同じ耳の病気を何度も繰り返す」という場合は、アレルギー検査を含めた精密検査を受けてみましょう。

 

Q. 耳ダニと外耳炎は違うものですか?

A. 耳ダニ(耳疥癬)は、ミミヒゼンダニという寄生虫が外耳道に寄生することで引き起こされる感染症です。外耳炎はより広い概念で、細菌・真菌・アレルギー・耳ダニなど様々な原因で起こる「外耳道の炎症」全般を指します。耳ダニが原因で外耳炎が起きることもあります。黒いカサカサした耳垢が大量に出る場合は、耳ダニを疑い受診しましょう。

 

Q. 点耳薬の正しい使い方を教えてください。

A. 獣医師に処方された点耳薬は、指示された量を外耳道の入り口から垂らし、耳の付け根を優しく揉んで薬を奥まで行き渡らせます。その後、犬が頭を振って余分な薬や耳垢を出すのは自然なことです。コットンで入り口付近を軽く拭く程度にし、奥まで拭き取らないようにしてください。使用回数・期間は必ず守りましょう。

 

Q. 外耳炎の治療にはどれくらいの費用がかかりますか?

A. 一般的な初診での外耳炎の診察・洗浄・点耳薬処方で、3,000〜8,000円程度が目安です(病院や地域によって異なります)。重症化・慢性化している場合や、培養検査・アレルギー検査が必要な場合は費用が高くなります。ペット保険によっては外耳炎の治療費が補償される場合があるため、確認しておくとよいでしょう。

 

まとめ

 

犬の耳は構造上、湿気や耳垢が溜まりやすく、トラブルが起こりやすい特徴があります。特に、垂れ耳の子やアレルギー体質の子は、日頃から耳の状態を確認しておくことが大切です。

 

  • 耳の赤みや臭い、耳垢の量と色を週に1回確認する
  • 頭を振る、耳を気にする様子がないか行動も観察する
  • 綿棒で耳の奥を掃除しない
  • シャンプーや水遊び後は耳の水分ケアを行う
  • アレルギーが疑われる場合は根本的な治療を検討する
  • 気になる変化があれば早めに動物病院へ相談する

 

耳のトラブルは、早い段階で気づければ軽い治療で済むケースも少なくありません。「いつもと少し違うかも」という小さな変化を見逃さないことが、愛犬の耳を長く健やかに守ることにつながります。

 

 

 

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