【獣医師監修】犬の留守番トレーニング方法|吠える・いたずらを防ぐ成功のコツを4ステップで解説

「仕事で家を空けるのが心苦しい」「帰宅したら部屋がめちゃくちゃに…」
愛犬をおいて外出することに、罪悪感や不安を感じている飼い主さんは少なくありません。

犬は本来、群れで行動する動物のため、ひとりで過ごす「留守番」は本能的に苦手です。しかし、正しいトレーニングを行えば、犬は安心して留守番ができるようになります。むしろ、適切なトレーニングは、飼い主と離れることへの過度な不安(分離不安)を防ぎ、愛犬の精神的な自立を促すために非常に重要です。

 

この記事では、獣医師監修のもと、犬の留守番トレーニングの具体的な方法を、誰でも実践できるステップ形式で徹底的に解説します。

この記事でわかること

  • 犬が留守番を苦手とする根本的な理由
  • 子犬から成犬まで実践できる、具体的なトレーニング手順
  • 留守番トレーニングを成功させるための重要なポイント
  • 愛犬が安全で快適に過ごせる留守番環境の整え方
  • トレーニング中のよくある悩みと専門家による解決策

 

なぜ犬は留守番が苦手?「分離不安」のサインとは

 

トレーニングを始める前に、なぜ犬が留守番を苦手とするのかを理解しましょう。その背景には「分離不安」が隠れていることがあります。

 

群れで暮らす本能と飼い主への強い絆

犬の祖先であるオオカミは、群れで協力して狩りをして生きてきました。その名残で、犬にとって「ひとりになること」は、身の危険を感じる不安な状況なのです。特に、大好きな飼い主さんと離れることは、強いストレスの原因となります。

 

こんな行動は要注意!分離不安の具体的な症状

留守番が苦手なレベルを超え、「分離不安」という心の病気になると、以下のような問題行動が見られることがあります。

  • 吠え続ける・鳴き続ける:飼い主が戻ってくるまで、遠吠えをしたり、鳴き続けたりする。
  • 破壊行動:ドアや壁を引っ掻く、家具や飼い主の持ち物を壊す。
  • 不適切な場所での排泄:普段はトイレでできるのに、留守番中に限って粗相をする。
  • 自分の体を舐め続ける:不安から、自分の足先などを執拗に舐めて皮膚炎を起こす(自傷行為)。

これらの行動は、犬が飼い主さんを困らせようとしているのではなく、極度の不安からくるパニック行動です。正しいトレーニングで、留守番への不安を少しずつ取り除いてあげましょう。

 

いつから始める?犬の留守番トレーニング開始の目安

 

留守番トレーニングは、子犬を家に迎えて、新しい環境と家族に慣れた頃から始めるのが理想的です。

ひとつの目安として、「トイレトレーニングが完了していること」「クレートやケージを安心できる場所だと認識していること」が挙げられます。早いうちから「ひとりで過ごす時間も安全で快適だ」と教えることで、スムーズに留守番に慣れることができます。

ただし、体力のない子犬(特に生後半年未満)に、いきなり長時間の留守番をさせるのは避けましょう。最初は数時間から始め、成長に合わせて徐々に時間を延ばしていくことが大切です。

 

【獣医師監修】留守番上手になるための4ステップトレーニング

 

焦りは禁物です。愛犬のペースに合わせて、段階的に進めていきましょう。

 

ステップ1:「ハウス」は最高の安心空間だと教える

まずは、留守番の拠点となるクレートやケージ(ハウス)を、犬にとって「世界一安心できる場所」にしてあげます。

  1. 扉は開けたままにし、自由に出入りできるようにします。
  2. 中におやつやお気に入りのおもちゃを置き、犬が自分から入るように仕向けます。
  3. 「ハウス」というコマンド(号令)で中に入れたら、たくさん褒めてご褒美をあげましょう。食事をハウスの中で与えるのも非常に効果的です。
  4. 慣れてきたら、おやつを与えている間に数秒間だけ扉を閉めます。これを繰り返し、少しずつ扉を閉めている時間を延ばしていきます。

この段階では、飼い主さんは必ず犬のそばにいてください。

 

ステップ2:飼い主と「短時間」離れる練習

ハウスに慣れたら、次は飼い主さんの姿が見えなくなることに慣れさせます。

  1. 愛犬をハウスに入れ、「待て」などと声をかけて部屋を出ます。
  2. 最初は30秒~1分など、ごく短い時間で部屋に戻ります。静かに待てていたら、褒めてあげましょう。
  3. もし犬が吠えたり鳴いたりしても、吠えている最中に戻ってはいけません。「吠えれば飼い主が戻ってくる」と誤って学習してしまいます。必ず、鳴き止んだ瞬間に戻るようにしてください。
  4. 静かに待てる時間を、少しずつ5分、10分と延ばしていきます。

 

ステップ3:短い「外出」に慣れさせる

部屋を出ることに慣れたら、いよいよ実際に外出する練習です。

  1. ゴミ出しや郵便物を取りに行くなど、5分程度の短い外出から始めます。
  2. 帰宅した際、愛犬が静かに待てていたら、落ち着いた声で褒めてあげましょう。
  3. 問題がなければ、15分、30分、1時間と、徐々に留守番の時間を延ばしていきます。

 

