年末年始やお盆など、愛犬を連れて遠方の実家へ帰省を検討している飼い主様は多いでしょう。しかし、長時間の移動は愛犬にとって大きなストレスやリスクを伴います。
この記事では、犬との帰省を安全かつ快適に進めるために、移動手段ごとの注意点や事前の準備、滞在先でのトラブル対策まで、専門的な視点から網羅的に解説します。
◎自動車、電車・新幹線、飛行機ごとの具体的な移動ルールと準備
◎長距離移動に伴う車酔いや脱水などのリスクと対策
◎帰省先の家で起こりがちなトラブル(食事、排泄、環境変化)への対処法
◎帰省時に必ず持っていくべき持ち物チェックリスト
犬との帰省準備:移動前に確認すべき重要事項
スムーズで愛犬に負担の少ない帰省を実現するためには、事前の準備が成功のカギとなります。
1. 獣医師への相談と健康チェック
長距離移動は、健康状態によっては大きな負担となります。移動前に以下の点をチェックしましょう。
健康状態の確認: 帰省の数日前に動物病院を受診し、体調に問題がないか確認しましょう。特に持病がある犬は、移動の許可や必要な薬について獣医師に相談します。
狂犬病・混合ワクチンの接種証明: 交通機関や宿泊施設、帰省先で動物病院を受診する場合に提示を求められることがあります。必ず携帯しましょう。
酔い止め薬の処方: 愛犬が車酔いしやすい場合は、事前に獣医師に相談し、酔い止め薬を処方してもらいましょう。
2. 移動手段ごとの持ち込みルール確認
利用する交通機関のペット持ち込みルールを、出発のかなり前に確認し、規定に合った準備をしましょう。
◎鉄道(電車・新幹線):多くの場合、縦・横・高さの合計が120cm以内などのサイズ制限や、有料手回り品としての申請が必要です。全身を完全に覆えるクレートに入れることが義務付けられています。
◎飛行機:国内線では、原則として手荷物(貨物)扱いで預けることになります。夏の暑い時期や、フレンチブルドッグ、パグなどの短頭種は、呼吸器系のリスクから輸送を断られることがあるため、特に早めの確認が必要です。
移動中の安全対策とストレス軽減のコツ
犬の帰省で最も重要なのは、移動中の安全確保とストレスの軽減です。
1. 自動車での移動:クレートの固定と休憩の徹底
自動車は愛犬が慣れ親しんだ環境で移動できるため、比較的ストレスの少ない手段ですが、安全対策は必須です。
◎安全なクレートの使用: 事故の際、愛犬を守るため、抱っこではなくハードタイプのクレート(プラスチック製など)を使用し、後部座席にシートベルトなどでしっかりと固定してください。
◎クレートのサイズ: クレートは、中で犬が一回転できる程度のサイズが適切です。大きすぎると揺れが大きくなり、車酔いや怪我の原因になります。
◎水分補給と休憩: 2〜3時間ごとに休憩を取り、水分補給を促しましょう。サービスエリアなどでは、リードをつけ、排泄と軽い運動の時間を設けてリフレッシュさせてください。
2. 車酔いのサインと対策
車酔いは愛犬のストレスを増大させます。以下の症状が見られたら車酔いのサインです。
主な症状: 頻繁なあくび、大量のよだれ、嘔吐、落ち着きがなくなるなど。
◎対策の実行:
乗車の2時間前までに食事を済ませる(胃に物がない状態にする)。
車内のこまめな換気と、香水や匂いの強い消臭剤などの匂いを排除する。
揺れが少なく、カーブが緩やかなルートを選び、安全運転を心がける。
◎薬の活用: 不安が強い場合は、獣医師から処方された酔い止め薬を指示通りに与えましょう。
3. 移動中の環境慣れ:事前トレーニング
特に電車や飛行機を利用する場合は、事前のトレーニングが必須です。
クレート(キャリーバッグ)慣れ: 普段からクレートを安心できる寝床として使い、その中で長時間過ごすことに慣らしておきましょう。
騒音慣れ: 普段から公共の乗り物の音や振動に慣れさせる機会を作ることも有効です。
帰省先での滞在:トラブル防止と人ごみへの注意
帰省先に到着した後も、環境の変化や人との接触によるトラブルには注意が必要です。
帰省先での環境トラブル対策
愛犬のスペース確保: 帰省先でも、普段使っているベッドやクレートを置き、愛犬が安心できる専用のスペースを確保しましょう。
食事・排泄の習慣維持: 可能な限り、普段と同じ時間、同じフードを与え、トイレの場所を教えるか、普段使っているトイレシートや匂いのついた物を置いて安心させましょう。
誤飲・誤食の防止: 帰省先には愛犬の知らないもの(人間の薬、タバコ、小さな装飾品、普段食べない食べ物)が多くあります。愛犬が届かない場所に移動させるか、ケージ内で過ごさせるなどして誤飲を厳重に防止してください。
人ごみへのお出かけは避ける
初詣や観光地など、人ごみへの外出は愛犬にとって非常に大きなストレスとなり、事故や感染症のリスクもあります。
◎可能な限りお留守番: 愛犬を連れて行かざるを得ない場合を除き、安全な場所でお留守番させるのが最も賢明な選択です。
△やむを得ない場合の対策: やむを得ず連れていく場合は、地面のゴミを口にしないよう注意し、踏まれる事故を防ぐため、混雑度合いに応じてペットカートを利用するか、必ず抱きかかえて移動しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 帰省先にペットホテルを利用した方が良いケースはありますか?
はい。愛犬が極度の乗り物酔いをする場合、分離不安症を持っている場合、あるいは帰省先が動物が苦手な方の家である場合など、移動や滞在が愛犬または人に大きな負担をかけると判断される場合は、無理せず信頼できるペットホテルやシッターの利用を検討する方が賢明です。愛犬のストレスを第一に考えましょう。
Q2: 飛行機で短頭種が輸送禁止になるのはなぜですか?
パグやフレンチブルドッグなどの短頭種は、鼻が短く気道が狭いため、高いストレスや気温の変化によって呼吸困難に陥りやすい特性があります。貨物室の環境の変化は特に負担が大きく、熱中症や酸欠のリスクが高まるため、多くの航空会社で輸送が禁止または制限されています。
Q3: 帰省先で愛犬が下痢や嘔吐をしました。どうすれば良いですか?
環境変化によるストレスや、普段食べないものを口にしたことが原因で、一時的な下痢や嘔吐をすることがあります。まずは、食事を一時的に控え、水分補給を心がけましょう。しかし、症状が続く、ぐったりしている、血便があるなどの場合は、すぐに現地の動物病院を検索し、受診してください。帰省前に、現地の動物病院の場所を調べておくことも犬の帰省の重要な準備です。