ステップ4:長時間でも快適に過ごせる工夫をする

長時間の留守番に備え、犬が退屈せずに過ごせる工夫を取り入れましょう。時間がかかるおやつや、夢中になれる知育トイ(コングなど)を用意するのがおすすめです。「留守番中は楽しいことがある」と学習させてあげましょう。

 

失敗しないために!留守番トレーニング3つの重要ポイント

 

トレーニングの効果を最大限に引き出すために、以下の3つのポイントを必ず守ってください。

 

① 出かける前・帰宅後の態度は「さりげなく」

出かける際に「ごめんね、いい子にしててね」と大げさに声をかけたり、帰宅時に「ただいまー!寂しかったね!」と過剰に喜んだりするのは逆効果です。飼い主の特別な態度が、留守番を「一大事」だと犬に認識させてしまいます。外出も帰宅も、あくまで日常の一部として、冷静にさりげなく振る舞うことが大切です。帰宅後は、犬が落ち着いてからたくさん褒めてあげましょう。

 

② 「留守番=特別なこと」と思わせない

犬は賢く、飼い主の行動をよく観察しています。鍵を持つ、上着を着る、化粧をするといった行動と「留守番」を結びつけて、そわそわし始めることがあります。これを防ぐため、外出するフリをしてみましょう。準備だけして出かけずにテレビを見るなど、留守番のサインを曖昧にすることが有効です。

 

③ 罰を与えない、焦らない

帰宅して部屋が荒れていたり、粗相があったりしても、絶対に犬を叱ってはいけません。犬はなぜ叱られているのか理解できず、「飼い主さんが帰ってくると嫌なことが起こる」と学習してしまう恐れがあります。黙って片付け、トレーニングのステップを一つ前に戻すなど、やり方を見直しましょう。焦らず、愛犬のペースで進めることが成功への一番の近道です。

 

安全で快適な留守番環境の作り方

 

トレーニングと並行して、愛犬が安心して過ごせる環境を整えましょう。

  • 安全対策:電気コードや薬品、人間の食べ物、ゴミ箱など、犬がいたずらすると危険なものは、必ず届かない場所に片付けましょう。誤飲事故を防ぐことが最優先です。
  • 快適な空間:安心できる寝床、新鮮な水、適切な温度管理はもちろんのこと、飼い主さんの匂いがついたタオルやおもちゃを置いておくと、犬は安心して過ごせます。
  • ペットカメラの活用:留守番中の様子が心配な場合は、ペットカメラを設置するのもおすすめです。愛犬の様子を確認できるだけでなく、トレーニングがどの段階まで進んでいるかを客観的に把握するのにも役立ちます。

 

犬の留守番トレーニングに関するよくある質問

 

Q1. 成犬になってからでもトレーニングは間に合いますか?

A1. はい、間に合います。子犬に比べて時間はかかるかもしれませんが、成犬でも根気強くトレーニングを続ければ、必ず学習してくれます。特に、過去に留守番で怖い思いをした経験がある保護犬などは、より丁寧に、ゆっくりとしたペースで進めてあげることが大切です。

 

Q2. 留守番中に吠え続けてしまうのですが、どうすればいいですか?

A2. まずは、なぜ吠えるのか原因を探ることが重要です。単なる退屈、不安、警戒心など理由は様々です。留守番前に十分な散歩でエネルギーを発散させたり、知育トイで集中させたりする工夫を試してみてください。それでも改善しない場合は、分離不安の可能性も考えられるため、獣医師やドッグトレーナーなどの専門家への相談をおすすめします。

 

Q3. 何時間くらいの留守番までなら大丈夫ですか?

A3. 犬種や年齢、性格によりますが、一般的に成犬であれば8時間程度がひとつの目安と言われています。ただし、これは健康な成犬の場合であり、子犬やシニア犬、持病のある犬の場合は、より短い時間にするべきです。長時間の留守番になる場合は、途中で様子を見てくれるペットシッターなどの利用も検討しましょう。

 

Q4. 留守番のたびにトイレを失敗してしまいます。

A4. 不安やストレスが原因で粗相をしてしまうことがあります。まずは留守番のトレーニングをステップ1から見直し、不安を軽減してあげることが先決です。また、留守番の直前に必ずトイレを済ませる、留守番スペースの中にトイレを設置するなどの物理的な対策も有効です。

 

Q5. トレーニングがうまくいきません。専門家に相談すべきですか?

A5. はい、迷わず相談しましょう。破壊行動が激しい、自傷行為が見られるなど、分離不安の症状が深刻な場合は、家庭でのトレーニングだけでは改善が難しいことがあります。行動診療を専門とする獣医師や、経験豊富なドッグトレーナーに相談することで、投薬治療や専門的なトレーニングプログラムなど、その子に合った解決策を提案してもらえます。

 

まとめ:愛犬のペースに合わせたトレーニングで安心できる留守番を

 

犬の留守番トレーニングは、飼い主と愛犬との信頼関係を築く大切なコミュニケーションの一つです。大切なのは、他の犬と比べることなく、愛犬自身のペースに合わせて焦らずに進めること。

「ひとりでいても、ここは安全で、飼い主さんは必ず帰ってくる」という自信を愛犬に与えることができれば、留守番は特別なストレスではなくなります。根気強くトレーニングを続け、愛犬が心穏やかに過ごせる時間を作ってあげましょう。

 

 

 

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